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闇営業対策で吉本興業の“芸人支配”が逆に酷く…共同確認書にSNSの項目、ウーマン村本も政権批判できなくなる?
個別取材に応じた大崎会長だが…(吉本興業HPより)
いまだ批判がなりやまない吉本興業所属芸人らの振り込め詐欺グループ闇営業問題。御用メディアだらけの新聞・テレビはともかく、ネットではむしろ、吉本興業という企業の責任を問う声が日に日に大きくなっている。
そんななか、今月12日頃から、吉本興業トップである大崎洋会長が複数のメディアで“単独個別取材”に応じ始めた。インタビューが掲載されたのは、共同通信、時事通信、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、日経新聞、BUSINESS INSIDER JAPANなどのメディア。
しかし、そもそも共同記者会見をやらず、“単独個別取材”にしたこと自体、週刊誌などの厳しい追及から逃げ、弱腰の新聞やビジネス系メディアのインタビューでお茶を濁そうとしているとしているとしか思えない。
しかも、その発言の内容はひどいものだった。大崎会長は自分たち幹部の責任を否定した上で、今回の問題を芸人個人の責任に押し付けたのだ。
例えば朝日新聞DIGITAL(14日)では、今回の反社会勢力の闇営業について「ひとこと、会社に(事前に)言ってもらえたら、こんなことはなかったわけです」と問題を芸人の闇営業と報告義務にすりかえ。自らの責任について「(会社を通さない営業で)業務上のことではなく、会社外のこと。考えていない」と“会社とは関係ない“という理由で否定した。
当初、「調査の結果、金銭授受はない」と嘘の発表をし、宮迫らを厳重注意処分で済ませたことについても、「(宮迫)本人が『うん』と言わなかった。自社のタレントが嘘をついていたとは言わなかっただけの話だが、事実としてはそういうことです」「ヒアリングが1回で済んで、事実が全てわかればすぐに出したが、精一杯やった結果です」(BUSINESS INSIDER)と、芸人が嘘をついたからだと責任を押し付けた。
さらに、驚いたのは、こんな事態になっても、芸人たちと契約書をかわすつもりがないと明言したことだ。今回の問題をきっかけに、吉本興業が芸人と契約書をかわしていないことが問題化しているが、大崎会長は“家族”などという言葉を持ち出してこう言い切った。
「結論から言うと変えるつもりはない。吉本に契約書がないと言っているのは、つまり専属実演家契約のこと。それとは別に口頭で結ぶ諾成契約というものがあり、それは民法上も問題がなく成立する。紙に書くというよりも口頭でということです。それを知ってか知らずか、タレントたちは吉本契約書がないから、と笑いをとっている」「吉本にとって芸人は、一緒に人生を共にする家族のような存在。大阪流に言うと『そんな水臭い紙の契約書なんて』ということもある」(朝日新聞DIGITAL)
そして、契約書は交わさない一方で、今回の問題の対策として、社員や所属タレントに対し、反社会的勢力との関係断絶などを誓約する「共同確認書」に署名させることを明かした。
近藤春菜が吉本・大崎会長の契約書をめぐる嘘を暴露!
しかし、こうした大崎会長の一方的な主張に対し、当の吉本興業所属芸人から、勇気ある批判が飛び出した。
15日、ハリセンボンの近藤春菜が、MCをつとめる『スッキリ』(日本テレビ)で、これまでの吉本興業との“口頭”契約についてこう暴露したのだ。
「会長のインタビューは読みましたけども、わたしも吉本興業に所属している、お世話になっている芸人として、会長は口頭でも契約は成立する、民法上成立するとおっしゃってますけど、でも口頭だったとしても、芸人も芸人で納得してお互い同意していないと契約って結ばれないと思うんですよね。それに関して吉本興業はどういう考えで、あなたとこういう風に契約しますということを、口頭でも聞いた覚えはないですし。会社にいくら入ってあなたは取り分はこうですとか、他の問題に関しても、何もないですよね」
「会長のおっしゃっていることと芸人みんなの間での相違がすごくて、これで納得している芸人っていないと思います」
大崎会長がいう“口頭”契約なんて実際は存在せず、そのことに対し芸人たちも納得していないというのだ。これが事実なら、吉本興業はこの期に及んでも、嘘とごまかしでその場しのぎをしようとしているということではないか。
しかも、今回の吉本興業の対応でもうひとつ問題なのは、前述した「共同確認書」の内容だ。その詳細については明らかにされていないが、大崎会長によれば、これは「反社会的勢力との関係断絶などを誓約」させるもので、また「直接依頼された仕事をすべて会社に報告させる」ものだという。
契約書をかわさず“共同確認書”に署名させるというのは、いつでも一方的にトカゲの尻尾切りができるようにするものとしか思えないが、この共同確認書には、もっと大きな問題がある。
ブラマヨ小杉が明かした!共同確認書に「SNSの発言に気をつける」の項目
15日、『バイキング』(フジテレビ)では吉本興業の闇営業問題と、再発防止として“共同確認書”のことが取り上げられたのだが、そこに出演するブラックマヨネーズの小杉竜一はすでに“共同確認書”にサインしたことを明かした上で、その内容についてこう発言している。
「まあ、こういう(反社会勢力と)関係、持たへんのと、SNSとかの発言も気をつけますという」
小杉が見た“共同確認書”には「コンプライアンス研修の受講や守秘義務、知的財産権の尊重」という項目があり、そこでSNSの話も出たという。これを受け、司会の坂上忍は「(今回の問題で)はたから見ていても個人でツイートしちゃってっていうのは、これどうなのかっていうのは同業者として僕もちょっと感じてたんですけど。そこらへんの管理を徹底するってことなんですかね」とコメントしていたが、しかし狙いは本当にそれだけなのか。
というのも、以前、ウーマンラッシュアワーの村本大輔が吉本から受けていた圧力のことを思い出したからだ。村本が政権批判を含めて様々な社会的、政治的発言をしてきたことは周知の通りだが、『AbemaPrime』(AbemaTV)出演最終回に、村本本人がこんなエピソードを明かしていた。
「番組終わった後、楽屋に毎回、吉本の社員とか偉い人が待ってて、そのまま取り調べみたいなの受けるでしょ? そうなんですよ。僕、最近、吉本の社員のこと、『公安』って呼んでるんですよ。治安維持法でね、ちょっと僕がつぶやいたらしょっぴかれて」
「この前なんか『ガキの使い』で『アウト!』って言う藤原(寛)さん、(よしもとクリエイティブ・エージェンシーの)社長ですよ。社長が楽屋に座ってるんですよ。アベプラが終わったら、『ちょっと来てください』って言われて、『こないだのTwitterの件やけども、これはどうにかならんか、百田(尚樹)さんや高須(克弥)さんのこと』ということで、楽屋に30〜40分も閉じ込められて、ずっと藤原さんに言われたんですよ」
ようするに、所属の「よしもとクリエイティブ・エージェンシー」の幹部からtwitterでの安倍政権批判や安倍応援団とのバトルを「なんとかしろ」と迫られていたのだ。
そして、今回、吉本がもちだしてきた共同契約書にSNS制限の項目があった−−−−。これが本当なら、村本など、芸人の政治的発言、安倍政権批判を封じようとするものではないのか。
SNS制限は安倍政権に急接近する吉本が村本の政権批判を封じるため?
いま、吉本は安倍政権やその周辺の権力と急接近している。2017年には、法務省のPRを吉本が会社をあげて請け負い、吉本芸人を大量投入。ほかにもダウンタウンが大阪万博誘致のアンバサダーになり、それ以外にも、さまざまな公的プロジェクトに吉本芸人が担ぎ出されるようになった。
また大阪ダブル選のさなかの4月20日には、安倍首相がなんばグランド花月で吉本新喜劇に出演した。さらに、闇営業問題で吉本が入江を解雇した6月6日には、西川きよしら吉本興業所属芸人らが首相公邸を表敬訪問し、安倍首相の前でネタを披露したことがニュース番組で大きく取り上げられた。
一方、吉本が政権から恩恵を受けていたことも判明している。NTTと共同で教育コンテンツなどを国内外に発信するプラットフォーム事業参入を発表しているが、ここに官民ファンド「クールジャパン機構」が最大100億円出資するというのだ。
また、今年6月には、吉本の大崎会長が沖縄県の普天間基地や那覇軍港など返還が見込まれる米軍施設・区域の跡地利用に関する政府の有識者懇談会メンバーに選ばれた。吉本興業は10年以上にわたって沖縄国際映画祭を運営しているが、この背後には、沖縄や大阪のカジノ利権参入と関係があるのではないか、ともいわれている。
まさに、吉本は安倍政権とベタベタなのだ。しかも、大崎会長自身はこうした姿勢を一向に改めるつもりはないらしく、今回のインタビューで「政権との距離の近さ」について問われた際も全く悪びれることなくこう語っている。
「政府の省庁や国連など公的な団体と一緒に仕事をすると、芸人たちの意識が変わるし、気付きも多い。お笑いのセンスが磨かれ、とてもプラスになる」(日経新聞)
「(今年4月の安倍晋三首相、吉本新喜劇に出演について)G20開催に伴う交通規制などへの協力を呼びかけたいという首相の気持ちがあり、『よくぞ来て頂きました』とお迎えした。テレビ放送も出来て、視聴率も安倍さんが出て上がった。すごくよかった」(朝日新聞DIGITAL)
つまり、こうした政権との良好な関係を今後も続けていくために、吉本は今回の闇営業問題にかこつけて、安倍政権を徹底批判していうる村本やほっしゃん。(星田英利)らのSNSを封じ込めようとしているのではないか。そんな疑念が頭をもたげてくるのだ。
いずれにせよ、今回の問題で、芸人を奴隷化するような吉本のブラックなやり口は見直されるどころか、逆に拍車がかかるだろう。そして、ほとんどの新聞・テレビは吉本と利害関係があるため、見て見ぬ振りをするはずだ。
だとすれば、あとは当の芸人たちが声をあげるしかない。大崎会長を毅然と批判した近藤春菜に続く勇気ある芸人が一人でも多く現れることを期待したい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2019.07.17 10:39
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