ストーカー500人に対峙したカウンセラーが分析する彼らの共通性とは?

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 彼ら彼女らは被害妄想が強く、またプライドが高いうえに傷つきやすい傾向にあるという。そして「評価されなければ、自分に価値はないと思いこんで」いる。自己愛が強く、そのため「その虚像を一緒に支えてくれる賛美者」が常に必要だ。しかし、相手が少しでもそれを怠ると自分が不幸なのは相手のせいだと怒り、「切った張ったの騒ぎ」となる。過剰な愛情表現といえなくもないが、それは自己中心的で異様なものだ。その根源には“怒り”や“依存”も存在するという。

 ストーカーがよく口にする言葉がある。

「信頼関係を壊したのは相手だから、信頼関係を取り戻す努力をしろ」

 ある男性は「全ての女性が信じられなくなったのは彼女のせいだ。その責任を取らせたい」「俺は見下された」と怒ったという。ストーカーは「妄想的に自分の正当性を信じ、迷惑をかけている」にも関わらず「相手に好意を持たれることを望んでいる」という相矛盾した感情も持つという。

 あまりに身勝手で極端な思考性。しかもストーカーは警察に警告され、初めて「自分がストーカーなのか」と、本気で驚く人もいるほど無自覚だったり、逆に「僕を止めて下さい」とカウンセリングに駆け込むストーカーもいるという。 

 だが、さらに状況が進むと「妄想的な恨みの感情に全身が支配され、殺意を肯定するまでに至り」、相手を傷つけるまでにエスカレートすることも。もちろんそれは稀であるらしいが、そうなればストーカーは世間を騒がす凶悪犯罪者になってしまう。

 では、ストーキング行為や凶悪犯罪に走らせないためにはどうしたらいいのか。ともすれば誤解されかねないが、ストーカーは犯罪という観点だけでなく、一種の“心の病”に罹っているという視点を持つことが必要だという。理由は簡単だ。「本当のストーカーはストーカー病の患者」という視点を持つことで、「保護と治療の対象」と見なされる。そうなればストーカーは “治療”するためのカウンセリングや医療を受けることも可能となるのだ。こうした「加害者を治す医療」はストーカーのケアだけでなく、被害防止という観点でも有益だ。実際、警察も「ストーカーの心理的動機、その背景にある医学的な問題」に目を向けつつあるという。ストーカーを一種の病ととらえ、医療につなげ専門ケアを行う。被害者側が身を守るためにも利点は大きい。

 ストーカーは一般には理解できないこだわりや「相手に拒絶され、見捨てられたという被害者意識」を持ち、怒りの感情を持ち続ける。そこから一歩踏み出して、“治療する”という観点が必要になってくるのは当然の流れかもしれない。

 もちろん、現実問題として解決は難しいかもしれない。しかし実際にカウンセリング等を通し、相手に向かっていた攻撃が自分の内面への“探求”に変わるなどの「意識変換」が成功した例もあるという。警察、行政、NPO、そして医療やカウンセリングなどの緻密な連携で、多くの悲劇を事前に食い止められる可能性は高い。一刻も早くそうした体制が整うことを願いたい。
(伊勢崎馨)

最終更新:2014.12.03 07:09

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