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大坂なおみを“日本の誇り”“日本の心”と利用するメディアと政治家の醜悪! 大坂自身は「私は私」と
大坂なおみ公式サイトより
テニスの全米オープンで優勝した大坂なおみ選手に賞賛が集まっている。その圧倒的なプレーはもちろん、セリーナ・ウィリアムズ選手を応援する観客のブーイングに対して行ったスピーチに対して高い評価の声が上がっているのだ。
たしかに、「こんな終わり方になってごめんなさい」と謙虚に語りかけ観客のブーイングを鎮めた大坂選手の対応は素晴らしいものだった。
しかし、違和感を感じるのは日本のメディアやネットの反応だ。大坂選手が対戦相手などに会釈をすることや、スピーチをとりあげ、“日本の心”“日本人ならではの謙虚さ”などと彼女の美点を無理やり日本に結びつける報道や論評が溢れかえっているのだ。
実は大坂選手に対しては、ついこの間まで、ネットで「日本選手っぽくない」「この人を日本選手と呼ぶことに違和感がある」という差別的な攻撃がやたら見られた。
大坂選手は1997年にハイチ系アメリカ人の父と北海道出身の日本人の母の間に生まれた。大阪府で生まれたが3歳のときに渡米。それ以降は現在までアメリカを生活の拠点にしている。日本語もそのため得意ではないのだが、そんなことをあげつらって「日本選手かどうか」を論じること自体、偏狭な差別意識丸出しの愚行としか言いようがない。
しかも、全米オープンで優勝し、素晴らしいスピーチで世界中から評価を集めた途端に、今度は一斉に例の“日本スゴイ”に大坂選手の存在を利用しはじめたのである。
言っておくが、大坂選手のすごさや素晴らしさは、日本人だからではない。むしろ、あの状況でああいうスピーチできた人はいままで日本にほとんどいないし、日本人とかアメリカ人とかハイチとか関係なく、大坂個人のキャラクターによるところが大きいはずだ。
それを“日本の心”“日本人ならではの謙虚さ”などと言い張るのは、我田引水以外の何物でもないし、これまでの差別意識の裏返しでしかないだろう
実際、大坂選手は今朝帰国し横浜市内で記者会見を行ったが、そこでも、“日本スゴイ”に利用したいメディアと、コスモポリタンな感覚をもつ大坂選手とのギャップが露わになった。
日本メディアの記者から日本人としてのアイデンティティについて質問された際に、大坂選手はしばらく質問の意味がわからずとまどったあと、こう答えたのだ。
「アイデンティティがどうとかについてはあまり考えていませんね。私は私であって。日本人としての一面もあるとは言われていましたけれども、でも、テニスの仕方にそれが出ているとは思いませんし、それが日本式だとは思いませんね」
大坂選手は全米オープンの大会中にもアイデンティティに関する質問をされた際、「父がハイチ出身だから、私はニューヨークに住むハイチ人の家庭で育った。おばあちゃんと住んでいて、ママは日本人だから日本文化の中にもいた。米国文化というなら、私は米国在住だからそれもある」(2018年9月10日付ニュースサイト「スポニチアネックス」)とも答えている。
いかに日本のメディアが偏狭でご都合主義的なナショナリズムに囚われているのかがよくわかるが、もっととんでもないのが政治家連中だ。
台風被害と地震で混乱がつづくさなかに〈大坂なおみ選手、全米オープンの優勝、おめでとうございます。四大大会で日本選手初のチャンピオン〉との祝辞を送った安倍首相をはじめ、政治家連中が、やたら「日本の誇り」として、大坂選手をナショナリズム扇動に利用しようと躍起になっているのだ。
蓮舫の二重国籍を攻撃していた足立康史が大坂選手に「二重国籍の特例認めろ」
さらに、唖然としたのが二重国籍を利用しようという動きまでが出てきたことだ。大坂選手は現在20歳。日本の法律上、22歳までに日本国籍かアメリカの国籍かを選ぶ必要がある。これに対し、日本維新の会の足立康史衆議院議員が、大坂選手の優勝を受けてこのようにツイートしたのだ。
〈ノーベル賞、オリンピック等で快挙を成し遂げた日本国民には、二重国籍の特例を認めたらどうかな。
こういうこと言うと、またツイッターのフォロアー激減しそうだけど、日本国民の皆さんはどう考えますか〉
足立議員といえば、立憲民主党の蓮舫参議院議員(当時は民進党)の二重国籍問題をあげつらって“蓮舫代表の言動は中国の回し者”と投稿し、こんな一言まで添えていた。
〈国籍のことを言うのはポリコレに反するので本当は控えたいのですが、ストレスたまると午後の地元活動に影響するので書いてしまいます〉
デマ情報やヘイトスピーチによって個人攻撃をおこない、挙げ句の果てにはヘイトスピーチを「ストレス発散」だと自ら認めていたような人間が、今度は「快挙を成し遂げた日本国民には、二重国籍の特例を認めろ」と言い出したのだ。
9月10日放送『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)のなかで荻上チキ氏は政治家たちの一連の言動をこのようにまとめている。
「日本のツイッターとかニュースとかを見たら、日本の政治家とかが『日本の誇り』みたいなことを言っていたりとか、あとは一部議員とかが『例外的な二重国籍を認めていいんじゃないか』みたいなことを、蓮舫さんのときは叩いていた人が、コロッと掌を返して、『名誉的な人には与えていい』みたいなことを言っていてですね、もう頭がパンクしそうな、そんな状況になっていて」
いずれにしても、普段、排外主義を振りかざす連中こそが、大坂選手のことを「日本の誇り」などと言っているのだ。ようするに連中は「使える人間ならば自分たちの“仲間”に入れてやってもいい」と言っているだけであり、それは前述したように差別意識の裏返し以外の何物でもない。
そして、残念ながら、こんなとんでもない差別的言辞が政治家の口から堂々と語られ、何の問題にもならないというのが、いまの日本の現実なのだ。
(編集部)
最終更新:2018.09.13 11:09
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