弘道会幹部逮捕など暴力団摘発が続く中、覚せい剤逮捕歴もある「組長の娘」が暴力団離脱者の支援に取り組み

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 このときのハマり方はその前の比ではなく、クスリを打ち過ぎて腕の血管が潰れ、脚の血管に注射するようになるまでに。最後は肛門からクスリを注入するような末期的な状況にまでなっていたと言う。それと同時に、知り合った売人の男とクスリの売買にも手を染める。これが原因で逮捕されて5年の判決を受けることに。結果、離婚することにもなってしまうのだが、この逮捕の経験と、そのときに感じた思いが、現在の草の根の支援につながっていく。彼女はこのように語っている。

「私が一番感じたんは、やっぱり『外からあなたを待っているよ』いう、私は、母親が、『お母ちゃんだけ、(お前の帰りを)待ってる思うたら、ええねん』と、いつも面会で言ってくれて、それが支えやったから。差入れも、毎日、毎日してもろうて……でも、面会に誰も来ない人がいる。大抵、そうやけど、一回も来ない人が居てるんですよ」

 親でも、配偶者でも、子どもでも、友達でも誰でもいい、親愛の情を感じる誰かが自分のことを見てくれて気にしてくれるということが、更正し、社会復帰するための一番の動機づくりになる。自分自身の経験から、中川さんはそのように感じたという。そして、ホテルのフロントで働きながら(現在は転職しているとのこと)、支援活動を始めるようになった。

 中川さんの支援の主な内容は、更正を願う暴力団組員や刑務所出所者に食事を出してグチや悩みを聞いてあげたり、就職できそうな知り合いの会社を紹介してあげたりといったこと。彼女自身はこれは本格的な支援とは思っていないらしく、著者の廣末氏が取材に行くと、中川さんは「カタギの世界では、これは「支援」いうんか。皆で首を傾げよってんな。ただ、飯食わしただけ。ただ、仕事紹介しただけ」と不思議がったという。

 しかし、一見地味な中川さんの活動は、確実に効果をあげていた。同書では中川さんの支援を受けた元暴力団組員のこんな言葉を紹介している。

「中川さんの、一番ありがたかったことは、助言というか、いつまでもそないなことしてたらあかんと、四十九歳になった時ですけどね、言われたことですわ。『もう、五十歳なるねんから、しっかりしなさい』いうて、親身になって怒ってくれているのも分かって……(中略)ちょっと頑張ってみようかな思って。ちゃんとした正業には、まだ就いていないけど、なんとか食いつないでいけるかたちですね」

 中川さんのこういった活動を廣末氏はこのように評価している。

〈彼女の立ち直り支援とは、たとえば、刑務所出所者に対して食事を振る舞い、一夜の宿を提供し、金銭を貸与し、就職や住居を斡旋し、よろず相談に乗ること等である。これらは、警察や保護観察所といった公的機関が為しえない、離脱者・更正者のニーズや特性に応じたケースバイケースのオーダーメイドの支援であるといえる。何より私が感心し、興味を持ったこととして、彼女の場合は、自身が様々な非行を経験し、覚せい剤中毒になり、覚せい剤の売人と暮らし、刑務所に収容された経験があることから、犯罪者との目線が共有でき、いわゆる犯罪・非行サブカルチャーを踏まえた「痛みが分かる」支援ができていたことである〉

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