元祖『問題のあるレストラン』? 70年代に中山千夏主演で超過激な“フェミドラマ”が

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 記事のなかには自分の本質をうまく突いたものもあったとはいえ、本人の言った覚えのない言葉が使われていたり、最悪の場合まったくのでっちあげのものもあったりと、雑誌の芸能記事が結構いいかげんなものであることが浮き彫りにされる。『ビートルズ・レポート』『鞍馬天狗のおじさんは』など名著も多いルポライター・竹中労の書いた記事に対しても、「取材対象に興味のないまま書いたやっつけ仕事」だと容赦がない。

 本書で批評・分析の対象となるのは、雑誌記事ばかりでなく、彼女が仕事をともにしたテレビ関係者にもおよぶ。田原総一朗に対する《世の大半は田原さんを正論の徒、改革的ジャーナリストとみなしているようだが、果たしてそうか? 政治も社会も、ただホンネ、ホンネで混ぜっ返して、面白がっているだけじゃないのか?》といった指摘などは、筆者も著書やテレビで田原の武勇伝自慢に接するたび同じようなことを思っていただけにニヤリとした。

 とりわけ注目すべきは青島幸男について書かれたくだりだ。青島と中山はテレビでの共演も多く、のちには政治活動でも手を組みながら、中山が参議院議員になると衝突し最終的に訣別した。以来、青島については無視を決めこんできたが、本書では30年の沈黙を破ってあらためてその人物像に迫っている。

 いまにして思えば、青島は「他人との交流にまったく興味がなかった人」だったという。青島というと放送作家・作詞家・タレントとして活躍し、小説を書けば直木賞を受賞、政治家としては参院議員から東京都知事にまでのぼりつめた人物だけに、この評は意外な気もする。だが、彼があらゆる分野で頂点をきわめることができたのも、まさに人一倍自信を持ち、他人から尊敬されたり助言されたりすることを嫌い、常にオリジナリティにあふれたやり方を考案し(ときにそれは凡人の目にはズルやインチキにも見えるが、本人は平気だ)、実行してしまうからだった。ただし例外的に、自分の目標のために必要だと思い定めた人物には歩み寄った。中山もその対象に含まれたため、青島と付き合いのあった当時は気づかなかったのだという。先の青島評は、距離と時間を置いたからこその冷静な評価だといえる。

 そんな鋭い人物評を交えながらつづられるこの本は、60年代~70年代のテレビ・芸能界の内幕を知る一級の資料となっている。この手の本には、現在とくらべて過去を持ち上げるものも少なくないが、中山の著書にはそういうところがない。むしろ読んでいると、いまと変わらないところも多分にあるように思えてくる。中山が《テレビの権力で、ひとの人間性を引きずり出すパワーハラスメント》として嫌ったドッキリ企画はその一例だ。

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