日テレ女子アナ内定取消し、ホステスがNGでミスコンがOKなのはなぜだ!?

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日テレ女子アナ内定取り消しをスクープした「週刊現代」(講談社)11月22日号

 大きな話題となっている、日本テレビの女子アナ内定取り消し問題。東洋英和女学院大学の笹崎里菜さんが、来年4月の「採用内定」を日テレから得たものの、人事担当者にホステスのバイト歴を報告したところ、今年5月に内定を取り消されたという事件だ。「週刊現代」(講談社)11月29日号に掲載された記事によると、日テレ人事局長から彼女に送られたという書面には、こう書かれていたという。

〈銀座のクラブでホステスとして就労していた貴殿の経歴は、アナウンサーに求められる清廉性に相応しくないものであり、仮にこの事実が公になれば、アナウンサーとしての業務付与や配置に著しい支障が生ずることは明らかです〉

 アナウンサーに求められる清廉性──この文面を読んで、失笑を禁じ得なかった人も多いだろう。だいたい、女子アナがテレビ局に要求されているのは、朝はおじさん好感度を狙ったゆるふわファッション、夜は大物芸人やタレントのご機嫌をうかがって露出の高いドレスに身をつつみ、台本の流れを妨げない進行を行う、ほとんどホステス業務のようなもの。アナウンス技術なんて二の次、三の次なのだから、むしろホステス経験者というスキルを評価しろよ、と言いたくなる。

 だが、ここでつっこみたいのは、そんなことじゃない。問題は、彼女が「ミス東洋英和」だったってこと。“ミスキャンパスはOKでホステス経験はNG”という倫理観こそ、どうかしてると思うのだ。

 ご存じの通り、女子アナのミスキャンパス率は非常に高い。もちろん日テレに限ったことではなく、先日、TBSを退社した田中みな実と、滝川クリステルはミス青山学院の準ミスだし、ナインティナイン・矢部浩之の妻で元TBSの青木裕子と、産休から復帰した日本テレビの鈴江奈々、テレビ朝日の竹内由恵、元フジの中野美奈子はミス慶應だ。このほかにも、『とくダネ!』に出演中のフジテレビ・梅津弥英子、テレ朝の市川寛子、日テレの森麻季はミス青山学院、フジの本田朋子と戸部洋子、日テレの豊田順子はミス立教、テレビ東京の大橋未歩とフジの西山喜久恵はミス上智(ミスソフィア)……と、挙げればキリがない。有力なコネがなく、さらに元フジの平井理央やテレ東の紺野あさ美のようにアイドル出身という話題性も持ち得ない者は、最低でもミスキャンパス受賞歴が必要なのだろう。局アナ試験の実態はミスコン、と言っても過言ではないほどの採用率だ。

 「ミスコンは外見だけでなく内面性も問われるコンテストだ」などとのたまう、頭の悪いテレビ局の人事部のおじさんや学園祭実行委員もいるだろう。はっきりいって、そんなものは90年代にフェミから声高にミスコン反対を訴えられて編み出した言い訳のようなものだ。やっていることは、結局、容姿で女に序列をつくっているだけに過ぎない。

 一方、ホステスは女性という性を利用し、男性を接待する商売だが、かわいいだけでは決してのし上がれない。高級クラブともなれば、話術は無論、政治や経済といった話題にも明るくてはならないし、相手の心を見抜く洞察力なども求められる。逆にいえば、たとえ美人でも客は飽きてしまうという“女性性だけでは勝ち残れない”世界なのだ。そう考えれば、ほぼ容姿でジャッジするミスキャンパスのほうが、よほど下品である。そんなものに採用基準にしておいて、よくもまあいけしゃあしゃあと日テレは「清廉さに欠ける」と言いのけたものだ。

 さて、ここまで「ブスな女が美人をひがんでミスコン批判してる」と思いながら読んできた男子諸君にも、ぜひここで伝えたいことがある。それは、男性にもこれは他人事ではない、ということだ。

 さっきも述べたように、90年代の初頭にはフェミたちがミスコン反対を叫んだ。そのときの主張のひとつは、「男性から見た“女性の美”で女たちを競い合わせるのは、男性優位社会の象徴だ!」ということだった。だが、これはもう今日には通用しない。なぜなら、多くの大学学園祭ではミスキャンパスと同時に「イケメンコンテスト」も開催されているからだ。女性の視点で“男性の美”をジャッジするという、女性主体の“男性の客体化”が行われるようになったのである。

 社会において“容姿優先”なのは女子だけではない。以前、サイバーエージェントの内定式の様子が「リア充だらけ」と評判になったが、そこに写っていたのは細身で美形の男女ばかり。男性も局アナも、フジの生田竜聖のように「兄がジャニーズ」レベルのイケメン度が求められつつある。現実に「顔採用」の存在が感じられるからこそ、男子学生のなかには就活対策として女子同様にダイエットに励んだり、なかにはプチ整形を行う者もいる。

 そして、「顔採用」の先行事例が豊富な女子学生たちは、ミスコンにも肯定的だ。日本経済新聞の記事によれば、近年、ミスコンは活況で、「各大学のミスが有名企業に相次ぎ就職したとの評判が刺激となり、大学のミスコンの応募者は年々増えている」という。男子の顔面偏差値が問われるようになった現代の状況を考えれば、男子学生にも早晩、「就職のためにイケメンコンテストに応募する」というような時代がやってくるだろう。

 ミスキャンパスは社会の縮図だ。容姿で人間をジャッジする社会は、「肥満は怠慢な性格の表れ」「ブサイクは努力不足」と烙印を押す。やがてそうした偏見は、さまざまな“区別”と称する差別を助長するだろう。

 問題は日テレだけではないし、女性だけのものでもない。そのことを、ゆめゆめお忘れなきよう。
(田岡 尼)

最終更新:2015.01.19 04:13

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