がん告知、失恋、子宮摘出…AV女優・麻美ゆまの壮絶な闘病

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『Re Start ~どんな時も自分を信じて~』(講談社)

「卵巣に良くない腫瘍が見つかり、手術を行い、現在抗がん剤の治療をしています」

 人気AV女優であった麻美ゆまがTwitterでそう告白して、約1年が経った。休業宣言と激やせぶりから、ネット上では「何か重い病気なのでは?」と憶測が広がっていたが、この告白に衝撃を受けた人は多かった。当時、彼女の年齢は26歳。厳しい治療に耐えるだけでなく、卵巣と子宮を全摘出するという酷な現実。彼女に“お世話になってきた”男性以上に、女性のほうが他人事とは思えず胸を締め付けられたはずだ。

「私と同じ経験をする人が一人でも少なくなれば」──そんな思いで彼女が綴った自伝『Re Start〜どんな時も自分を信じて』(講談社)から、その壮絶な闘病を紹介しよう。

 まず、麻美が病院を訪れたのは、2013年1月のことだった。以前から腸の調子が悪く下痢が続き、そんなに食べてもいないのにお腹がぽっこりと膨らむように。さらに膨満感もひどくなり、ようやく時間もできたので病院の「総合診療科」を受診した。もちろん、そのときは深刻な病気であることなど想像もせず、たんなる腸炎くらいに捉えていたという。

 しかし、担当した医師は予想外の話を始める。「けっこうな量の腹水が溜まっているんですよ」。婦人科で詳しく検査を行うこととなり、その後告げられた検査結果はあまりにショックな内容だった。

“卵巣に「あまりよくない腫瘍」が写っている。10人が見たら10人が悪性だと疑うものだ。早く手術が必要で、抗がん剤の治療も行う。子宮と卵巣も全摘出することになる”

 ──この結果を聞かされ、当然のことながら麻美の頭の中は真っ白に。自分は卵巣がんなんだと思い込むばかりで、気持ちの整理もつかない。それでも彼女は、その足でメンバーとして活躍していた「恵比寿マスカッツ」のCDジャケット撮影に参加。このときの写真が本書にはおさめられているのだが、そんな不安など露とも感じさせず、麻美はおどけたポーズで元気な笑顔を浮かべている。だが実際は、「心身ともに限界でした」と振り返る。

「カメラを向けられ、いつものように笑おうとしても、勝手に涙が流れそうになってしまうのです。メンバーに「また痩せたね」と言われ、作り笑いでごまかしたけれど、心の中はグチャグチャでした」(本書より)

 しかも、この病気を告知された日、彼女にはもうひとつ辛い現実が待ち受けていた。当時、麻美は元カレの男性に別れた後も思いを寄せており、その元カレに病気のことを告白。彼は「支えになりたい、ずっとそばにいるよ」と言い、朝まで一睡もせず寄り添っていてくれたのだが、朝方、彼の自宅のトイレで、自分のものではない生理用ナプキンが置いてあるのを目にしてしまうのだ。

 好きな彼女がいるのに、彼は病気になった自分を見放すこともできない。私は彼にとって重荷だ──そう感じた麻美は、彼と本当の別れがやってきたことを知る。それでも闘病中も、ずっと彼のことが頭を離れなかったそうだ。

 そうして希望を失ったまま迎えた、運命の手術の日。術後わかったことは、悪性と思われた腫瘍は“境界悪性腫瘍”という「良性と悪性の間の性質を持つ病変」だったこと。しかし、“がん細胞がお腹の中にばら撒かれている状態”の腹膜播種があり、それもステージⅢbとかなり進行していたらしい。術中には堪った腹水を2リットルも抜いたといい、術後に体重を計った際は健康なときから9キロ減の39キロになっていたというから、これ以上病気の発見が遅ければとても危険な状態に陥っていたのかもしれない。

 手術の成功によって、前向きになって治療に立ち向かう人は多い。だが、彼女はそうではなかった。一時退院の許しが出た後、麻美はたったひとり、ふらりと岩手や北海道に旅に出た。そのときの感情をこのように記している。

「子供を産めない身体になってしまった悲しみ、待ち受ける抗がん剤治療……。様々な思いが入り乱れて、現実と向き合いたくなかったのです」(本書より)

 それでも、東京に戻り抗がん剤治療に挑んだ彼女。その副作用だけでも大変だが、子宮と卵巣を摘出しているため、不眠や動悸、ホットラッシュといった更年期のような症状にも苦しめられたという。さらに病気で無収入になったため、生活レベルを落とすべくマンションを引っ越したり、病気を抱える母の心配をしたりと、気がかりは山積していた。

 しかも、病気を公表したときには、ネット上の「セックスのしすぎで卵巣の病気になったらしい」「自業自得だ」などという書き込みも目に入ってきた。AV女優に向けられる偏見のまなざしと、「婦人科系の病気=セックスが原因」という病気への無理解──心ない人々の声に、闘病中の彼女は胸を痛めたに違いない。

 いま、抗がん剤治療も終えた麻美は、イベントや講演会、ライブに参加するなど、活動を再開させている。AV復帰については「観てくださる方に「エロ」以外の余計な思いを持たせてしまった時点で、プロ失格」といい、現状は白紙状態だ。

 だが、病気になったことで“歩けること、身体を動かせること、食事ができること、友達と会えること”といった身近な幸せに気付いたという彼女。本の最後に掲載された、まるでジーン・セバーグのようにキッパリとした彼女の笑顔は、これまで以上に魅力的だ。
(田岡 尼)

最終更新:2017.12.07 06:19

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