ストーカー500人に対峙したカウンセラーが分析する彼らの共通性とは?

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『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮社)

 ストーカーによる凶悪犯罪が続いている。昨年、三鷹で起きたタレントの18歳女性が自宅に潜んでいた21歳の元交際相手に殺害された事件は世間を震撼させたが、最近でも横須賀市で22歳の元交際相手の女性をメッタ刺しにして殺した43歳の男、10年以上も元妻に付きまとった上の犯行、家族をも巻き込んだ殺害事件など凶悪化も進み、また警察対応の不手際も目立つ。そうした中、ストーカー被害者についての、法的整備、対応は少しずつ進んでいるが、なぜストーカー行為が行われるのか、その加害者側の“心理”にスポットが当てられることはまだ少ない。一体なぜ人はストーカーになってしまうのか。

 ストーカー“加害者”の実に500人以上に対峙した人物がいる。2012年に起こった逗子ストーカー殺人事件で、被害者から相談を受けていたNPO法人『ヒューマニティ』の小早川明子だ。自身もストーカー被害にあった経験を持つ小早川だが、彼女の『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮社)では加害者たちの特徴や病理が描かれていて興味深い。

 あるIT会社を起業した20代の男性のケースを紹介しよう。取引先のOLと知り合い交際を始めたが、3カ月ほどで「堅苦しくて楽しくない」と別れを告げられた。男性は再考を求めたが、ほどなく女性には新たな恋人が出来た。すると穏やかだった男性は一転、駅で待ち伏せしたり、後ろから蹴りを入れたりというストーカー行為を開始した。相談を受けた著者がこの男性に会うと「僕はIQ160でT大の大学院を出ている」「彼女は僕を裏切った。僕は苦しんだ」「復讐する権利がある」などと口にしたという。

 また、家庭を持つ40代女性とW不倫していた60代の男性会社経営者の場合、交際中に女性が妊娠したが、男性は「離婚してでも生まれてくる子供が欲しい」と主張した。しかし、女性が「子供は夫の子。その歳で妊娠させられるなんて思うほうがおかしい」と突き放すと、男性は「子供をよこせ」と何度も迫るメールを送り続け、自宅前で待ち伏せした。

 ストーカーになる人間には共通性があるという。「とるに足らないことにひどくプライドが傷つく。その異様な精神状態は本人以外には想像ができず、被害者は何が加害者の逆鱗に触れたのかも分からない」というものだ。そこには必ず「被害者意識」が存在するという。「相手が不誠実で、反省していない。人間として許せない」と。前記の2例も「素晴らしい自分に別れをいう女などいない」「子供を作れないと尊厳を傷つけられた」と自らのプライドが傷つけられたことでストーカーと化した。自分にも非があるという考えは彼らにはない。そして、筆者が扱うストーカーの半分は意外にも女性だ。これは警察庁の統計(8割が男性)とは違うが、実際は「男性側があまり警察に届け出ようとしないだけ」だ。

 彼ら彼女らは被害妄想が強く、またプライドが高いうえに傷つきやすい傾向にあるという。そして「評価されなければ、自分に価値はないと思いこんで」いる。自己愛が強く、そのため「その虚像を一緒に支えてくれる賛美者」が常に必要だ。しかし、相手が少しでもそれを怠ると自分が不幸なのは相手のせいだと怒り、「切った張ったの騒ぎ」となる。過剰な愛情表現といえなくもないが、それは自己中心的で異様なものだ。その根源には“怒り”や“依存”も存在するという。

 ストーカーがよく口にする言葉がある。

「信頼関係を壊したのは相手だから、信頼関係を取り戻す努力をしろ」

 ある男性は「全ての女性が信じられなくなったのは彼女のせいだ。その責任を取らせたい」「俺は見下された」と怒ったという。ストーカーは「妄想的に自分の正当性を信じ、迷惑をかけている」にも関わらず「相手に好意を持たれることを望んでいる」という相矛盾した感情も持つという。

 あまりに身勝手で極端な思考性。しかもストーカーは警察に警告され、初めて「自分がストーカーなのか」と、本気で驚く人もいるほど無自覚だったり、逆に「僕を止めて下さい」とカウンセリングに駆け込むストーカーもいるという。 

 だが、さらに状況が進むと「妄想的な恨みの感情に全身が支配され、殺意を肯定するまでに至り」、相手を傷つけるまでにエスカレートすることも。もちろんそれは稀であるらしいが、そうなればストーカーは世間を騒がす凶悪犯罪者になってしまう。

 では、ストーキング行為や凶悪犯罪に走らせないためにはどうしたらいいのか。ともすれば誤解されかねないが、ストーカーは犯罪という観点だけでなく、一種の“心の病”に罹っているという視点を持つことが必要だという。理由は簡単だ。「本当のストーカーはストーカー病の患者」という視点を持つことで、「保護と治療の対象」と見なされる。そうなればストーカーは “治療”するためのカウンセリングや医療を受けることも可能となるのだ。こうした「加害者を治す医療」はストーカーのケアだけでなく、被害防止という観点でも有益だ。実際、警察も「ストーカーの心理的動機、その背景にある医学的な問題」に目を向けつつあるという。ストーカーを一種の病ととらえ、医療につなげ専門ケアを行う。被害者側が身を守るためにも利点は大きい。

 ストーカーは一般には理解できないこだわりや「相手に拒絶され、見捨てられたという被害者意識」を持ち、怒りの感情を持ち続ける。そこから一歩踏み出して、“治療する”という観点が必要になってくるのは当然の流れかもしれない。

 もちろん、現実問題として解決は難しいかもしれない。しかし実際にカウンセリング等を通し、相手に向かっていた攻撃が自分の内面への“探求”に変わるなどの「意識変換」が成功した例もあるという。警察、行政、NPO、そして医療やカウンセリングなどの緻密な連携で、多くの悲劇を事前に食い止められる可能性は高い。一刻も早くそうした体制が整うことを願いたい。
(伊勢崎馨)

最終更新:2014.12.03 07:09

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