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松坂桃李、GLAYもランクイン「芸能人よく言った大賞」後編! ジャーナリストもできない権力批判に踏み込んだ2人の芸人に感動

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2位 村本大輔(ウーマンラッシュアワー)
吉本上層部からの圧力も政治発言はさらに深化!「透明人間」という表現で社会的弱者の存在を突きつけた漫才に感動

 この数年、一貫して日本の政治や社会の問題を指摘し、安倍政権批判を続けている村本大輔。もはやわざわざ「よく言った」と称賛する必要もないのだが、今回もランクインせずにいられなかったのは、村本が周囲から想像以上の圧力を受けていたことが明らかになったからだ。
 2019年3月、村本は3年にわたってMCを務めた『AbemaPrime』(AbemaTV)を降板したのだが、その際、吉本の上層部から政治発言をやめるように言われ続けてきたことをこう告白した。
「番組終わった後、楽屋に毎回、吉本の社員とか偉い人が待ってて、そのまま取り調べみたいなの受けるでしょ? そうなんですよ。僕、最近、吉本の社員のこと、「公安」って呼んでるんですよ。治安維持法でね、ちょっと僕がつぶやいたらしょっぴかれて」
「この前なんか、『ガキの使い』で『アウト!』って言う藤原(寛)さん、(よしもとクリエイティブ・エージェンシーの)社長ですよ。社長が楽屋に座ってるんですよ。アベプラが終わったら、『ちょっと来てください』って言われて、『こないだのTwitterの件やけども、これはどうにかならんか、百田(尚樹)さんや高須(克弥)さんのこと』ということで、楽屋に30〜40分も閉じ込められて、ずっと藤原さんに言われたんですよ。『ホンマにあかんときは「アウト!」って言わへんのや』っていうくらい(笑)」とも明かした。
 真っ向から政権批判を口にし、沖縄の米軍基地問題や原発の問題の問題を語り始めて以降、メディアへの露出が極端に減った村本だが、その背景にはやはり圧力があったのである。
 こうしたことを知ると、今も姿勢を変えないどころか、さらにその発言を鋭くしている村本の覚悟に感動すら覚えてしまう。
 しかも、村本がすごいのは、適当な知識をつぎはぎして口先で政治的なことを語っているわけではないことだ。沖縄の基地問題、原発、在日差別の問題でも、村本は実際に現場に足を運んで、虐げられている人たちの生の声に耳を傾けている。
 元山仁士郎氏が沖縄県民投票の実施を求め宜野湾市役所前でハンガーストライキを行った際には、直接会いに行ってインタビューしているし、朝鮮学校にも実際に出かけ生徒と、差別の実態や無償化除外による困窮などについて話している。
 2019年末、『THE MANZAI 2019』(フジテレビ)で披露されたネタに、こうした村本の姿勢、深い考えがつまっていた。
 吉本芸人の闇営業問題、原発問題、沖縄米軍基地問題などを風刺するこのネタのなかで村本は「僕はね、きょうはね、みんなときょうは喋りたくてね、カメラの向こうの社会と喋りたいんですよ」とのマクラからこんな話を始めた。
「いいですか。言いたいことがいっぱいある。たとえばあの台風19号の夜、ホームレスが避難所から追い出されましたね。それに対してですね、ホームレスは『“みんな”の迷惑になるから』という奴がいました。でも、そのホームレスは“みんな”のなかにはいないわけですね。
 たとえば、このまえ朝鮮学校に行ってきました。朝鮮学校の子どもと友だちになりました。そんな話をいろんな人に喋ったら、みんなが『どういうテンションで聞いたらいいかわからない』って言われました。その“みんな”のなかに朝鮮学校の子どもはいないわけですね。
 いつでも“みんな”のなかにいない人がいて、“みんな”のなかにいない人が透明人間にされて、透明人間の言葉は誰も聞かれないようになるんですよ。  その透明人間が日本にはいっぱいいるわけですよ!」
 ホームレスや朝鮮学校の子どもたちだけではない。生活保護受給者、障がい者、性的マイノリティなど、日本社会には存在そのものを「なかったこと」にされ、無視された人々がたくさんいる。
 そうした人々は社会からの助けを得られぬまま耐え忍び、その状況の苦しさを訴えたら、助けられるどころか責め立てられる。
 村本は、その構図に視聴者も加担し、誰かの「生きづらさ」を放置することで快適な生活を送っている残酷な構図に気づくべきであると喝破したのだ。
『THE MANZAI』放送終了後の「note」に村本はこんな言葉を書いている。
〈誰かの評価を欲しくてあの場に行くんではない。おれはそのバラエティのお茶の間にその透明人間達を連れて行きたかった〉
 こんな時代に、こんなことを考えている芸人がいるなんて。村本の想像以上の“本気”に強い感動を覚えた。

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