シリーズ■安倍晋三の問題は政治性でなく人間性だ!

内田樹と白井聡、気鋭の学者2人が安倍首相を「人格乖離」「インポ・マッチョ」と徹底批判

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
abe_01_150117.jpg
勇ましく演説する安倍晋三首相

 安倍首相は人格乖離、マッチョなのにインポなレイプ魔だ。

 こんなことを言うと、ネトウヨの皆さんは「反日極左サイトがまたぞろ安倍ちゃんをディスってる!」と喚き立てるかもしれないが、これは、本サイトの弁ではない。安倍首相のことをこんなふうに形容しているのは2人の学者だ。

 ひとりは、さまざまな分野にわたる鋭い批評で左右を超えた幅広い支持を得ている思想家の内田樹。もうひとりは、『永続敗戦論』(太田出版)などの論考で注目される若手政治学者・白井聡。2人はこの2月、『日本戦後史論』(徳間書店)という対談本を出版し、安倍首相のことをケチョンケチョンにけなしているのだ。

 まず、内田は、安倍首相が「積極的平和主義」や「歴史認識」について、極端な政策を次々打ち出していることについて、こう語っている。

「安倍首相はたぶん人格乖離しているんだと思います。本人を知っているという人から聞くと、とってもいい人なんだそうです。(略)でも、それが政治家になるとまるで別人に変わる。ということは、政治家の方の人格がかなりの部分まで演劇的に構築されたバーチャル・キャラクターだということです」
「生身の自分の弱い部分を切り離して作ったバーチャル・キャラクターだから、やることが極端なんです」

 そして、第一次政権時には村山談話を見直すことを示唆していた安倍首相が、2013年秋の国会では一転して「これまでの歴代内閣の立場を引き継ぐ」と答弁したことについても、以下のように斬って捨てる。

「発言が極端に振れて、空気を吸うように食言できるのは、内的葛藤がないからです。そのつど『この局面ではこの台詞』というのが決まっていて、決めの通りにしゃべっている。ああいう家柄ですから、きっと子どものころから自分の個性や欲望は抑えてきたんでしょう。どこの学校に行くか、どこに就職するか、いつ父親の秘書になるか、いつどの選挙区から立候補するか、全部あらかじめ決められている。そういうがちがちに決めつけられた環境を生きてきたわけですから、生身の自分は身体の奥の方に押し込められて出てこない」

 白井の安倍評はもっと過激だ。内田の人格乖離発言を受けて、このように言う。

「不思議なのは、安倍首相がお父さんの晋太郎さんの話をまったくしないことです。おじいちゃんの岸信介の話ばかりする。たぶん晋三から見て、晋太郎の政治家としてのスタンスは全然男らしくないと映るんでしょう。じいちゃんは本物の男だった、それを受け継ぐんだということなのでしょう。ところが、戦に強いということを誇りにはできない、もう男になれないというのは、戦後日本の所与の条件なんですよね。軍事的にインポテンツであることを運命づけられている」
「それで、インポ・マッチョというのが一番性質が悪い。自分がインポであるというのを何がなんでも否定する。それが敗戦の否認ということの言い換えなのですが。そういう人間は首尾一貫しないことをやる」

 リテラでさえ使うのを憚るような激しい非難だが、しかし、これらの言葉は、たんなる安倍首相への人格攻撃ではない。対談をじっくり読めば、現在の日本という国家のありようを鋭く突き刺す言葉であることがわかってくる。

 たとえば、マッチョなのにインポだという苛立ち。これは、安倍首相をはじめとする日本の右派勢力の最大のモチベーションとなっているものだ。戦争に強いという国家の誇りを取り戻したいのに、憲法によってそれができないと考えているからこそ、彼らは憲法を攻撃する。そこにあるのは、非常にエモーショナルな動機であって、現実の政策判断とはほとんど関係がない。

 実は、白井は彼の名を世に知らしめた代表作『永続敗戦論』でも同様のことを指摘している。日本では8月15日を「終戦記念日」と呼ぶが、このように、戦後日本は史実としての「敗戦」を「終戦」にすり替えることで、その意味するところを曖昧化させてきた。そして、〈敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる〉という構図が継続している状態を、白井は「永続敗戦」と呼んだ。

 戦後日本は、東西冷戦の構図のなかで、この永続敗戦というレジームのもとに運営されてきた。それゆえに、この国のエスタブリッシュメントは一種の“ねじれ”を抱えている。たとえば日本の保守改憲派は、平和憲法をGHQから押し付けられた「まがいもの」とみなし、「自主憲法」の必要性を声高に叫ぶ。だが一方で、くだんの憲法を「押し付けた」はずのアメリカには従属し続けるという倒錯的な外交姿勢を貫いている。

 つまり、彼らがマッチョイズムを傷つけぬまま“ねじれ”を解消させるためには、徹底的に「敗戦の否認」を行う他ない。それは「米国による対日処理」を完全に否定することだ。しかし、戦後処理は東京裁判やサンフランシスコ講和条約と繋がっているから、現実にそれを達成することはほぼ不可能である。

 実際、安倍政権でも歴史の修正という「敗戦の否認」の動きを活発化させようとしながら、そのたびにアメリカの“にらみ”で抑制されているのが実情だ。そして、日本の右派勢力はアメリカににらまれたとたん、簡単に屈服して、それまで声高に叫んでいた「大東亜戦争の肯定」を引っ込める、日米開戦はルーズベルトの罠だと主張しながら、現実的にはアメリカの犬となる、そういった矛盾した行動を繰り返してきた。

〈ゆえに彼らは、国内およびアジアに対しては敗戦を否認してみせることによって自らの「信念」を満足させながら、自分たちの勢力を容認し支えてくれる米国に対しては卑屈な臣従を続ける、といういじましいマスターベーターと堕し、かつそのような自らの姿に満足を覚えてきた。敗戦を否認するがゆえに敗北が無期限に続く──それが「永続敗戦」という概念が指し示す状況である〉(『永続敗戦論』)

 思えば集団的自衛権の行使容認も、安倍首相らはそれを「自主性の回復」などと称しているが、実際には長年にわたるアメリカの要求を自民党が呑んだにすぎない。つまり、対米隷属の態度を貫いていることには変わらない。白井は内田との対談のなかでこう述べている。

「安倍さんの最近の憲法に関する発言を見ていて気持ち悪いのは、(日本国)憲法が大嫌いなはずのくせに褒めることです。『解釈改憲をすることによって、憲法九条の平和主義の精神をより一層実現することができるんだ』などと言うわけですよね。(略)これは憲法に対するレイプですよ。なんでそういうレイプをしたいのかというと、憲法はアメリカの置き土産なわけですから、アメリカの分身ですよね。そのアメリカの分身をアメリカの命令によってレイプするという奇妙奇天烈な状況にある。世界最強の軍隊の活動に自衛隊を差し出せば世界最強軍団の一部になれるってわけです。これはつまり、アメリカというバイアグラを飲んで無理矢理勃たせるということです」

 アメリカ=バイアグラというのはなかなか言い得て妙な表現だが、しかし、一方の内田は安倍首相がその「永続敗戦」というジレンマや矛盾を自覚しておらず、むしろ「不思議なやり方」で処理していると述べる。

「かつての『対米従属を通じての対米自立』は一人の人間の中に面従腹背という葛藤を呼び込んだ。だから言うことがわかりにくいものになった。でも、安倍さんは違う。『対米従属』と『アメリカが嫌がることをする権利』がバーター交換されている」

 たとえば、普天間基地問題で仲井眞沖縄県知事(当時)を懐柔した直後におこなった靖国参拝や、集団的自衛権行使容認の閣議決定の直後に解除した北朝鮮への経済制裁。これらが「バーター」だったというのである。

「問題は、従属の代償に受け取るのは『アメリカが嫌がることをする権利』であって、日本の国益ではないということです。(略)本来なら国益と国益のトレードのレベルの話であったものが、国益と(靖国参拝に代表される)私益のトレードの次元に移動している。だからこそ、葛藤がないんです。日本が何かを失って、その代わりに安倍晋三個人が何かを得るという構図ですから、葛藤のしようがない。僕が人格乖離というのはそのような状態のことです」(内田)

 ようするに、日本という国が安倍首相の個人的なマスターベーションの道具になっていると、内田はいうのだ。しかも、その存在はアメリカをはじめとする国際社会にとっても脅威になっていると分析。「今やアメリカの東アジア戦略上の最大のリスクファクターは安倍晋三です」と断言する。

 そういえば、先日来日したメルケル独首相も、講演会や民主党の岡田代表との会談などで、明らかに安倍政権の歴史修正主義の動きを危険視する発言をしている。

「人格乖離」の「インポ・マッチョ」な首相に引きずられて、日本はいったいどこに向かうのだろうか。
(梶田陽介)

最終更新:2019.02.05 01:47

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

日本戦後史論

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

内田樹と白井聡、気鋭の学者2人が安倍首相を「人格乖離」「インポ・マッチョ」と徹底批判のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。内田樹安倍晋三戦後梶田陽介白井聡の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍首相の「野党は年金不安煽るだけ」デマに騙されるな!
2 『いだてん』俳優・古舘寛治の安倍批判ツイートがキレキレ
3 安倍の秋田「イージス・アショア」演説はデタラメだらけ! 
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 ワイドナショー「女子高生はいま韓国で生きている」発言が炎上
6 松尾貴史が語るテレビで芸人が権力批判できない理由
7 ジャニー喜多川社長の性的虐待問題を一切報じないマスコミ
8 大橋巨泉の安倍批判の遺言がテレビでカット
9 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
10 参院選情勢調査に焦る自民党!秋田では県知事や職員が選挙応援
11 安倍首相の街頭演説で批判派潰しの異様
12 山口敬之氏が菅官房長官と親しい企業から資金援助!
13 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
14 安倍「基礎年金6万3000円を確保」の信じがたい詐術
15 ジャニー社長死去でジャニーズ事務所が解禁時間を指定する報道統制!
16 『上田晋也のサタジャ』が山本太郎の企画をボツに
17 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
18 安倍首相が統計不正追及に「だから何だってんだ!」と逆ギレ野次
19 TBS宇垣アナが夫婦別姓反対派を一蹴
20 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄