年末特別企画 リテラの2014年振り返り

百田尚樹、佐野眞一、猪瀬直樹……2014ノンフィクション作家の事件簿

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

第4位 朝日新聞の吉田調書叩きを仕掛けた門田隆将に安倍首相大喜び

 今年、ジャーナリズム最大の話題といえば、やはり朝日新聞の誤報。その問題の中で慰安婦と並ぶ福島原発「吉田調書」問題を仕掛けたのは、最近、戦記ものや回顧ものノンフィクションを量産して、売れっ子になっている門田隆将だった。
 門田はもともと『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)で、吉田所長の単独インタビューを行っていた。ところが、朝日が吉田調書を報道すると、これにいち早く反応し、ブログや「週刊ポスト」で「誤報だ」と追及。さまざまなメディアにこの問題を持ち込み、キャンペーンを張った。その結果、朝日追及の機運は慰安婦報道からこの問題に飛び火。朝日は窮地に陥り、全面謝罪に追い込まれることになった。
 たしかに、門田の『死の淵を見た男』はかなり多方面にわたって緻密に取材しており、労作といえる。それに比べると朝日報道は現場取材もしておらず、ずさんであることは否めない。だが、リテラで何度も指摘しているように朝日は本文では吉田調書を原文通り報道しており、その解釈が意図的、強引だっただけだ。このレベルの意図的解釈は新聞も週刊誌もしょっちゅうやっており、「誤報」と大騒ぎするようなものではない。
 門田は、『「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実』(PHP研究所)の中で「自分のイデオロギーや主張に沿った都合のいい事実だけをピックアップ」「悪質で、無慈悲で、血も涙もない」と書いているが、そもそも門田がかつて次長をつとめていた「週刊新潮」もそれこそ血も涙もない決め打ち記事で悪名をはせていたのではなかったか。
 しかも、門田は途中で、原発再稼働と民主党叩きのために吉田調書問題を利用したい官邸や右派メディアと完全に共同歩調をとるようになっていた。門田は再三にわたって「イデオロギーは関係ない」「特定の政治的立場に立っていない」というが、明らかに歴史修正主義の立場に立って、慰安婦問題と吉田調書問題を一緒くたにして朝日バッシングの一翼を担ってきた。たとえば、こんな調子だ。
〈事実と異なる報道によって日本人をおとしめるという点において、先に撤回された慰安婦報道と図式がまったく同じではないか、と思う。〉(産経新聞8月18日)
 この間、門田が官邸と直接、連動していたかどうかは不明だが、少なくとも宿敵の朝日追い落としを仕掛けてくれたことに安倍首相は大喜びしているようだ。11月2日、安倍はFacebook上で門田の著書『狼の牙を折れ 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部』(小学館)に触れて、こう絶賛した。
〈左翼暴力集団が猛威をふるい、平然と人の命を奪った時代、敢然と立ち向かった人たちがいた。その執念の物語でもあります。朝日新聞の吉田調書報道が捏造であると最初に告発し、勇気を持って巨大組織に論戦を挑んだ門田隆将氏渾身の作品。お薦めです。〉
 ちなみに、この『狼の牙を折れ』は三菱重工爆破事件の犯人逮捕をめぐる警視庁公安部の奮闘を40年後の今頃になって描いた公安PR本。門田はこのまま御用ジャーナリストとしての地歩を固めていくのだろうか。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム 大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相 (宝島NonfictionBooks)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

百田尚樹、佐野眞一、猪瀬直樹……2014ノンフィクション作家の事件簿のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ノンフィクション出版業界振り返り本間究の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 即位パレードで安倍首相が“天皇きどり”で窓を開けお手振り!
2 即位パレードで「雅子さまの足跡」を振り返るマスコミが触れなかった深刻な事件
3 即位パレードで天皇夫妻が通った自民党本部に巨大垂れ幕!
4 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第7話
5 美智子皇后が誕生日談話で安倍にカウンター
6 即位礼に天皇の「安倍首相への抵抗」を示す招待客が
7 葵つかさが「松潤とは終わった」と
8 安倍首相「桜を見る会」の税金を使った不正が国会で明らかに!
9 安倍首相の「共産党か」ヤジはネトウヨの常套句
10 『報ステ』小川彩佳降板は政権批判が原因か
11 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
12 安倍首相と文大統領の会談写真に産経が「韓国の無断撮影」のイチャモン
13 即位礼で百田尚樹からNHKまで「雨が上がって虹が」の神国カルト
14 「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈したもの
15 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
16 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
17 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
18 竹田恒泰が女系天皇否定を批判され「天皇そのものが差別の根源」と開き直り
19 公文書改ざんを生んだ安倍首相逆ギレ発言の舞台裏
20 稲田朋美が“代表質問”でトンデモ連発!
1久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄