日テレ元局員が告発!テレビ局が行っている安倍政権PRの“偏向報道と印象操作”

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『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』(朝日新聞出版)

 今回の衆院選では、マスコミ、とくにテレビ局の安倍政権に対する弱腰な姿勢が改めて浮き彫りになった。自民党が出した選挙報道に関する圧力通達にいとも簡単に屈し、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)が荻上チキらゲストの出演をキャンセル。菅原文太の追悼ニュースでもその反戦、脱原発運動への取り組みをカットしてしまったのは、本サイトでも指摘したとおりだ。

 だが、こうした安倍政権によるテレビへの圧力は第2次政権が発足した当初から始まっており、今やテレビはほとんど安倍政権のいいなりになっているのが現状だという。

 日本テレビでキャスターもつとめた元テレビマンが最近、そんなテレビ局の実態を指摘する新書を出版した。

『内側から見たテレビ―やらせ・捏造・情報操作の構造』(朝日新聞出版)がそれだ。著者の水島宏明は札幌テレビでドキュメンタリー制作に携わった後、NNNのロンドン、ドイツ特派員を経て、日本テレビに入社。『NNNドキュメント』ディレクター、そして『ズームイン!!SUPER』のキャスター兼解説者を務め、2007年度芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞した事もあるテレビマンだ。

 安倍首相は自分を批判する報道に対してやたら“偏向”“印象操作”といった攻撃を繰り返しているが、水島によると、現在のテレビ局はまったく逆。安倍政権を利するような印象操作を繰り返し、露骨な安倍政権寄りの偏向報道を繰り広げているという。

 その一例として水島があげているのが、13年7月2日のNHK『ニュースウオッチ9』で報じられたG8サミットの際の「安倍首相の映像」だ。

 このサミットで、日本政府は安倍首相とアメリカ・オバマ大統領の公式会議をセッティングすることができず、「安倍首相はアメリカに嫌われている」「政府はオバマ政権と信頼関係を築けていない」という批判を呼んでいた。

 そんな中、『ニュースウオッチ9』ではNHKが独自入手した映像として「安倍首相が歩きながら、あるいは立ったままでオバマ大統領と懸命に話している無音の映像」を流したのだ。同書によると、報道の内容は以下のようなものだったという。

「キャスターは『アメリカとの公式な首脳会談は行われませんでしたが、安倍総理大臣がオバマ大統領と突っ込んだ意見交換を行う様子が映し出されています』と前振りした。その後で映像を見せながら、非公式な場ながら、最重要課題のひとつである尖閣諸島問題について安倍首相が『中国の要求には応じられない』などと発言したとみられるナレーションが入る」

 水島は「立ち話でどんなに真剣に意見交換しようとも、公式会談ほどの重みがないことは、政治、外交を取材する記者には常識」と指摘する。ところが、NHKはメインのニュースで、首脳会談がセッティングできなかった失点を糊塗して、立ち話をさも重要な協議のように演出して放映したのだ。さらに、この映像自体、政権から提供されたものだという。

「報道陣が入れない、実際のサミット会場中の場内の映像なので、撮影し映像を所持していたのは首相官邸か外務省の関係者以外にはありえない。NHKはこの映像を、官僚の誰かなのか、あるいは首相や官房長官ら政治家の誰かから手渡された。つまりリークされたものである」

 ようするに、NHKは安倍政権がPRのために用意した映像と情報に丸乗りしたのである。しかも、放送が行われたのは、公示日の直前だった。これは偏向報道どころか、ただの宣伝装置ではないか。

 水島はテレビ局が行っている巧妙な印象操作についても指摘している。たとえば、そのひとつが14年5月3日の日テレ『news every.サタデー』の憲法のニュースだ。

 5月3日の憲法記念日、テレビのニュースは、「護憲」「改憲」それぞれの立場での集会などを紹介するが、「現時点において一度も改正されたことがない日本国憲法が国家の最高法規として存在する以上、護憲が前となり、改憲が後という順番で並べて報道するのは自然な形の報道のセオリー」であるため、これまでは各局とも、護憲、改憲の順番で報道してきた。

 ところが、この日の日テレ『news every.サタデー』では、こんなタイトルが掲げられた。

「憲法改正めぐり“賛成派”と“反対派”が集会」

 改憲派を憲法改正の「賛成派」とし、護憲派を憲法改正の「反対派」と呼び、順番を逆にしたのである。一見些細な表現の操作と見逃しがちだが、これは重大な変更だと水島は指摘する。

「なぜなら一般の視聴者は『賛成派』にはポジティブな印象を持ちがちで『反対派』にはネガティブな印象を持ちやすい。(中略)視聴者の側が用心していないと、政治的なテーマについて、こうした誘導的な報道は知らないうちに乗せられてしまう」

 しかも、同番組の印象操作はこれだけではなかった。同番組では自民党幹部や共産党、社民党の党首が憲法について主張したが、もう一人ある人物の発言が取り上げられていたのだ。それが「安倍首相と親交の深い小説家・百田尚樹氏の言葉」だった。

「日本テレビが報じた百田氏の発言は『日本も世界も大きく激変したにもかかわらず、憲法を67年間一度も変えないのはありえない』というものだった。百田氏はこのニュースで政治家以外に日本テレビが声を伝えた唯一の有識者である。
 彼のような改憲派の有識者の発言を入れるならば、違う立場の発言も入れるのが報道のセオリーだが、それもなかった。これでは日本テレビに世論を誘導する意図があったのでは、と勘ぐられても仕方ない」

 百田は安倍首相に親しいだけでなくNHKの経営委員でもある。また日テレは改憲を主張するナベツネ・読売グループの一員だ。まさに日テレは安倍首相が盛んに批判する“偏向”とは全く逆のベクトルの“偏向”報道を行っていたことになる。

 また、同書は本サイトが指摘した安倍首相のテレビ局への単独出演にも言及している。水島が問題にしているのは、13年4月に安倍首相が出演した日本テレビ系『スッキリ!!』、TBS系『情報7daysニュースキャスター』。

 これらの番組内容は「憲法改正などの難しい話には触れずに人柄や私生活に焦点を当て」「安倍首相の『ソフトさ』『ヒューマンさ』といった人格の良さばかりを強調する」もので、「ジャーナリズムの役割は皆無だった」という。

 総理のテレビ番組の単独出演は、安倍政権以前は「政治的な公平をそこねる」として自粛されていた。本サイトでは、その禁を安倍首相が破って、各ニュース番組に出演した事を批判したが、それどころではなかったのだ。安倍首相は、批判的な視点の一切ないバラエティや情報番組などを自分のイメージ操作に利用してきたのである。

 ところが、当のテレビ局ではその政治PRに協力していることの罪深さを全く感じていないようだ。それどころか、各番組とも「時の首相が独占的な出演に応じてくれた興奮を隠しきれない」「嬉々とした様子」だったという。

 これでは、今回の選挙報道でテレビ局がいとも簡単に安倍政権の圧力に屈するのも当然だろう。水島による “権力と報道”への視線は辛辣だ。

「本来テレビ報道は、われわれの知る権利に応えるジャーナリズムの一翼を担っている。にもかかわらず、今やその機能はどんどん衰えている」

 権力の介入にやすやすと屈服するメディアと、メディアに介入と圧力を強め続ける安倍政権。内部告発ともいえる本書だが、残念ながらこうした事実はほとんど国民に知られていない。安倍政権下のこの国から言論の自由、そして民主主義はどんどん遠ざかっていく。
(田部祥太)

最終更新:2014.12.15 09:02

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