経産官僚の覚醒剤事件でワイドショーがピエール瀧報道と大違い! 安倍政権下で経産省が“上級国民”に

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省内で経産省官僚の覚醒剤事件をワイドショーが報じないのはなぜか? 安倍政権下で経産省が上級国民にの画像1
無責任丸出しの世耕大臣会見もテレビは責任追及なし(経産省HPより)


 こんな姿勢だから“上級国民”なるスラングが広がってしまうのだろう。ピエール瀧のコカイン事件では、洪水のようなバッシング報道を繰り広げたテレビが、例の経産省キャリア官僚の覚醒剤所持事件のことは、なぜかあまり取り上げようとしないのだ。

 言っておくが、事件が話題性に乏しいわけではない。それどころか、ネタが満載だ。容疑者は経済産業省の東大出身、若手キャリア官僚で、自動車課長課長補佐というバリバリのエリート。入手方法もロサンゼルスから国際スピード郵便物でファッション雑誌に紛れ込ませて受け取り、仮想通貨で決済するなど、目新しい。さらに、警視庁が5日に経産省の容疑者の机などを家宅捜索したところ、注射器が発見された。これは、容疑者が経産省の役所のなかで覚醒剤を使用していたということであり、周囲の経産省官僚が容疑者の覚醒剤使用に気がついていた可能性も十分ある。いや、それどころか、経産省内に覚醒剤汚染が広がっているのではないかという疑いがもたれてもおかしくない状況だ。

 まあ、そこまでは踏み込めなくても、少なくともこれだけ材料があれば、「薬にはまったエリート官僚」「経産省内で覚醒剤!」「海外から取り寄せる新たな手口」「仮想通貨が取引を活発化」などと打って、大々的に報道できるはずだ。

 ところが、テレビ各局はストレートニュースや新聞記事紹介で逮捕や事情聴取の内容を簡単に報じただけで、ワイドショーでほとんど事件を扱わなかった。冒頭で指摘したように、ピエール瀧のコカイン事件やASKAの覚醒剤事件などでは、『バイキング』『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ)も、『情報LIVEミヤネ屋』『スッキリ』(日本テレビ系)も、毎日のように大特集を組み、まるで極悪犯罪者のようにピエール瀧やASKAを叩いていた。しかし、今回、この事件をある程度大きく扱ったのは、9日の『とくダネ』(フジテレビ)くらいだった。

 こう言うと、ワイドショーの出演者やスタッフたちは「今回の容疑者は芸能人ではないから」と言い訳するかもしれないが、そんな詭弁は通用しない。ワイドショーを見ていると、無名の地方議員の不祥事なども頻繁に報じられているし、薬物がらみなら、大学生が起こした事件でさえニュースにしている。経産省のエリート官僚が省内で覚醒剤を使用していたという疑惑が出てきたのに、そこを追及しないというのは、あまりに不自然だろう。

 さらにおかしいのは、この事件について、テレビが経産省の対応や責任について触れていないことだ。

 世耕弘成経産大臣は10日の閣議後会見で事件について問われたが、「誠に遺憾。引き続き捜査に最大限協力し、全容が解明されたら厳正に対処したい」と述べただけ。容疑者が「仕事のストレスから、覚醒剤に手を出した」という供述をしていることについては、「経産省として働き方改革を進め、職員の健康管理に努めている」、省内で覚醒剤を使用していた疑いについても、「捜査内容に関連するのでコメントは控えたい」としか答えなかった。

 なんとも他人事で無責任丸出しの対応だが、しかし、テレビはワイドショーでもニュース番組でも経産省の責任を厳しく追及するような報道は一切なし。それどころか、この会見内容そのものを報じるメディアすらほとんどなかった。

 ピエール瀧のときにメンバーというだけで石野卓球を犯罪者扱いしたのとは、大違いなのである。

マスコミには「経産省を怒らせたらスポンサーに手を回される」という恐怖が

 いったい今回の大甘な報道姿勢の原因はなんなのか。一つはやはり、逮捕された容疑者がキャリア官僚、しかも経産省の職員だったことだろう。

 経産省といえば、先月、前身の通産省OBで工業技術院のトップを務めた87歳の元幹部官僚の運転する車が池袋で暴走、31歳の母親と3歳の娘をはねて死亡させる重大事故を起こした。しかし、このOBは逮捕されず、一部マスコミでは「さん」付けで報道されたことから、ネットでは「上級国民は特別扱いか」という批判が殺到した。

 もっとも高齢者の場合は、人身事故を起こしても逮捕されないケースはあり、その場合、マスコミも「〜容疑者」とは形容しないため、池袋の暴走事故の報道が本当に「経産省OB」ゆえの「特別扱い」だったかどうかははっきりしない。

 しかし、今回のケースは明らかに不自然であり、理由は経産省だからとしか考えられない。

 経産省は総務省とは違い、テレビ局の直接的な許認可権を握っているわけではないが、電力会社や自動車業界はじめ、テレビ局の大スポンサーの監督官庁でもある。

 以前、奥田碩トヨタ自動車相談役(当時)が自ら座長を務める厚労行政改革の政府懇談会で、マスコミの厚労省批判に対して「何か報復でもしてやろうか」「スポンサーにならないとかね」と、自社の広告引き上げを示唆して恫喝したことがあった。このとき、テレビや新聞が奥田氏を批判するどころか、震え上がって沈黙してしまったのは有名な話だが、マスコミ幹部の間には、経産省についても同様の恐怖がある。

 経産省を怒らせたら、スポンサー企業に手を回され、広告引き上げなどの報復を受けかねない−−−−。現実に起こるかどうかは別して、そんな忖度が経産省批判を及び腰にさせている。

安倍政権への忖度の延長線上で、政権と一体の経産省批判自主規制が

 しかも、経産省は安倍政権下で以前とは比べ物にならないくらい力をもつようになった省庁だ。側近中の側近である今井尚哉首相秘書官の出身官庁で、さまざまな政策で経産省の意向が最優先され、いまや「経産省が安倍政権をコントロールしている」とまでいわれるようになった。

 こうした空気を察知したテレビ局が、官邸や自民党だけでなく、その息がかかった経産省に対しても、得意の忖度を発揮して批判を自主規制するようになった。そういう傾向は確実にあるだろう。

「マスコミにはもともと批判できる省庁と、タブーになっている省庁がある。
報復の武器や情報を持っている省庁には弱いんです。以前は、警察、検察、財務省が三大タブーといわれていたが、安倍政権下ではそこに、経産省が加わった感じです」(民放関係者)

 この経産省キャリア官僚の覚醒剤事件はおそらくこのまま尻すぼみになる可能性が高いだろう。経産省内で覚醒剤を使用した問題や、使用を知っていたり事件に関係していた他の職員がいたのではないかという疑惑についても、テレビがふれることはなく、そのうち疑惑そのものがなかったことになるだろう。

「上級国民」という陰謀論めいたスラングを好んで使うつもりはなかったが、この状況を見ていると、安倍政権の息がかかっているかどうかで国民が「上級」と「下級」に選別され、法律の適用までが差別化される社会が、現実になってしまうのでないか、そんな恐怖が頭をもたけてくるのだ。

最終更新:2019.05.12 09:34

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