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『ニュース女子』沖縄基地反対運動へのデマでDHCテレビに敗訴判決!訴えた辛淑玉が改めて語る「犬笛によるヘイト」と判決
敗訴したDHCテレビ『ニュース女子』
総裁選出馬を表明した高市早苗氏がネトウヨ番組『虎ノ門ニュース』に出演したことが話題になったが、その数日前、この『虎ノ門ニュース』を制作しているDHCテレビジョンが東京地裁で敗訴判決を受けた。
同じくDHCテレビジョン(放送当時の社名はDHCシアター)制作の番組『ニュース女子』が2017年に行った沖縄ヘイトデマ放送に対して、市民団体「のりこえねっと」の辛淑玉・共同代表が名誉毀損で訴えていたのだが、その判決で東京地裁が、「(辛代表の)社会的評価が著しく低下し、重大な精神的損害を受けた」と名誉毀損を認め、DHCテレビジョンに対して、損害賠償など550万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じたのだ。
当然だろう。裁判になっていたのは、同番組が沖縄・高江のヘリパッド建設反対運動を取り上げた2017年1月2日放送回と、その反響を取り上げた翌週の1月9日放送回だが、その内容はまさにデマだらけのひどいしろものだった。
たとえば2日の放送回で、「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていた」という証言を紹介、高江ではヘリパッド建設反対派によって救急車が妨害されていると伝えた。
また、米軍基地に反対して平和的に運動している人たちを「テロリスト」「犯罪者」と揶揄し、反対運動の参加者に「のりこえねっと」が日当を支払っているかのような報道を展開。
さらに反対運動の「黒幕」として「のりこえねっと」共同代表で在日コリアン3世の辛淑玉氏を名指し、「在日韓国・朝鮮人の差別に関して戦ってきた中ではカリスマ。お金がガンガンガンガン集まってくる」「暴力や犯罪行為も厭わない過激な反対運動を煽っている」などと、差別を扇動するような中傷を繰り広げた。
もちろん、これらの大半が事実でないことはすでに判明しており、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会も、1月2日放送回について、〈重大な放送倫理違反があった〉との意見書を発表していた。
たとえば、前述した反対派が救急車を妨害していたという証言についても、BPOが調査したところ、2016年7月から12月までの間に、高江地区ヘリパッド建設現場付近からの通報で、救急車の通行を妨害された事実はひとつもなかった。
だが、その後も、DHCテレビジョンはなんら反省をみせず、訂正も謝罪もしなかった。
すると、翌2018年、同番組内で「黒幕」などと名指しでデマ攻撃された辛淑玉氏が『ニュース女子』の製作会社・DHCテレビジョンと同番組MCの長谷川幸洋氏(当時・東京新聞論説副主幹)を名誉毀損で訴えたのである。
辛氏は、この『ニュース女子』の報道をきっかけにネトウヨらから一斉に「テロリストのリーダー」などといった誹謗中傷、嫌がらせ攻撃を受けていた。精神科へ通院するなど大きなダメージを負い、2017年から2年間海外生活を余儀なくされたという。
しかも、そうした個人的な被害だけでなく、悪質な沖縄ヘイト、デマを使った卑劣な基地反対運動潰しの問題を公の場で改めて追及したいという思いも強かったはずだ。
DHCテレビには損害賠償550万円の判決も、MCの長谷川幸洋は不問に
だが、裁判になっても、DHCテレビジョン側の姿勢は全く変わらなかった。自分たちの非を認めず、報道について「公益目的がある」「事実の摘示にあたらない」「真実性、真実相当性がある」などと主張。長谷川氏にいたっては、逆に、辛淑玉氏が訴訟提起したことと、当時の所属先である中日新聞に抗議を行ったことが名誉毀損にあたるとして反訴に及んだ。
それから、3年半、ようやく判決が出たのだが、結果は冒頭で指摘したように、DHCテレビジョンの全面敗訴となった。
損害賠償などの支払い命令額が550万円という異例の高さをみても、東京地裁が『ニュース女子』の報道を悪質なデマだと認定したことがうかがえるが、判決文でもことごとく、DHC テレビジョンの言い分を否定している。
たとえば、DHCテレビジョン側は「事実の摘示ではない」、つまりデマを事実であるかのようにいっていたわけではなく、論評や分析に過ぎないと主張していたが、東京地裁は以下のように全面否定した。
〈原告が、暴力や犯罪行為も厭わない者たちによる反対運動に関し、同反対運動において暴力や犯罪行為がされることを認識・認容した上で、経済的支援を含め、これを煽っているという事実を摘示するものであると認められる〉と指摘。
「真実性、真実相当性」についても同様で、〈反対運動において暴力や犯罪行為が行われることを認識・認容した上で、経済的支援を含め、これを煽っているとの事実のうちの重要な部分の真実性が証明されているとは到底いえない〉などと、ほとんどの部分で、真実とはいえないという判断を下した。
ただ、判決は不十分に思える点もあった。それは、辛淑玉氏が訴えていたもうひとりの被告・番組MCの長谷川幸洋氏をめぐる判決だ。辛氏の訴訟提起などを長谷川氏が名誉毀損だとした反訴していた一件はさすがに却下されたが、一方で、辛淑玉氏が長谷川氏に対して行っていた損害賠償請求も認められなかった。
長谷川氏は裁判で、問題のデマ報道について、司会をしただけで、番組の企画、制作や編集には関与していない、自分は辛淑玉氏について発言はしておらず、スタジオ収録部分のVTRのテロップなどもあとから入ったものだから、辛淑玉氏の名誉が毀損されていることを知らなかったなどという主張をしていた。
実際は、長谷川氏もスタジオで、コメンテーターが辛淑玉氏の「黒幕」説などを口にしたのをはっきり聞いているし、翌週の1月9日放送回でも、辛氏の名前こそ出さなかったものの、辛氏が代表をつとめる「のりこえねっと」にあたかも怪しい台所事情があるかのように示唆していた。
これで「辛氏が名誉毀損されたことを知らなかった」ということがありうるのか疑問だが、しかし、裁判所は〈各出演者がどのような発言をするかを具体的に把握していたわけでもない〉と長谷川氏には、不法行為の責任もDHCテレビジョンの名誉毀損行為の幇助者としての共同責任も問えないとしたのだ。
敗訴判決もDHCテレビは「まあまあ勝訴」などと開き直りつつ、即、控訴
さらにもうひとつ、この裁判で暗澹とさせられたのは、判決後のDHCテレビジョンの態度だ。
同社の山田晃社長は地裁前で「まあまあ勝訴」などというふざけた紙を掲げ、『虎ノ門ニュース』に出演し、判決に対し「不当判決」と主張して、「控訴」を表明したのだ。
しかし、一方の辛氏もさらなる責任の追及のために、すでに控訴を表明している。今回の判決、そしてDHCテレビジョンの姿勢についてどう考えているのか。改めて辛淑玉氏に聞いてみた。
まず、辛氏は裁判を起こした理由について、こう振り返る。
「会見でも話しましたが、今回の『ニュース女子』の報道は、私への差別的な攻撃を扇動する“犬笛”になり、この4年8か月は、本当に、苦しい時間を過ごしてきました。
彼らは、自らの手をよごさないで、私を存分に叩くことができたのです。
あの番組で多くの沖縄の人たちや反対運動に携わってきた人たちが傷つき、私も名指しで攻撃されました。皆のことを考えると、私がこのまま黙っていてはいけないと思い、私に対する攻撃を私は、傷ついた皆を代表して原告として闘う使命を課されたものと考え、私が裁判を起こして立ち上がることにしました。
本当に問われなければならないのは、沖縄差別なのです。
だからこそ、DHCテレビジョンが何をしたのかを、後世の記録として、裁判という形で残したかった」
辛淑玉が語る、MCの長谷川幸洋をなぜ訴えたのか、その理由
「DHCテレビジョンが何をしたのかを、後世の記録として、裁判という形で残したかった」と語っていた辛氏。そういう意味では、DHCテレビジョンのデマを認めた今回の判決は、その思いがある程度実現したものといえるだろう。
ただし、辛氏は判決で、長谷川に対する請求が認められなかったことについては、こうコメントしている。
「DHCテレビジョンは問題があると断罪され、司会進行として扇動し続けた長谷川幸洋氏(当時、東京新聞論説副主幹)は不問とされました。
記者会見で、木村元彦さんから「勝てる闘いと記録に残す闘いの違いは?」と問われました。そのときはきちんと応えられませんでしたが、どうして長谷川氏を訴えたのか、の問いだったように思います。
すでに、BPOでは結果も出ていて、DHCテレビジョンとの闘いは社会的には決着がついていたと言えます。裁判での勝ちだけを考えたら、DHCテレビジョンだけ訴えればよかった話だと思います。
しかし、それでは長谷川氏の問題性、日本社会で一度も問われたことのないこの問題が、そのまま放置されてしまいます。
沖縄に対する差別偏見を剥き出しにした番組を作ることも悪いが、それに信頼性をつけて広める人間もそれに負けず劣らず問題です。
長谷川氏は、1月2日の番組の中で見事に番組の指揮者の役をやり、差別と偏見に満ちた番組をまとめ上げたのです。そして翌週の番組でも、前週の番組を批判する声に対して冷笑するような態度を取り、私たちの傷を深めました。
しかも長谷川氏は、「東京新聞・中日新聞論説副主幹」という肩書でこの番組の司会をしています。
これは、長谷川氏の発する情報には信頼性があるのだということをあたかも糊塗するようなものであり、こういう肩書で差別と偏見がまき散らされたことに、私たちは耐えがたい思いを抱きました。
長谷川氏の行いは、人が生きる社会として、必ず、その問題性を問われなければならない、許されないものだと私は思います。
すべての虐殺は、デマの発信と、それに信憑性を付けて拡散する人間によって、始まるからです」
また、DHCテレビジョンが控訴を表明したことについては、こう語った。
「この裁判は、カルトとの闘いだと私は思っています。常識では、考えてはいけない。彼らは、一審は勝ったと吹聴しているのをみれば、何を問われているのかさえわからないのです。DV男の逆切れ、といったほうがいいでしょうか。おそらく、最高裁で判決が出ても、彼らの思考と行動は変わらないでしょう」
たしかに、裁判を起こしても、最高裁で敗訴判決を受けても、DHCテレビジョンに象徴されるようなヘイト勢力はなんの反省しないだろう。しかし、少なくとも、社会に対して、彼らの悪質なデマ拡散の手法を知らしめることはできる。そういう意味でも、辛淑玉氏の闘いに今後も注目したい。
(編集部)
最終更新:2021.09.12 05:41
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