大橋巨泉の妻が死後初めての手記を発表! 安倍政権への怒りを訴え続けた最期、そしてまだまだ言いたい事が…

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 巨泉氏が安倍政権を警戒し、怒りを表し続けてきた理由。それは、彼自身の戦争体験にある。1934年生まれの彼が実際にその目で見た戦争は、人間の命がないがしろにされる恐ろしいものだった。それは安倍政権や、彼らを支持する者たちが目を背けている、戦争の真の姿である。

〈何故戦争がいけないか。戦争が始まると、すべての優先順位は無視され、戦争に勝つことが優先される。昔から「人ひとり殺せば犯罪だけど、戦争で何人も殺せば英雄になる」と言われてきた。
 特に日本国は危ない。民主主義、個人主義の発達した欧米では、戦争になっても生命の大事さは重視される。捕虜になって生きて帰ると英雄と言われる。日本では、捕虜になるくらいなら、自決しろと教わった。いったん戦争になったら、日本では一般の人は、人間として扱われなくなる。
 それなのに安倍政権は、この国を戦争のできる国にしようとしている。
(中略)
 ボクらの世代は、辛うじて終戦で助かったが、実は当時の政治家や軍部は、ボクら少年や、母や姉らの女性たちまで動員しようとしていた。11、12歳のボクらは実際に竹槍(たけやり)の訓練をさせられた。校庭にわら人形を立て、その胸に向かって竹槍(単に竹の先を斜めに切ったもの)で刺すのである。なかなかうまく行かないが、たまにうまく刺さって「ドヤ顔」をしていると、教官に怒鳴られた。「バカモン、刺したらすぐ引き抜かないと、肉がしまって抜けなくなるぞ!」
 どっちがバカモンだろう。上陸してくる米軍は、近代兵器で武装している。竹槍が届く前に、射殺されている。これは「狂気」どころか「バカ」であろう。それでもこの愚行を本気で考え、本土決戦に備えていた政治家や軍人がいたのである。彼らの根底にあったのは、「生命の軽視」であったはずである〉(「週刊朝日」15年9月18日号/朝日新聞出版)

 本稿冒頭にあげた〈選挙民をナメている安倍晋三に一泡吹かせて下さい〉という言葉が掲載された「週刊現代」が発売された後、ひと月も経たずに巨泉氏は亡くなった。

 当然のことながらニュースでは、『11PM』(日本テレビ)、『クイズダービー』(TBS)、『世界まるごとHOWマッチ』(MBS)といった人気番組を手がけた功績などを讃えつつ訃報を伝えたわけだが、残念なことに、最期の最期に巨泉氏が我々に残そうと苦闘した政権への怒りのメッセージを、ワイドショーやニュース番組はことごとく無視した。『報道ステーション』(テレビ朝日)でさえ最後のコラムの〈今も恐ろしい事や情けない事、恥知らずなことが連日報道されている〉という部分までしか紹介しなかった。安倍首相について言及した部分まで報じたのは、『NEWS23』(TBS)だけだ。

 寿々子夫人は前述の手記で、巨泉氏の遺品整理をしたときのことについて、このように述べている。

〈亡くなった後、カナダや千葉の自宅から、英字新聞や日本の新聞、パソコンからプリントアウトしたものに一杯、赤線が引いてあるのが見つかりました。タイトルのついている原稿用紙まで出てきた。まだまだ書きたいこと、言いたいことは山ほどあったのでしょう〉

 巨泉氏が亡くなったのとわずか数日違いで、彼と交遊が深かった永六輔氏が亡くなってしまったのは記憶に新しい。永氏も同じく戦時中の体験を語りながら、憲法を守り平和を守ることの大切さを語り続けていた文化人のひとりだ。

 寿々子夫人が手記で書いていた通り、現在のマスメディアは圧力を恐れてどんどん物を言えない環境になっている。そんななか、巨泉氏や永氏のような存在は貴重なものだった。その意志を無為にすることのないよう、我々は彼らの最期のメッセージをもう一度胸に刻み付ける必要がある。
(新田 樹)

最終更新:2017.11.12 02:18

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