“ステマ”は小泉進次郎だけじゃない 自民党が十数年、組織ぐるみでやってきた卑劣な“ステマ”野党攻撃と情報操作の手口を検証

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自民党総裁選特設サイトより


 ついに明日、投開票がおこなわれる自民党総裁選。候補者が揃いも揃って排外主義の広がりに待ったをかけるでもなく外国人に対する規制強化を打ち出し、とりわけ高市早苗氏にいたっては根拠を示すことなく“外国人が奈良の鹿を蹴り上げる”などと主張。外国人ヘイトで支持を得ようとする醜悪な選挙戦を展開してきた。

 だが、今回の総裁選でもっとも呆れ果てたのは、高市氏との決選投票が目されている小泉進次郎氏の“ステマ”問題だ。

 周知のとおり、小泉陣営で「総務・広報班」班長を務めていた牧島かれん・元デジタル大臣が、小泉陣営関係者に対して「ニコニコ動画でポジティブなコメントを書いて欲しい」と依頼していたことを「週刊文春」(文藝春秋)がスクープし、小泉陣営も事実関係を認めた。

 しかも、書き込みを依頼したメールでは〈ようやく真打ち登場!〉〈総裁まちがいなし〉〈去年より渋みが増したか〉〈泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね〉などというコメント例まで提示。こんな恥ずかしい称賛コメントをやらせで仕込もうとはダサすぎて言葉もないが、〈ビジネスエセ保守に負けるな〉という高市氏を揶揄したようなコメント例もあったことからとくに高市支持者が激怒。小泉氏の側近である神奈川県議が前回総裁選でほとんどが高市氏を支持したという党員約800人を離党扱いにしていたと報じられたこともあり、SNS上では「小泉陣営による高市潰しだ!」と噴き上がりつづけている。

 こんな卑劣なやり口の総裁選をおこなっている時点で、小泉氏に総理大臣はもとより公党トップになる資格はない。さっさと立候補を辞退すべきだろう。

 だが、それ以上に指摘したいのは、“ステマ”的手法が小泉氏にかぎった問題ではなく、「自民党のお家芸」であるということだ。実際、この十数年の間、自民党は組織ぐるみでこの卑劣な手法を駆使し、野党やメディア攻撃、世論誘導をおこなってきた。

 たとえば、2013年の参院選を前にニコニコ動画で生中継された党首討論会では、現デジタル担当相で当時自民党のネットメディア局長を務めていた平井卓也・元デジタル大臣が、社民党・福島瑞穂党首の発言中に「黙れ、ばばあ!」、安倍晋三首相の発言に「あべぴょん、がんばれ」などと書き込んでいたことが発覚している。

 自民党内の足の引っ張り合いならまだしも、国政選挙を控えて実施された党首討論で、野党の党首に対して「黙れ、ばばあ!」などと誹謗中傷コメントを書き込む──。しかも、自民党政権はこのような“前科持ち”を後に初代デジタル大臣に抜擢しているのである。

 さらに言えば、現デジタル大臣の平将明氏は、今回の小泉陣営のやらせコメント問題について「陣営ごとにニコ生など討論会で『みんなで応援しましょう』みたいなのは普通にあっていい。許容されることだろう」「相手の悪口ととられかねないワードが示されていたところが問題だ」などとコメントしたが、じつは平デジタル大臣も、自民党ネットメディア局長時代、自民支持者にネガティブキャンペーンを推進した過去がある。

 自民党は2017年の衆院選公示直前に、自民党の公認組織で他党や政敵へのネガティブキャンペーンをおこなう“ステマ部隊”として使っているといわれてきた「自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)」の緊急総会を開催。そこでは「ネトサポ」と呼ばれる会員から「“従軍慰安婦像の辻元清美”や“手榴弾を投げる人民解放軍姿の志位和夫”の画像は誹謗中傷になるか?」といった質問が飛び出したのだが、当時ネットメディア局長としてJ-NSCを統括していた平氏は「あの、個人のご判断だと思います、はい」と笑いながら返答し、容認したのだ。

 野党議員に対する悪質なコラ画像による投稿を容認することは事実上、公党としてネガキャンを実行させているようなもの。こうした卑劣なネット戦略を推進させてきたのが、自民党の正体なのだ。

フェイク撒き散らしのネトウヨアカウント「Dappi」も自民党幹部と深い関係が

 自民党による世論誘導・情報操作の実例はまだまだある。とくに忘れてはならないのが、「Dappi」問題だ。

「Dappi」とは安倍政権下の2015年秋、Twitter(現・X)に現れたネトウヨ匿名アカウント(開設時期は凍結処分前も含む)。フォロワー数約16万というインフルエンサーだったDappiは野党やリベラル系メディア叩きとあからさまな自民党擁護をおこない、フェイク情報を大量に投稿。それを自民党議員やネトウヨが拡散し、フェイクがSNS上にばらまかれた例は枚挙にいとまがない。

 なかでも象徴的なのが2020年10月の投稿だ。森友公文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんについて、Dappiは立憲民主党の小西洋之参院議員と杉尾秀哉参院議員が〈1時間吊るしあげた翌日に自殺〉と投稿。だが、小西・杉尾両議員が近畿財務局の職員と面談した事実はなく、完全なデマだった。

 しかし、その後、衝撃の事実が明らかになる。小西・杉尾両議員が発信者情報の開示請求をおこなったところ、Dappiの発信元が個人ではなくウェブ・広告の制作会社であるワンズクエスト社であることが判明。しかも、このワンズクエスト社の社長が、なんと「陰の自民党幹事長」とも称される自民党の事務総長である元宿仁氏の親族であることが発覚したのだ。

 小西・杉尾両議員がワンズクエスト社を提訴した裁判では、東京地裁が2023年10月、会社側に計220万円の支払いと問題の投稿の削除を命じたが、この判決で東京地裁は「投稿は会社の業務として、社長の指示の下、ワンズクエスト社の従業員あるいは社長によって行われた」と認定。さらに、投稿者についても「社長の可能性は相応にある」としている。つまり、自民党本部の事務方トップである元宿事務総長が、デマやフェイクによって野党やリベラルメディアを貶める世論工作をおこなうために、自身の親族にアカウントを運営させていた、と見られているのである。

 このDappiと自民党の関係については、テレビをはじめとする大手メディアが大きく扱われなかったために周知されていないのが実情だが、本来なら自民党の解党に値するようなとんでもない問題だ。

 また、自民党による組織的な情報操作として有名なのが、電通からの提案で始まったとされる自民党のネット対策の特別チーム「Truth Team」(T2)プロジェクトだ。

 安倍政権下の2013年参院選挙時、自民党は「T2」を立ち上げ、専門の業者に委託するかたちでツイッターやブログの書き込みなどを24時間監視。自民党に不利な情報があれば管理人に削除要請したり、スキャンダルなどネガティブな情報が検索エンジンに引っかかりにくくさせるための「逆SEO」までおこなった。

「T2」はその後も選挙や対立する政治課題が持ち上がったときに特別な指示を出し、SNS監視や対策を電通にやらせていたといわれており、本サイトの取材では、「2018年の沖縄県知事選挙でも、電通が請け負って子会社の電通デジタルなどがSNS対策をやっていた。あのときは、玉城デニー知事をめぐってさまざまなデマ情報が拡散したが、これらのなかにも電通が仕掛けたものがいくつもある」(自民党関係者)という情報を得ている。

野党攻撃のデマサイトやトンデモフェイク冊子にも自民党の影、電通とタッグでSNS対策も

 さらに自民党関係者がネトウヨ向けサイトを運営していた疑惑もある。有名なのが、「政治知新」なるネトウヨ向けサイト。共産党の吉良よし子参院議員の不倫デマや沖縄県知事のさなかに玉城知事のたい麻吸引というデマを流したのをはじめ、フェイクやデマを交えてしょっちゅう野党や政権批判者を攻撃してきたことで知られる。

 2019年、このサイト「政治知新」のドメイン情報から、登録されている運営者が菅義偉官房長官(当時)の息のかかった自民党神奈川県議の弟であることが発覚。さらに、その運営者とされる本人はなんと、2019年4月に開催された安倍首相主催の「桜を見る会」に招待されていたことを、自らFacebookで報告していた。

 また、2019年7月の参院選前には、正体不明の発行元による“野党&メディア攻撃”まとめ本を、自民党本部が所属国会議員にバラまいていたことが判明。『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』なるタイトルの冊子は150ページもあり、たとえば「トンデモ野党のご乱心」なる第一章では、「立憲民主・枝野代表の無責任を嗤う」と題して〈辺野古移設への反対活動には過激派も入り込んでいます。枝野氏は、革マル派活動家が浸透しているとされるJR総連などから献金を受けており、革マル派に近いといわれています〉などとネトウヨ界隈で定番となっている“枝野幸男=革マル”のデマ攻撃が掲載されるなど、典型的な“野党攻撃”があふれていた。

 冊子の奥付には「terrace PRESS」なる聞きなじみのないウェブサイトの名称が記されており、そのサイトからピックアップされた記事を〈見出しを含め、加筆、修正したものを掲載〉しているとのことだった。しかし、この「terracePRESS」は検索エンジンにかけても、まったくヒットせず、収入源となるはずのウェブ広告の類も一切なかった。そうしたことから、同サイトの本を所属議員に配布した自民党の関係者がこのサイトの運営に関与し、身内だけで密かに“野党叩きの作戦指南サイト”として利用している可能性が指摘された。

 このように挙げだすとキリがないほどだが、自民党ではこうしたネットやSNSを使った謀略が日常化してきた。だからこそ、今回の小泉陣営によるやらせコメント問題が判明しても、コメント例で腐された高市氏を筆頭に他の候補者たちも積極的な批判や追及を避けているのだ。

 フェイクやデマ、誹謗中傷、罵詈雑言を駆使して野党や批判者らを貶め、自分たちに有利にはたらくように世論誘導する政党、それが自民党だ。新総裁が小泉氏になろうと高市氏になろうと、自民党の不正・腐敗・堕落を正すことなど不可能であり、期待することが馬鹿げているとしか言いようがないだろう。

最終更新:2025.10.03 01:36

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