日本の嫌韓本が韓国の“反日ビジネス”に丸乗りするパラドックス

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
hannichibusiness_01_140718.jpg
『韓国人による恥韓論』(扶桑社新書)

 先日、このサイトで配信した記事「『嫌韓は日本の韓国化』産経の保守派論説委員が嫌韓ブームを批判」は大きな反響を呼んだ。30年間にわたって韓国問題を取材し、韓国の反日ナショナリズムを批判してきたはずの黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在客員論説委員が、日本の嫌韓ブームに真っ向から異議を唱えたことは相当な衝撃だったらしい。

 その黒田氏がもうひとつ、「嫌韓本」の意外なカラクリを指摘している。問題にしているのは、2013年に起きて、複数の嫌韓本に取り上げられた「親日老人撲殺」事件だ。

 いったいどんな内容なのか、20万部を突破したベストセラー『韓国人による恥韓論』(シンシアリー/扶桑社新書)からその震撼ニュースを紹介してみる。

「もし、反日に酔い過ぎで完全に制御を失うと、獣になると、どうなるのでしょうか。実例です。2013年5月、ソウルの鍾路にある有名な公園で、38歳の男が95歳の老人を殴り殺す事件がありました。老人が『日本の植民地支配は、よかった』と話し、それを聞いた男が激怒したのです。犯人は老人を蹴り倒し、杖を奪って頭を集中的に殴り、結局は殺してしまいました。」(P174)

 著者のシンシアリーは、自称1970年代、韓国生まれ、韓国育ちの韓国人歯科医師。親日派の立場から、韓国の反日思想を皮肉ったブログを本にしたものだ。

「親日老人を撲殺する」というニュースは衝撃的とあってか、20万部を超えるベストセラー『呆韓論』(室谷克実/産経新聞出版)でも紹介されている。

 著者の室谷は元時事通信ソウル特派員という経歴で、独自の韓国ネットワークからの豊富な情報量と“嫌韓”のスタンスで日本の夕刊紙などで引っ張りダコになり保守系文化人の仲間入りを果たした人物だが、その室谷はこう書く。

「日本のネットの世界ではかなり話題になった事件だが、全国紙もテレビも取り上げていないようなので、あえて書くことにした。
 事件が起きたのは、13年5月。ソウルのメーンストリートであるチョンノの脇にある宗廟市民公園で、酒に酔った37歳の男が、95歳の老人に暴行を加えた。老人が『日本の統治時代は良かった』と述べたことに、男が腹を立てての犯行だった。これが事件当時ほとんど報じられなかったのは『単純傷害事件』として処理されたためらしい。
 しかし、老人が収容先の病院で死亡し、事件は傷害致死となり、ソウル地裁は9月10日、男に懲役5年を宣告した。12日になって韓国紙『世界日報』が報じたのを、日本の俊敏なる韓国ネットウォッチャーが見逃さなかった──これまでの経緯だ」
「判決報道の後、韓国のネットには、犯人を英雄視し、殺された親日老人を罵倒する書き込みがあふれた」

 この事件は他にも、『韓国「反日謀略」の罠』(拳骨拓史/扶桑社)や『もう、この国は捨て置け! ─韓国の狂気と異質さ』(呉善花、石平/ワック)など、さまざまな嫌韓本に取り上げられている。そして、これらの本の記述を読むと、「親日老人撲殺」事件は、日本のマスコミでは取り上げられていないが、韓国では大きく報じられている周知の事実のような印象を受ける。

 だが、この「親日老人撲殺」事件は、日本だけでなく、韓国でもまったく知られていないという。黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在客員論説委員は、今年2月に週刊誌「週刊朝鮮」に寄稿した原稿の中で、この「親日老人撲殺」事件について次のようにふれている。

「たとえば、昨年にソウルで『日帝時代はよかった』と言った老人が酒に酔った30代に殴られて死んだという事件について問い合わせの電話があった。聞いてみると、日本で韓国発のネット情報で知ったという。酒に酔った者が老人相手に殺人までしたなら、いろいろ原因があるのだろうが、韓国のネット情報は反日事件として日本に送ったのだ。その結果、日本では『韓国の反日感情はそれほどひどい』と興奮する」

 つまり、“嫌韓本”は韓国のあやふやなネット情報に丸乗りしたにすぎないようなのだ(しかも、丸乗りしたはずの犯人の年齢が「38歳」(シンシアリー)、「37歳」(室谷)とバラバラである)。

 さらに問題なのは、今回の「親日老人撲殺」事件の大元のニュースソースがどうも「韓国紙『世界日報』」だということだ。「世界日報」といえば、宗教団体「統一教会」(世界基督教統一神霊協会)系の新聞である。韓国情勢に詳しい新聞記者はこう話す

「『世界日報』はバリバリの反共で報道というよりもオピニオン色が強い。もし、日本のマスコミのソウル特派員が『世界日報』のニュースを日本に配信したらデスクに『何を流してきてるんだ』といわれるでしょうね」(韓国情勢に詳しい新聞記者)

 もちろん、「世界日報」のニュースだからといってガセときめつけるつもりはないが、少なくとも韓国の主要メディアでは、「世界日報」の報道の前も後もこの事件を取り上げて、老人撲殺の原因が親日発言だったと報じたところは皆無だった。
 
 黒田氏はこのケースをテキストに、韓国の一部のメディアが極端な“反日ビジネス”を展開しており、それが結果的に日本の反韓ブームをあおっているのではないかと韓国側に注意を促している。しかし、それは日本も同じだろう。反日ビジネスで極端な論調を展開している韓国発のネット情報を真偽の検証もしないまま鵜呑みにして、日本人の韓国憎悪を煽っているとしたら、それはあまりに不毛な“嫌韓ビジネス”というしかない。
(エンジョウトオル)

最終更新:2014.07.18 08:04

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

日本の嫌韓本が韓国の“反日ビジネス”に丸乗りするパラドックスのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。反日嫌韓統一協会の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 安倍政権が拉致被害者の生存情報を隠し
2 渡辺謙が東京五輪の東北無視を批判!五輪の人命軽視がひどい
3 自民党・田畑毅議員の離党は女性への暴行が原因か
4 安倍がトランプ「ノーベル賞に推薦された」で世界に恥
5 蓮池透氏が著書で安倍の冷血を批判!
6 データ不正、元厚労次官の村木厚子が「何かの圧力」発言
7 ネトウヨ局アナがテレ朝のお昼の顔に
8 厚労省に圧力をかけた首相秘書官は安倍首相の子飼い官僚
9 桜田五輪担当相「がっかり」発言は安倍政権の五輪至上主義のせい
10 安倍首相にマッチョ批判
11 ブレる松岡修造語録を読み解く
12 『スキャンダル専門弁護士』が伊藤詩織さんやはあちゅうを揶揄
13 森友学園が麻生財務相側近に口利き依頼
14 菅義偉官房長官が国会で望月衣塑子記者をフェイク攻撃
15 青山繁晴が前川氏に論破されてボロボロ
16 安倍が『委員会』でネトウヨトーク!
17 不適切動画バイトを血祭りにあげるマスコミとネットの異常
18 葵つかさが「松潤とは終わった」と
19 日露首脳会談大失敗を御用メディアが必死のフォロー!田崎は…
20 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
1 嫌韓批判で炎上も…石田純一はブレない
2 玉川徹が中国人のマナーをあげつらう自番組を批判!
3 勤労統計不正で厚労省委員が官邸と菅長官の圧力を証言
4 安倍首相「自衛隊募集に6割以上の自治体が協力拒否」は嘘だった
5 小川彩佳アナが『NEWS23』キャスター就任か!
6 青山繁晴議員が「僕と握手したらガンが治った」と吹聴
7 「子ども産まないのが問題」麻生が「金がないなら結婚するな」
9 統計不正は安倍政権ぐるみの偽装だった証拠が!安倍に合わせ…
10 安倍「私は森羅万象を担当」発言の背景
11 厚労省に圧力をかけた首相秘書官は安倍首相の子飼い官僚
12 安倍政権が拉致被害者の生存情報を隠し
13 北方領土の日、「日本固有の領土」の主張が消えた! 
14 首相官邸の望月記者排除に新聞労連が抗議声明
15 国家公務員と利害関係者の「ゴルフ解禁」の背後に安倍
16 小川彩佳アナ退社の要因はテレビ朝日の安倍政権忖度か
17 安倍首相「サンゴは移した」の嘘に琉球新報編集局長が痛烈批判
18 辻元清美の外国人献金に大騒ぎする夕刊フジの愚劣
19 不適切動画バイトを血祭りにあげるマスコミとネットの異常
20 安倍がトランプ「ノーベル賞に推薦された」で世界に恥

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄