大手バイオメーカーの4代目社長が告白する“同族経営”の異常性

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『林原家 同族経営への警鐘』(日経BP社)

 景気回復が叫ばれながら、相変わらず企業の経営破綻が続いているが、そのひとつのパターンとしてあげられるのが、同族企業の放漫経営による破綻だろう。創業者一族が会社を私物化し、無茶な新規投資や私的な遊興費流用などで、経営が傾いてしまうケースだ。

 少し前なら、西武や三洋電機、穴吹工務店、最近では2011年に会社更生法の適用を受けた大手バイオメーカーである林原などは典型かもしれない。

 林原といえば、一般的な知名度はないが、3代目がブドウ糖製造で大きく発展させた会社で、中国地方では最大規模を誇る研究開発型の大手企業だった。ところが、4代目の林原健が社長に就任してしばらくしてから、抗がん剤に使われるインターフェロンの生産・販売、都市開発やホテル事業、美術館を開館するなど、多方面に進出。多くの事業で焦げ付きが発生すると同時に不正経理や粉飾決算も発覚し、とうとう11年に破綻してしまったのである。

 少し前、その林原を潰した4代目社長・林原健の告白本『林原家 同族経営への警鐘』(日経BP社)が出版された。これを読むと、林原という会社の場合は、ボンボンが会社を潰したというだけではすまない、かなり特殊な事情があったことが浮かび上がってくる。

 同社は、社長であり長男の林原健のもと、弟・靖が経理担当専務だったほか、従兄弟や血縁関係で幹部が占められていた。結果から言えば、破綻の原因は不正経理、粉飾決算、役員の巨額の資金流出などだったが、兄によれば倒産した理由は「経理部門を任せていた弟、林原靖と私の関係性」にあるという。

『林原家』によると、林原兄弟は創業一族であり社内で当然のように「絶対的」な存在だったが、2人は「対等な関係になく、間違いなく上下の服従関係」にあったという。弟は兄を異常なまでに恐れ、非常に丁寧な敬語を使っていた。それは林原一族の宿痾でもあったらしい。

「(林原家は代々)長幼の序を重んじた徳川将軍家よろしく、長男の私には絶対的な強さが、弟には兄への絶対的な忠誠が求められた」

 ところが、その絶対的な権力をもつ兄は会社の経営にほとんどの関心がなかった。同書の中でも当人がこう書いている。

「私は1日3時間しか出社しない」社長だった。それどころか「利益や借入金はおろか、売上高さえ正確には把握していなかった」。重要な印鑑類も「弟が基本的に自由に使えるよう」にして、経理、営業、人事、総務など会社の実務一切を弟に任せ、自分は「社外でいろいろな分野の専門会に合ったり、自宅でバイオテクノロジーや医薬の専門書を中心にあらゆるジャンルの書籍を読んだり(中略)研究テーマの発掘に徹し」ていた、と。

 会社はすべて弟に任せ、自分は研究生活。よって会社で何かあったとしても「彼ら(弟以下同族役員)の報告を待つしかすべはなかった」という。

 一方で、健は湯水のように金を使っていた。健は美術コレクターとしても知られていて、高額の美術品を購入し林原美術館まで運営していたが、「必ずしもその美術品が好きで買った」のではなく、「美術商から泣きつかれたら、思わず個人のお金、会社のお金で買ってしまう」という。優雅に見える社長生活の年俸も確かに優雅で「10年で15億円以上」だったという。

 そんな兄に弟は不満を募らせていく。そして、表面上は絶対服従を装いながら、造反的な行為を進行させていったのだ。

「倒産後の調査で、弟は私に何の報告もなく(弟が経営する)太陽殖産に資金をどんどん移していたことを知る」「(弟は)自分の資産管理会社に、相続対策や資本政策のための資金を林原から移していた」「それ以外にも、神戸の北野異邦人館にある複数の飲食ビルに多額の資金を(個人的に)流していた」。しかも「自分の知らないうちに16億5800万円もの負債」を背負わされたという。

 何もかもを弟に任せた上の破綻。だから、銀行から破綻したと聞かされても「何がなんだか皆目理解できなかった」とさえ記している。

 なんとなく経営破綻の責任もすべて弟のせい、といいたげなのだが、破綻の原因を調査した外部調査委員会の報告書や、特別背任の立件を捜査した検察は、資金流失は“健と靖”が主導したものと断定、過去10年の間に健に支払われた金の中で3億円が使途不明だったことが指摘されている。

 弟に会社の経営をも丸投げにし、告白本出版で、経営破綻の責任を押しつけようとする兄。なんとも風変わりで無責任なキャラということは確かなようだが、最後に健の浮き世はなれした強烈エピソードを紹介したい。もちろんこれも告白本で自ら明かしたものである。

「私には霊が見える。どのように見えるかというと、ブルース・ウィリス主演のハリウッド映画『シックス・センス』をイメージしてもらえばいい。町中の至る所で、死んだ方たちが私の前に現れる」

 こんな仰天告白をまじめに語る4代目社長の林原健。そのキャラが会社破綻に関係したのかどうか──それは定かではない。
(林グンマ)

最終更新:2018.10.18 03:24

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