リテラの新年特別企画●フェイクニュース大賞(前編)

ニュース女子、辻元清美生コン…リテラが選ぶ2017フェイクニュース大賞、まずは悪辣ぞろいの部門賞発表!

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首相官邸ホームページより


 謹賀新年。年末にはテレビでも「今年の10大ニュース」的な振り返りを散々やっていたと思うが、リテラでは、この年明け、2017年に報じられた「ニュース」のなかから、記憶に残しておきたいデマ、謀略報道、嘘八百を選び、「フェイクニュース」大賞を選定することにした。
 2017年は、森友・加計問題へのカウンターとして官邸、安倍応援団メディアから、謀略によるフェイクニュースが山ほど流されたばかりか、産経新聞やテレビのワイドショーまでが、ネトウヨデマを拡散するという状況が現出したからだ。
 振り返ると、うんざりするか笑うしかないトンデモばかりだが、そのなかにはいまもネットで“真実”として流通しているものも少なくない。
 あらためてその「フェイク」ぶりを検証しつつ、まずは前編で、4つの部門賞を発表していこう。

★厚顔無恥居直り賞
「基地反対派に日当」の沖縄ヘイトデマでBPOに意見されても『ニュース女子』は反省なし

「フェイクニュース」が新語・流行語大賞のトップ10に選ばれた2017年、新年早々に『ニュース女子』(TOKYO MX)が垂れ流した沖縄米軍基地反対運動をめぐるヘイトデマは大きな社会問題となった。
 先日、BPOの検証委員会が公表した意見書では、あらためてその杜撰な番組制作の実態が浮き彫りに。たとえば、番組では地元住民による「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」という証言を紹介し、高江ではヘリパッド建設反対派によって救急車が妨害されていると伝えた。
 しかし、検証委員会が高江地区への救急車の出動を管轄する国頭地区行政事務組合消防本部消防長に聞き取り調査をしたところ、その説明は〈2016年7月から12月までの間に、高江地区ヘリパッド建設現場付近からの通報は、20件あった。20件のいずれについても救急車の通行を妨害された事実はない〉というもの。そして、番組制作会社から放送前に取材を受けたこともなかったという。
 また、番組では「往復の飛行機代相当、5万円を支援します」と書かれているチラシが東京で配られていたこと、さらに普天間基地の周辺で「2万円」と書かれた茶封筒が発見されたことを紹介し、「反対派は日当をもらっている!?」「何らかの組織に雇われているのか」などと報じたが、検証委員会はこの茶封筒の証言者に聞き取り調査を行なった結果、〈本件放送で示した茶封筒 15 のカラーコピーや人権団体のチラシは、基地建設反対派は誰かの出す日当をもらって運動しているという疑惑を裏付けるものとは言いがたい〉と判断。こうしたことから、検証委員会は〈重大な放送倫理違反があった〉と結論づけた。
 このように『ニュース女子』の報道がフェイクであることはBPOからも指摘されたのだが、DHCテレビジョンと制作会社ボーイズは反省の姿勢をみじんも見せない。デタラメな取材、根拠なしの放送にもかかわらず「誹謗中傷には屈しない」などと言い張り、事実、昨年12月までDHCテレビはYouTubeの公式チャンネルから問題の放送回を削除も訂正もせず放置してきた。そして、「マスコミが報道しない沖縄 続編」と題して自己正当化を繰り返し、さらなるヘイトデマを塗り重ねた3月のネット放送回は、今でも公式にそのまま残されている。

★卑劣確信犯賞
ネトウヨデマ「辻元清美関西生コン疑惑」をそのまま拡散した産経新聞、山口敬之、有本香、安倍首相

 昨年、森友学園問題が社会現象の様相を見せるなかで、安倍応援団がカウンターとして繰り出したのが、辻元清美衆院議員の森友デマだった。
 皮切りはフジテレビの『Mr.サンデー』『とくダネ!』だった。官邸御用ジャーナリストの山口敬之氏がネット右翼を中心に拡散されていた話をそのまま紹介して「(辻元氏には)建設現場に知り合いの作業員をスパイとして入れてマスコミ対応をさせたという疑惑がある」などとコメントしたのだ。
 続いて、産経新聞が3月28日付朝刊で「民進・辻元清美氏に新たな「3つの疑惑」」なるタイトルでさらに辻元デマを煽った。
 産経が書き立てた「3つの疑惑」とは、(1)民進党の辻元清美議員が森友学園の塚本幼稚園に侵入しかけて籠池泰典理事長夫妻を怒らせようとした、(2)民主党政権時、小学校建設地に隣接する野田中央公園の敷地を豊中市が購入する際に辻元議員が国から補助金14億円を出させた、そして、(3)がフジの番組で山口氏が口にしたのと同じ、辻元議員が付き合いのある関西生コン(連帯ユニオン関西地区生コン支部)の人間を森友学園の小学校建設現場に作業員として送り込ませ嘘の証言をさせた──というもの。やはり、いずれもネット右翼を中心に拡散されていた情報だった。
 しかしこれらは、すべてまったくの事実無根であることがすぐにバレてしまった。まず、辻元議員が塚本幼稚園に侵入したというデマだが、その根拠となっていたのは籠池諄子夫人が安倍昭恵夫人にあてたメール。だが、籠池夫人がその後、著述家・菅野完氏の取材に「事実を確認したわけではない」「私は見ていない」と否定。何の根拠もないことが明らかになった。
 野田中央公園をめぐるデマもお話にならないシロモノだった。だいたい、補助金が予算化されたのは麻生太郎内閣のとき。国土交通省の住宅局長も、政権交代前の2009年5月29日に金額を内示していると答弁している(3月29日衆院国土交通委員会)。ようするに売却も補助金も麻生内閣が決めたのである。なお、民主党政権で辻元議員が国土交通副大臣になったのは09年9月で、介入する余地がそもそもないのだ。
 そして、辻元議員が“スパイ”として関西生コン関係者を作業員として潜り込ませていたなるデマだが、これは当の“スパイ”とされた作業員が『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)のインタビューで「辻元さんの工作員というか、そういったかたちで現場の作業に入ったこともございませんし、辻元さんとの面識もございません」と完全否定。自分が安倍首相を応援していることを明かし、辻元氏について「正直言って、大嫌いですし」とまで語った。
 また、作業員は『Mr.サンデー』『とくダネ!』がこのデマを取り上げる前に『新報道2001』から取材を受け、事実を否定していたことも明かした。ようするに、フジテレビは事実でないことを知っていた上で、山口氏にデマを拡散させたのである。
 しかも、この当の作業員がここまで事実を否定した後も安倍応援団はデマ拡散をやめなかった。同じフジの『バイキング』ではネトウヨジャーナリスト・有本香が、デマが確定した『荻上チキ・Session-22』の放送の2日後に「辻元さんにも疑惑がある」とわめきたてた。
 まったく安倍応援団の悪辣さには呆れ果てるが、もっと信じられないのが当の安倍首相だった。安倍首相は産経が「3つの疑惑」を報じた当日、参院予算員会で「辻元議員はですね、きょう産経新聞に『3つの疑惑』が出ていましたね。辻元議員も証明しないといけないということになりますが」などと発言したのだ。
 この国の総理大臣は自ら率先してフェイクの拡散装置になっているのである。

★特大ブーメラン賞
加計問題で「朝日は加戸・八田証言を一切報じなかった」とフェイク攻撃した安倍晋三のフェイク

 加計学園問題をめぐり、次々と“加計ありき”の証拠や告発が出てくるなか、安倍応援団がわめきたていたデマが「閉会中審査での加戸守行・前愛媛県知事や八田達夫・国家戦略特区ワーキンググループ座長の発言で潔白が明らかになった!」。
 これ自体、本サイトで何度も取り上げてきたように、まったくトンチンカンな話(たとえば加戸氏が知事を務めたのは2010年までで、そもそも第二次安倍政権での特区指定の行政プロセスにタッチする機会もなければ内実を知る立場にもない)なのだが、あろうことか安倍首相までが、ネトウヨによる「加戸・八田証言が隠されている!」なる大合唱に乗じて、朝日新聞をターゲットに公然と批判をまくし立てた。
「まず、朝日新聞は、先ほど申しあげた八田さんの(国会での証言の)報道もしておられない」「加戸さんについては、(国会で)証言された次の日には全くしておられない」「これはぜひ、国民の皆さん、新聞をよくファクトチェックしていただきたいと思います」(10月8日党首討論会)
 この安倍発言を、“安倍首相に最も近い記者”のひとりである産経新聞の阿比留瑠比論説委員が紙上(10月9日付)で肯定的に引用し、〈朝日がいかに「(首相官邸サイドに)行政がゆがめられた」との前川喜平・前文部科学事務次官の言葉を偏重し、一方で前川氏に反論した加戸氏らの証言は軽視してきたかはもはや周知の事実である〉などと攻撃した。また産経は、党首討論会当日のweb版でも〈産経新聞は7月12日付朝刊で、朝日新聞と毎日新聞が加戸氏の発言を記事で一切取り上げていないことを報じていた〉などと胸を張った。
 が、この「朝日は加戸・八田証言を全然報じていない」なる話、まったくの嘘っぱちである。
 事実、紙面を普通に読めば自明だが、朝日新聞は加戸氏の発言を閉会中審査の翌日にあたる7月11日・25日付朝刊で報じており、「「愛媛は12年間加計ありき」加戸氏」と見出しにまでしていた(11日付)。また八田氏については、朝日は反論記事(10月8日デジタル版)のなかで〈7月25日付の朝刊で獣医学部新設の決定プロセスを「一点の曇りもない」とした答弁や、「不公平な行政が正された」とする見解を掲載〉〈また、こうした国会での発言も含め、八田氏に単独取材した今年3月下旬以降に10回以上、八田氏の発言や内閣府のホームページで公表された見解などを掲載してきた〉と説明している。
 実際、本サイトもデータベースを使って調べてみたが、朝日は今年3月から8月までの間に、少なくとも10の記事で、八田氏の発言等をカッコで引用するなどのかたちで報じていた(立場を紹介するようなものも含めば10回を超える)。
 毎日新聞についても同様で、〈朝日新聞と毎日新聞が加戸氏の発言を記事で一切取り上げていない〉(産経)というのは明確に事実と異なる。
 いやはや、安倍首相が平気で嘘をつくのは前から知っていたが、これで被害者ヅラしながら「国民はファクトチェックをしてほしい」とのたまっているのだから呆れるではないか。しかも、このフェイクニュースには笑えるオチまでついている。
 実は、産経のほうが朝日よりも、八田氏の発言を報じていないのだ。
 事実、八田氏が与党側の参考人として証言したのは7月24日の閉会中審査だが、産経新聞はその翌日朝刊で八田証言を一切報じなかった。朝日も含む他の全国紙は報じたにもかかわらず、である。ちなみに産経が八田氏の国会証言を初めて報じたのは実に2週間後の8月7日付。しかも3〜8月の間、八田氏の発言等を引用するかたちで報じた記事は5つしかなかった。実に朝日の半分である。
 安倍首相はこう呼びかけるべきだった。「ぜひ、国民のみなさん、私に好意的な産経新聞をよくファクトチェックしていただきたい」……トホホ。

★2ちゃんねる化賞
「北朝鮮の暗号解読、15日もミサイル発射」と2ちゃんねるのデマをそのまま報道した産経新聞

 北朝鮮によるミサイル発射実験が繰り返されるなか、5月14日、産経新聞web版・産経ニュースが「北朝鮮のラジオ放送の暗号を2ちゃんねらーが解読? 「14日午前5時56分、発射予定時刻かな」が的中 「明日も発射ある?」ネット騒然」なる記事を配信した。
 内容は、5月14日早朝のミサイル発射の半日前、匿名ネット掲示板「2ちゃんねる」に投稿された書き込みが、北朝鮮の暗号を解読して発射時間を事前に的中させていたとしたうえで、同じ投稿主が15日6時3分にもミサイル発射があるかもしれないとしたことを伝えたもの。つまり、2ちゃんねるの書き込みを丸呑みし、“明日もミサイル発射があるかもしれない”と報じたわけである。
 が、もちろん15日にミサイル発射などなかった(そもそも“2ちゃんねるの書き込みが14日の発射を的中させた”ということ自体、全然「的中」ではなく、実際には暗号を解読してわかったとする時間は実際の発射時間から1時間も遅れていたのだが……)。
 もはや、“釣り師に釣られた”とか、ネットリテラシーが低すぎるとか、そういうレベルではないだろう。仮にも全国紙が、2ちゃんのフェイク情報をソースにして、一切検証しないまま、ドヤ顔で「北朝鮮の暗号放送を解読」「明日もあるのか」などとほざいていたのだ。こんなのってアリなのか? いや、ナシである。
 一応、本サイトでも念のため調べてみたが、産経が取り上げた2ちゃんねるの書き込みは、「東アジアニュース速報+板」のスレッドにあった。「東アジアニュース速報+板」といえば、韓国や北朝鮮、中国の話題をひたすら集めたうえで、ニュースとは名ばかりの偽情報と差別言辞が飛び交うネット右翼の温床。「デマだらけ」「便所の書き込み」と言われる2ちゃんねるのなかでも“肥溜め中の肥溜め”と呼ぶべきネトウヨ隔離用の板だ。
 ちなみに、この2ちゃんフェイクニュースを配信した産経のWEB編集チームは、9月16日にも「金子勝・慶応大教授が「ミサイル発射は安倍首相のせい」 ツイッターに投稿」なるタイトルの記事を出していたが、実際には、金子教授は「ミサイル発射は安倍首相のせい」というツイートをしていなかった(現在はタイトルを修正)。ネトウヨ系まとめサイトも顔負け、おそるべしフェイクニュース機関である。

 以上、前編ではまず4つの部門賞を紹介した。どれも悪辣さ全開でクラクラしてくるが、2017年のフェイクニュースはまだまだある。後編では、さらに4つの部門賞、そしてフェイクニュース大賞をお届けするので、ぜひ楽しみにしていただきたい。

最終更新:2018.01.03 12:23

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