弘道会幹部逮捕など暴力団摘発が続く中、覚せい剤逮捕歴もある「組長の娘」が暴力団離脱者の支援に取り組み

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 現在は行政でも様々なかたちで暴力団離脱者等に対して支援を行っている。たとえば、暴力団離脱者を雇用した協力企業に対して助成金を支給したり、更正支援寮に受け入れたりといった活動がそれにあたるのだが、そういった動きはまだまだ一部で、十分なものとはいえないようだ。中川さんのもとに集まる元暴力団組員はこのように証言する。

「贅沢いうか、わがままやけど、(社会復帰は)結局、個人まかせ。出所後に施設があったり、支援するとか警察も言うてるけれど、結局は、見捨てられているようなもんですからね、半分ね。彼女(中川茂代)からは、なんや昔からの友達みたいなことしてもらえてる」

 中川さんも同じ思いを抱いているようだ。彼女はこのように語っている。

「警察がこう言ってくれてるから、私、まじめになりましたとか、じゃ、うち、絶対聞いたことない。しゃあから、やっぱり……気持ちを許せる人との信頼関係と……それで立ち直れるんちゃうかなと思うてる」
「地域に根付いた組織作らなあかんのちゃうかな……思うてきた、今は」

 現在の行政ではサポートできていない中川さんの支援分野だが、実は、犯罪社会学の見地では、この中川さんのサポートする部分こそ、犯罪行動に走った人をもう一度社会に戻すために重要な役割を果たすと理論化されているという。

 ロバート・サンプソンとジョン・ラウブが提唱した「社会統制理論(ライフコース論)」は「社会とのボンド(絆、つながり)が弱まったり切れたりする場合に、犯罪・逸脱の可能性は高くなる」(ボンド理論)という考えを理論構築の基礎に用いており、それによると、成人期の人の犯罪や非行行動に関しては、このように説明されていると廣末氏は綴る。

〈成人期の社会的コントロールでは、親や学校、あるいは警察による直接的かつフォーマルなコントロールではなく、他者への義理や自制といった「内なるコントロール」が重要な役割を果たす。そうした「内なるコントロール」は、社会の成員たちがお互いに依存していなければ生まれない。そしてそれは、犯罪性向を持つ者に、実際に犯罪行為を実行することを躊躇わせる障壁となるのである〉

 つまり、中川さんが行ってきた支援は学術的にも正しいものだったということだ。中川さんの活動には暴力団離脱者支援のための重要なヒントが隠されている。

 しかし、行政が好む画一的な対応とは一線を画し、「人と人とのつながりの質」に重きを置く中川さんの支援活動を他の支援者たちがどれほど真似できるかには疑問が残る。とはいえ、廣末氏の取材および研究の成果は、従来のような画一的な行政指導では本当の支援にはならず、暴力団離脱者や更正者のニーズに寄り添った官、民、地域社会が一体となった支援こそが求められていると一石を投じるものではあるはずだ。

最終更新:2017.11.22 06:34

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