『報ステ』政権忖度で首を切られたスタッフに支援の動き! 番組関係者から「萎縮がテレ朝の目的か」「報道が機能しなくなる」の声

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『報道ステーション』公式Facebookより


 テレビ朝日の『報道ステーション』で、これまで番組のジャーナリズムを支えてきた約10名の社外スタッフが昨年末、突如、今年3月いっぱいでの契約打ち切りを宣告された問題。きょう13日、永田町の衆議院第一議員会館内で「『報ステ』を問う」と題した緊急院内集会が開かれた。主催は、新聞労連や民放労連などのメディア関連労組がつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」。集会では、契約打ち切りを告げられた複数の当事者、テレ朝社員たちのコメントが紹介された。

「今日何を伝えるべきか、世の中に届けなければならないことは何か、時には闘いながら、毎日の放送を出してきました。しかし今回の事態は、そうした現場スタッフの姿勢を否定するものだと受け止めざるを得ません。ひいては、視聴者の方の知る権利を奪い、報道機関としての役割を果たすことができなくなるのではないかという危惧を覚えます」(当事者の声)

「少しでも政治や社会や日本がよくなればとの思いで、番組のため10年以上尽くしてきたのにまるで使い捨てされたようで残念です」(当事者の声)

「テレ朝側は今回の措置は雇い止めではないと主張しているが局内で働く多くの社外スタッフは誰もがその言葉を信じてない状況です」(当事者の声)

「10人以上もそれもベテランでそれぞれの課題に精通しているディレクターやデスクで、それを一度に派遣切りするのは、番組を崩壊させるのと同じです。長く番組を担当しているのは、それだけの能力を備えているからです。番組は続いても内容が劣化してしまいます」(テレ朝社員)

 あらためて問題を振り返ろう。本サイトでもお伝えしてきたように、『報ステ』では前MC・古舘伊知郎の降板以降、徐々に政権批判色が薄れているが、とりわけ、2018年7月に早河洋会長の“子飼い”と言われる桐永洋氏がチーフプロデューサーに就くと、政権批判や原発報道などを極端に減らし、スポーツなどをメインに据えた“ワイドショー路線”に舵を切る。小川彩佳アナウンサーは番組から追放され、早河会長お気に入りの徳永有美アナがMCに抜擢。金曜日にいたっては安倍応援団の野村修也氏をコメンテーターに起用するなど、『報ステ』は骨抜きにされてしまった。

 ところが昨年8月、その桐永CPが女性アナウンサーやスタッフへセクハラを繰り返していたことが表沙汰になる。結果的に桐永氏はCP解任となるが、このときテレ朝が下した処分自体は、出勤を3日間停止する「謹慎」という大甘なものだった。

 このセクハラ問題の後、後任CPには鈴木大介氏が就くのだが、昨年12月、今度は番組内の「桜を見る会」問題を伝えるニュースのなかで、自民党の世耕弘成・参院幹事長がコメントを「印象操作」されたなどとし、Twitter上で『報ステ』を恫喝するという事件が発生。当時、本サイトでも検証したように(https://lite-ra.com/2019/12/post-5140.html)、これは明らかなイチャモンとしか言いようがない報道圧力だったが、テレ朝上層部は完全に屈服。報道局長が自民党の幹事長質を訪れて謝罪、番組放送内でも世耕氏に「お詫び」をする事態になる。

 そうしたなかで昨年12月、前述のベテラン社外スタッフたちの契約打ち切りが、テレ朝側から告知されたのだ。

 院内集会での説明によれば、12月20日の『報ステ』本番終了後の反省会で、佐々木毅・報道番組センター長が「体制刷新」を説明。今年3月いっぱいでの鈴木CPの交代と。正社員スタッフ6名を1月1日付で異動することを発表した。CPが就任わずか7カ月で替わるというのは事実上の“更迭”で、1月の社員異動も異例のことだが、さらに番組側は前述のとおり、社外のベテランスタッフ約10人との契約終了を宣告したのである。

“報ステジャーナリズム”を支えたスタッフ切り! 番組に広がる異論・告発封じ、萎縮の空気

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2月13日「『報ステ』を問う」緊急院内集会の模様


 言っておくが、この社外スタッフたちは、これまで『報ステ』の気骨ある原発報道や沖縄米軍基地報道などを支えてきたベテランで、番組のジャーナリズムの屋台骨と言える存在だ。しかも、昨年12月の「世耕圧力事件」で問題視されたVTRに、この社外スタッフたちは一切関与していなかった。それが突然、まるで「世耕圧力事件」でのCP更迭に巻き込むかのように「3月いっぱいでクビ」と宣告されたのだから、あきらかにおかしいとしか言いようがないだろう。

 院内集会での説明によれば、社外スタッフの派遣切りを受けて、テレ朝に労組が会社側と交渉。テレ朝側は「誠意を持って丁寧に説明する」「次の職場を早めに確保する」「派遣料は同額を保証する」などと労組側に約束したというが、いまだに社外スタッフの多くは次の職場が決まっていないという。

 番組リニューアルを名目に、政権批判も厭わない番組作りを支えたスタッフを切る。これは、早河会長らテレ朝上層部が政権を忖度し、『報ステ』の政権批判色を完全に潰そうということではないのか。実際、この『報ステ』の人事問題を取り上げた「週刊文春」(文藝春秋)1月2日/9日号は、早河会長が周囲に「古舘(伊知郎)時代からの問題児がたくさんいるからなあ」と漏らしていたと伝えている。

 さらに、桐永前CPのセクハラ問題の際、内部から告発の動きが出ているのをテレ朝上層部と電通が問題視したことも、社外スタッフの派遣切りと無関係ではないだろう。政権批判もいとわない気骨ある社外スタッフを内部告発の「犯人」と決めつけ、タイミングをはかって番組から追放しようとしたとの見方が流れているのだ。一般論として、内部告発を理由に解雇するのは公益通報者保護法に違反する行為だ。しかも、仮にスタッフが番組内の問題を他メディアにリークしていたとしても、それは、通常のジャーナリズムにおける“自浄作用”というものだろう。むしろ、上層部がスタッフをガチガチに管理し、外部へのリークができないような報道機関こそ公益性を捨てていると非難されるべきだ。

昨年の同時期に比べ国会報道は半減! “報ステジャーナリズム”崩壊の危機

 いずれにしても、社外スタッフ切りの宣告は、すでに番組へ影響を与えている。院内集会で紹介された番組関係者のコメントは、この件によって萎縮している心境を赤裸々に吐露するものだった。

「今回のことについて、番組幹部からいまだ説明がなされていないため、スタッフの間には不信感と同時に不安も蔓延している。今後は『番組の方向性が間違っているのでは』と思ったとしても、発言は控えてしまうかもしれない。これがテレ朝の最大の目的だったのではないかとも思ってしまう。報道の現場として機能しなくなるのでは」(番組関係者)

 実際、本サイトが先日の記事でお伝えしたように、社外スタッフの派遣切り宣告後、番組では「桜を見る会」関連や黒川弘務・東京高検検事長の異例の定年延長問題など、政権批判に繋がる報道が目に見えて減少している(参考https://lite-ra.com/2020/02/post-5251.html)。院内集会のなかでも、年明け後の通常国会の報道時間が昨年の同時期に比べて半減しているというデータが示されていた。明らかに『報ステ』のジャーナリズムは潰されようとしているのだ。

 院内集会には、元TBSで『報道特集』キャスターの金平茂紀氏がビデオメッセージを寄せ、こう語っていた。

「去年までだったら『ひどいけど、他の局で起きていることだから黙っていようか』と思っていたかもしれません。ただ、気持ちが変わりました。『報道ステーション』の職場で起きていることは、日本の放送局、テレビ局のどこでも起こりうることだなと思っています。それはなぜか。番組づくりや報道に関わっている人たちのなかで、それなりの権限を持っている人たちが、恐ろしいほどのスピードで、腐敗というか劣化というか、堕落が起きていると思っているからです」
「メディアをめぐる状況はいま、ある意味で暗黒の時代を迎えていると言っていいかもしれませんけれども、暗黒の時代だからといって沈黙しているというのが一番、僕はいけないことだと思います。だから、このビデオメッセージを送ることにしました」

 いま、『報ステ』で起きている社外スタッフ切りの問題は、決して、ひとつの報道番組だけの問題ではない。こんな暴挙が見逃されれば、視聴者の知る権利はどんどん奪われ、安倍政権を礼賛する官製報道か、芸能人の不倫や一般人の炎上・ご近所トラブルのような卑近な話題しかテレビで流れなくなってしまうだろう。このままではテレビ朝日は完全に死んでしまう。次はTBSなど他の民放だ。座視している場合ではない。

最終更新:2020.02.13 10:14

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