上西小百合の太田光代批判は正しい! おかしいのは「『サンジャポ』に出るな」と上西を恫喝した光代のほうだ

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2人の発言で浮き彫りになった政治と芸能界とテレビの癒着(左・うえにし小百合オフィシャルウェブサイトより/右『独走』キノブックス)


 東国原英夫、三原じゅん子、小池百合子など並みいる政治家、著名人たちをツイッター上でバッサバッサと切りまくり注目を集めている“浪速のエリカ様”こと上西小百合衆議院議員が、今度は芸能プロダクション「タイタン」の太田光代社長に噛み付き炎上騒動となっている。

 発端は、最近、橋下徹氏やおおさか維新への批判を強めている上西議員が9月3日、テレビ復帰後も橋下氏のマネジメントをしている太田社長のツイッターにこうリプライを送ったことだった。

〈上西小百合と申します。私の秘書を含め、そこそこのご理解はされていると思います。ハッキリ言いますが、橋下徹さんのマネージメントは貴方には無理じゃないですか?  明らかに問題を避ける地上波レベルだと思うのですが。テレビの閉塞感の代表が太田さんとテリーさんだと思うのですが〉

 これに対し、太田社長が〈私は貴方の秘書を存じ上げません。貴方に対しても時々サンジャポに出演頂いている議員としか認識がありません〉と切り返した上で、上西議員にこんな“通告”をしたのだ。

〈橋下さんは十三年前から弊社の顧問弁護士で弊社でタレント活動をしています。サンジャポに文句があるなら出演頂かなくて結構ですよ〉

 こうしたやりとりを受けて、ネット上では上西議員に対する非難が殺到した。〈あの人の頭の中大丈夫ですか?〉〈橋下氏への逆恨み〉〈浪速の狂犬〉〈国会議員としての自覚も品位もないですし、下品でヒステリック〉〈精神が不安定?〉……。そして、〈見事に切り返した太田社長の圧勝〉と太田光代氏を褒める声もあった。

 しかし、これ、おかしいのは上西議員ではなく、明らかに太田光代氏のほうだろう。まず、なによりひどいのが、〈サンジャポに文句があるなら出演頂かなくて結構ですよ〉というセリフだ。

『サンジャポ』こと『サンデー・ジャポン』(TBS)は太田氏の経営する「タイタン」所属の爆笑問題が司会であり、太田光は太田社長の夫でもある。しかし、番組のキャスティング権は本来、局にあるはずだ。ところが、太田社長はまるで自分がキャスティング権をもっているかのごとく、上から目線で「だったら出演させない」と上西議員を恫喝したのだ。

 これに対しては、上西議員も〈なるほど。力のある芸能事務所とはそのような権利を持っている、という事でよろしいですね〉と皮肉を込めてコメントしていたが、太田社長の言い様はまさに「芸能界の論理」丸出し。タレントパワー、芸能事務所とテレビ局の癒着を利用して脅しあげるそのやり口はジャニーズやバーニングといった大手芸能プロとまったく変わりがない。

 実際、太田社長は『サンジャポ』はじめとするいくつかの番組については、キャスティングにかなりの影響力を行使しているという見方もあり、怒りのあまり本音がポロリと出たのかもしれない。

 しかし、『サンジャポ』は曲がりなりにもニュースを扱う情報番組だ。そこから自分たちにとって都合の悪いことを口にする人間を排除するというのは、明らかな言論圧力である。それがなぜ「見事な切り返し」になり、上西議員が「おかしい」と攻撃されるのか、さっぱり意味がわからない。

 そもそも、上西議員の「橋下徹さんのマネージメントは貴方には無理」という指摘にしても、けっして的外れではなくむしろ本質をついたものだ。

 橋下氏は15年12月18日、大阪市長の任期満了とともに政界を引退し、今年4月から冠番組『橋下×羽鳥の番組』(テレビ朝日)で8年ぶりにバラエティ番組に復帰した。

 しかし周知のように、橋下氏は「政界引退」などと言いながら、現在でも日本維新の会の「法律政策顧問」というポストに就いている。しかも、その活動は“事実上のオーナー”ともいうべき露骨なものだ。

 たとえば、今年1月のおおさか維新の会(当時、現・日本維新の会)の「戦略本部会議」の初会合に参加、参院選に向けた公約や政策決定を主導していたし、7月30日には安倍首相と菅義偉官房長官、維新の松井一郎代表や馬場伸幸幹事長との会食にも同席。主役として憲法改正について協議をしている。維新の松井一郎代表も党の方針について「(橋下氏から)さまざまなアドバイスをもらう」と公言しているほどだ。

 本サイトでも過去に批判したが、そんな人物がキー局の冠番組を持つことは、特定党派の事実上のトップの主張が全国放送で垂れ流されるということであり、明らかに「政治的公平」に反している。

 ところが、太田社長はそうした橋下氏の行動にストップをかけるどころか、全面的にバックアップしてきたのだ。橋下氏が冠番組『橋下×羽鳥の番組』をもてたのも太田社長が奔走した結果であり、他のテレビ局にも橋下氏の出演の際は、かなり法外なギャラをふっかけているという。そして、一方では、橋下氏の露骨な維新での政治活動を事務所社長として戒めることもせず、やりたい放題のことをさせてきた。

 しかも、太田社長は橋下氏を事務所の顧問弁護士として迎え入れてもいる。そこには、“将来の総理”とも目される人気政治家にして冠番組を持つタレントを顧問弁護士として迎え入れることで、事務所や所属タレントへの批判を封じ込め、それこそバーニングやジャニーズ並みの力を手に入れようとしてる気配さえある。

 現に、やはりタイタン所属の大渕愛子弁護士が依頼人から不当な報酬を受け取ったとして東京弁護士会から懲戒処分を受けた問題では、橋下氏に大渕擁護をさせ、1カ月という短い謹慎でブログを復帰してしまった。

 実は、今回の上西議員のツイートもまず、この大渕弁護士の早すぎる復帰に疑義を呈したことから始まっている。そういう意味ではけっして唐突に出たものではなく、その背景には、明らかに橋下氏の言いなりになって依存度を強め、その見返りに芸能界での力を高めようとする太田社長への批判があるはずだ。

 しかし、太田社長が橋下氏と組んでやっていることは、たんにテレビや芸能界で自分たちの権力を高めるというだけではない。橋下氏が今、タレント活動をしているのは、自身の好感度と知名度を上げ、それを安倍首相とタッグを組んだ改憲に結びつけるという戦略なのは明らかだ。つまり、太田社長の橋下氏への姿勢は、この国が戦争のできる国、人権のない国になるという暗黒の未来につながっていくのだ。

 こうした妻の姿勢について、かつて「日本国憲法を世界遺産に」というほど、憲法を守る立場を鮮明にしてきた太田光は一体どう考えているのだろう。ぜひ聞いてみたいところではないか。

 いや、今の太田光にそんな質問しても意味はないか。上西議員はくだんのツイートで〈テレビの閉塞感の代表が太田さんとテリーさんだと思うのですが〉と、過激なふりして実は空気に迎合した安全なことしかいっていない2人の本質をえぐる指摘をしていたが、上西議員の言うように、今の太田光は、光代社長に完全に首根っこをつかまれ、権力に迎合し、政治的な志なんて完全に封印してしまっている。むしろ、改憲プロジェクトの応援団になりかねない雰囲気すら醸し出している。

 そういう意味では、上西議員の今回のツイートは、政治と芸能界とテレビが癒着した末に起きているグロテスクで危うい状況を明らかにしたものといえるだろう。
(伊勢崎馨)

最終更新:2017.12.21 05:06

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