宮台真司インタビュー後編

宮台真司がネトウヨを語る「あれは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」

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──たしかに、俗にいうポピュリスト政治家たちの躍動は、まさに宮台さんの言う〈感情の政治〉の必然であるように思えます。それはときに、社会の構成員から肝心の政策的関心を矮小化させるという意味で危険を孕んでいる。これを回避する方法はないのですか?

宮台 回避には、短期には浅ましい輩から主導権を奪うスモールユニットでの〈熟議〉と〈ファシリテイタ〉の組合せ(フィシュキン&サンスティーン)が、長期には〈感情の教育〉(ローティ)による〈感情の民主化〉(ギデンズ)が必要です。要は、〈感情の劣化〉を被った〈大衆〉を煽動する〈感情の政治〉を潰すべく、短期・長期の戦略を駆使して、〈大衆〉を排除して〈公衆〉を取り戻す。この課題設定は、過去20年間、政治学やその周辺で常識化しています。スモールユニット(マイクロプロセス)が機軸だとされる理由は、マクロな風景が変質したからです。かつてはブルーカラーや地方出身者は見ただけで判りました。今は誰がマクドナルド難民やデリヘル難民なのか外見で判りません。しかも勝ち組も負け組もマクドナルドやネットを使うし、高偏差値大学の子もデリヘルで働く。だからウマクやれる奴とやれない奴の違いがあるだけと意識され、排除された者たちが連帯できなくなり、さもしい嫉みが蔓延します。また性愛ワークショップをして分かるのは、ブルーカラーや地方出身者が一目瞭然だった頃に比べ、性的機会からの排除が強い劣等感と嫉みを来すこと。イケメンでも同じで外見から分からない。一部は劣等感を回避すべく草食化します。こうした状況を福祉学周辺で〈疑似包摂社会〉(ヤング)と呼びます。機会から排除された人々が、それを適切に意識できず、排除された人々同士が浅ましい妬み嫉みでつぶし合う。オーソドックスにはこれがヘイト現象の背景です。こうした分析が妥当なのは、ヘイト連中が、かつてのブルーカラーや地方出身者と違い、僕らの友人知人の範囲に見つかる独特のキモさを漂わせることで分かります。〈自意識の困難を社会の困難にすり替える輩〉独特の佇いです。

──ネット右翼やヘイターたちにその種の人々がいることは事実だと思います。しかし一方で、そこから社会保障の拡充やアファーマティブアクションの肯定を志向する人たちもいるんじゃないですか。とすれば、ネット右翼たちには他にも彼ら特有のメンタリティがあると想定されるわけですが。

宮台 最初に対処法のヒントになる話をしてから、現象をどう捉えるべきかを話します。僕が若い頃は「左翼」の時代でした。71年に麻布中学に入ると、すぐ半年近くの学校封鎖。それが解けても全校集会と学年集会の嵐だった。麻布中学も、中核と反戦高協と叛旗派など新左翼の牙城。大勢が三里塚に出かけました。教員には革マル教師連合の委員長もいて、中三の修学旅行の帰りに中核派の生徒によるレポで「撃沈」される事件もあった。まあ、暴力の嵐。僕の周辺では、“ヘタレ優等生“が日共やそのフロント学生団体の民青で、“ゴロツキ”が新左翼だと考えていた。僕の周辺の人間関係でも、イデオロギー以前に、佇まいとして、民青はキモくて許せなかったというところがあります。これとイデオロギーが実は関係していた。日共など旧左翼は〈システム〉を整えれば人は幸せになれると考える。だから平等主義一辺倒です。だがそれで良いのか。身を捨てて貢献したい共同体やパトリの存在こそ大切じゃないか。身を捨てて貢献したい共同体を持ち出すのは新左翼です。ちなみに〈システム〉とは損得勘定の〈自発性〉に覆われた領域。損得じゃない情念の〈内発性〉が賞賛される領域が〈生活世界〉。これはハーバマスの用語法ですね。紀元前5世紀来の思考伝統だと、計算可能性を重視するのが〈主知主義〉。情念を重視するのが〈主意主義〉。前者を左と呼び、後者を右と呼ぶのがシュライエルマッハ。その意味で、新左翼は〈主意主義〉で、実は右の系譜です。

──一般に右は、自集団が獲得したベネフィットを広範囲に配分することを好まないと思うのですが?

宮台 これは説明が必要だね。戦後の日本人は馬鹿になったので、市場主義が右、配分正義が左だと思い込む。ならば戦前の北一輝や石原莞爾や宮沢賢治はどうよ。彼らは法華経ないし日蓮主義に帰依し、自他共に認める右だが、資本主義を否定したじゃないか。だから僕は高校時代からこう言います。社会が良くなれば人は幸せになると見るのが旧左翼。社会が良くなったくらいじゃ幸せになれないと見るのが新左翼。より一般的には、前者が左、後者が右。実際それが戦前の用語法でした。冒頭の言い方に翻訳すると、「話せば分かる」の〈表現〉一辺倒が左。言語化できない〈表出〉の基底を重視するのが右。その意味で、新左翼は右。それが70年代以降は、左といえば、戦後旧左翼の「話せば分かる」に頽落した。だから「左はヘタレで不格好、右が血気盛んで格好いい」というイメージになった。もう言いたいことは分かったでしょう。昔は、ヘタレで不格好なイメージだったのは旧左翼だけ。血気盛んで格好いいゴロツキ新左翼がいた。

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