もとはただのロリ系…世界が注目するメタルアイドル「BABYMETAL」はどう作られたか

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「BABYMETAL WORLD TOUR 2014」(トイズファクトリー)

 今、世界でもっともブレイクしている日本の音楽ユニットといえば、メタルアイドルユニット・BABYMETALだ。3人の少女がゴリゴリのヘヴィメタルを歌い踊るという、前代未聞のスタイルで、数々の海外メタルフェスに出演。さらにレディー・ガガの北米ツアーにオープニングアクトとして同行するなど、ワールドワイドな活躍を見せている。

 日本国内でも日本武道館2デイズやさいたまスーパーアリーナの単独公演も成功させ、確実にブレイクしているBABYMETALだが、もとはといえば “成長期限定”の正統派アイドルグループ「さくら学院」の派生ユニットだ。事情に詳しいアイドルライターはこう話す。

「さくら学院には、“バトン部”“新聞部”などといった、クラブ活動をモチーフとした派生ユニットがあって、BABYMETALも“重音部”というクラブ活動として誕生したもの。今となってはBABYMETALの知名度は『さくら学院』本体を余裕で凌駕していますが、最初は誰もここまでなるとは思っていなかったでしょう。つまり、狙ったうえでのブレイクではない。たまたま楽曲のクオリティーが高くて一部の音楽ファンのアンテナに引っかかったという感じです。ライブ会場はいわゆるアイドルファンよりも音楽ファンの方が多いです」

 BABYMETALの楽曲はヘヴィメタルサウンドだが、だからと言って必ずしもヘヴィメタルのファンに受けているわけでもないという。ヘヴィメタルに造詣が深い音楽ライターはこう話す。

「ヘヴィメタルのリスナーはどちらかというとこだわりが強くて、それぞれに理想の“ヘヴィメタル像”を持っていることが多い。なので、いくら楽曲のクオリティーが高くても、メタルファンに言わせると、女の子3人が歌って踊っているという点で“偽物”となってしまう。ヘヴィメタル専門誌「BURRN!」では“嬢メタル”と呼ばれる女性バンドは掲載しても、BABYMETALについてはほぼ黙殺しています。BABYMETALはあくまでも“ヘヴィメタルっぽいアイドルグループ”であって、“ヘヴィメタルグループ”ではないんですよね」

 BABYMETALのメンバーは、SU-METAL(中元すず香・17歳、ボーカル&ダンス)、YUIMETAL(水野由結・15歳、スクリーム&ダンス)、MOAMETAL(菊地最愛・15歳、スクリーム&ダンス)の3人。言うまでもないだろうが、3人ともヘヴィメタルが好きでも詳しいわけでもない。2013年12月発売の「Quick Japan」(太田出版)vol.111のインタビューで、SU-METALはこう話している。

「もともとメタルっていうものを一切知らなかったのにいきなりメタルを歌ってるわけじゃないですか」

 全く知らない音楽をやっているからこそ面白いと感じることも多いというSU-METALだが、必ずしもメタルをやりたいというわけではなさそうで、

「もちろんBABYMETAL一本でやってくっていう気持ちもあるんですけど、もっと色んな音楽に触れていきたいなっていう気持ちもあります」

 と“メタル以外をやってみたい”という10代の女の子らしい本音を見せている。

 さくら学院は、中学を卒業するとともにグループを卒業するという決まりがあり、SU-METALこと中元すず香は2013年3月にさくら学院を卒業している。その記念に発売された写真集『さくら学院 中元すず香 2013年3月卒業 完全版』(近代映画社)には、「卒業生答辞」として直筆のメッセージが掲載されているが、そこには「BABYMETAL」という文字はなく、

「私の夢は、歌手になることです。
 これからも、色々なことを学び挑戦していき、中元すず香にしか描けない世界や中元すず香にしか伝えることができないメッセージを世界中に発信していけるような歌手になることが目標です」(原文ママ)

 とある。中元はさくら学院卒業を機にBABYMETAL一本で活動していくこととなるのだが、どうやらやはりBABYMETALこそがやりたいことというわけではないようだ。

「そもそも“アイドル”なのだから当然といえば当然ですが、運営サイドが考えたことを3人のメンバーにやらせているだけ。それが良いのか悪いのかという問題ではなく、そういうものなんです」(前出アイドルライター)

 では、どうしてBABYMETALがブレイクしているのだろうか。前出のメタルに詳しい音楽ライターはこう分析している。

「BABYMETALに食いついたのは音楽ファンの中でも、コアなメタルリスナーではなく、ライトなロックファンが多い印象。あるいは“サブカル層”ですね。J-POP的なキャッチーなメロディーとEDM的ダンスミュージックの要素が強いことで、メタルリスナーには“ぬるい”と思われているかもしれないけど、ライトな層にはそれくらい解りやすい方がいい。ちょっと前までPerfumeを聞いてて、その後ももクロに興味を持った音楽ファンなんかが流れてますよ。ちなみにコアなアイドルファンはさくら学院優先で、BABYMETALの方はすでに敬遠気味ですね」

 世界の音楽ファンに受け入れられているのはどうしてなのか。

「最大の理由は十代の小さい女の子がメタルをやっているという“なんじゃこれ感”でしょう。日本ポップカルチャー特有のイビツでキッチュな感じがモロに出ているので、外国人が喜ぶのも当然でしょうね。こんなことを言っては身も蓋もないかもしれませんが、『アイドル+ヘヴィメタル』というアイディア勝負。そして、そのアイディアを真面目にやり切ることができたのが良かったんだと思います」(前出音楽ライター)

 メインボーカルのSU-METALは現在高校2年生の17歳。外国人からすると幼く見えるだろうが、女性アイドルとしては“少女と大人の間”といった印象だ。スクリーム&ダンス担当のYUIMETALとMOAMETALはともに中学3年生だが、それぞれの身長は153cmと151cmで小柄。日本人から見てもかなり子供っぽく、外国人からすれば完全に子供そのものだろう。

「言葉を選ばないで表現してしまえば、BABYMETALは女性アイドルの中でも“ロリコン臭”が強いわけです。そんな子たちがヘヴィメタルをやっているということで、日本人も外国人もそのアンバランスさを面白がっているんだと思います。なので、YUIMETALとMOAMETALが大人になっちゃったらむつかしいんじゃないでしょうか」(前出アイドルライター)

 どうやら“ロリコン臭”があってこそのBABYMETALということのようだが、もちろん、これは最初から狙ったものだ、

「今のアイドルは、コンセプト、アイディア勝負になっている。どこも今までにない設定を探している。BABYMETALの場合は、本人たちになんの志向もなかったわけですから、一から十まで事務所側が仕掛けたということでしょうね」(前出音楽ライター)

 女性アイドルグループが乱立する昨今。BABYMETALのように、アイディアやコンセプトでブレイクを狙おうとするグループも少なくないが、成功例はでんぱ組.incや、解散してしまったBiSなどごく一部。ライブハウスでは夜な夜な“自称個性的”なアイドルグループが登場しては消えているというのが現状だ。

「でんぱ組.incやBiSのサブカル志向はもともと本人たちの中にあったものですからね。やっぱり偽物は簡単に淘汰されてしまう。たとえば“ロック”にこだわったコンセプトのアイドルグループも多いですが、“ギターが鳴ってればロック”みたいなものばかりで正直酷い有り様です。“アイドルが流行ってるから、なんかやってみるか”っていう一山当ててやろう的な考えではさすがに成功しませんね」(前出音楽ライター)

 そんな中で、本人たちにヘヴィメタ志向のない“偽物”BABYMETALがブレイクしたのは、楽曲的なクオリティーがびっくりするくらい高かったからだろう。もともと3人の歌やダンスがかなりのレベルにあったことに加え、所属しているのはサザンオールスターズや福山雅治、Perfume、ONE OK ROCKなど、人気アーティストが多数所属している音楽事務所の最大手アミューズ。もともとメジャーで売れる音楽を作り出す手腕があり、“売れそうなメタル”の楽曲を世に出すだけのベースをしっかりと持っていた。アイディアを具現化するための楽曲制作のノウハウがあったのである。

 ようするに、“小さな女の子がヘヴィメタルをやったら面白いんじゃね?”という誰もが思いつきそうなシンプルなアイディアを、プロの音楽事務所のノウハウで真剣に作ってみたら、ウケちゃった、というのがBABYMETALの真実なのではないか。そう考えると、ちょっと興ざめな感じもしなくもないが、おとなの思惑で仕掛けられたのはAKBやももクロも同じ。ここまできたら、ロリメタル路線をつきつめていけるところまでいってほしい。
(田中ヒロナ)

最終更新:2017.12.09 05:10

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