今年もマスコミが伝えなかった御巣鷹・日航ジャンボ機墜落事故の謎

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『御巣鷹の謎を追う』(米田憲司/宝島社)

 1985年8月12日に起きた日航機123便の墜落事故。群馬県・御巣鷹の尾根にジャンボ機が墜落、520名の命が失われた世界最大の航空事故である。

 事故から30年近く経つが、毎年8月12日には現地からの慰霊の様子がニュースで中継され、多くの特集番組が企画されてきた。今年は、フジテレビが『8.12日航機墜落 30回目の夏 生存者が今明かす“32分間の闘い”ボイスレコーダーの“新たな声”』を放送した。操縦室内の運航乗員の声を録音したボイスレコーダーを新たに解析して事故を検証、生存者の証言などから構成した再現ドラマが主な内容であった。

 しかし、ボイスレコーダーはすでに15年ほど前から各マスコミが独自に入手して公開。新たな聞きとりも幾度となく試みられており、2005年刊行の『御巣鷹の謎を追う』(米田憲司/宝島社)には、音声そのものがDVDとして付録されているほどである。

「ボイスレコーダーの音声には不明瞭な部分が多く、聞く人によって聞こえ方が違う部分もあります。過去にも事故調査委員会の発表に異を唱える指摘が何度も出されてきて、ある程度論議し尽くされた感はありますね」(テレビ関係者)

 案の定、今回の放送内でも“新たな声”というほどのことはなく、日航の元機長が「ここはこう言っているように聞こえる」などと解説しながら、乗務員の奮闘ぶりを伝えるといったものだった。

 一方で、遺族を中心にいまだに不満がくすぶり続けているのは、事故原因の真相究明や捜索活動における初動への疑問である。

 特に、防衛庁が4回にもわたって誤った墜落地点を発表して捜索が混乱した点や、事故現場特定における米軍と自衛隊との連携など、前出の『御巣鷹の~』で、かなり詳細に指摘された問題点についての追及は大手メディアでは全くなされていないのが現状だ。

「事故から10年後に、米空軍の航空機関士アントヌッチ中尉の証言で、墜落から30分もかからない段階で自らの輸送機がすでに現場に到着していた事実が明かされました。しかも、降下して救助するという乗員の意向が上層部からの命令で中止させられたにもかかわらず、実際の捜索活動が翌朝まで開始されないという異常な事態が起きていたのです」(事故を取材したジャーナリスト)

 番組のHPでは“消えることがない事故原因・救出活動への疑問”と触れられているこれらの問題。だが、放送ではこの“救出活動の疑問”には焦点が当たらず、代わりにというべきか、当時最前線で捜索に当たった自衛隊員が登場。生存者との感動秘話や自衛隊員の活躍がいささか英雄仕立てに仕上げられていた。

「当時、事故現場からの生存者の救出はフジテレビだけが生中継できました。その映像をより効果的に使うためにも、自衛隊員の協力と証言が必要だったのかもしれません」(同)

 もちろん、現場の自衛官は必死に仕事をしただろうし、その活躍は尊いものだろう。しかし、生存者の証言から、墜落直後には他にも多くの生存者がいたことも明らかになっている。救助活動がより早く行われていれば、生存者が増えた可能性は極めて高いのだ。

 事故の悲劇を繰り返さないためにも、事実の検証と責任の追及を徹底的にやるのがジャーナリズムの使命のはずだ。その視点は、福島で起きた原発事故の検証にもつながるだろう。

“事故を風化させてはならない”という作り手側の思いは伝わる番組だった。だが、それならば自衛隊に取材協力をお願いするより、もっと大事なものがあるのではないのだろうか。
(田部祥太)

最終更新:2014.09.16 07:58

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