宮台真司インタビュー後編

宮台真司がネトウヨを語る「あれは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
miyadai_01_141103.jpg
宮台真司氏

前編より続く)

 日本は反知性主義の時代に突入した。路上では排外主義的デモや人種差別が繰り広げられ、インターネットではネット右翼たちが跋扈している。政治家はこれを利用し、自らの都合のいいように歴史の修正をもくろむ。そして、これらに対抗する言論はまだまだ主導権を握ることができていない。なぜなのか。

 社会学者・宮台真司は言う──連中に理屈を説いてもムダ、と。この愚昧さが筒抜けの社会をひも解く鍵は〈感情の劣化〉にあるという。感情のるつぼと化した政治、ネット、ヘイトの深層を〈大衆〉という観点から分析する宮台。インタビュー後編をお届けする。

………………………………………………

──近著『これが沖縄の生きる道』で、内地と沖縄における〈我々〉意識の違いを論じていますね。そのなかで“感情”という概念を頻繁に用いつつ、ネット右翼たちへの言及もあります。とりわけ宮台さんが問題にする〈感情の劣化〉ついて詳しくお聞かせください。

宮台真司(以下、宮台) 〈感情の劣化〉とは、簡潔に述べると、真理への到達よりも、感情の発露の方が優先される感情の態勢です。つまり、最終的な目的が埒外になってしまい、過程におけるカタルシスを得ようとする傾向。別の言い方だと、感情を制御できずに、〈表現〉よりも〈表出〉に固着した状態です。ちなみに〈表現〉の成否は相手を意図通りに動かせたか否かで決まり、〈表出〉の成否は気分がスッキリしたか否かで決まります。部族的段階では「政りごと=政治」と「祭りごと=祭祀」とが区別されなかった。つまり〈表現〉と〈表出〉が癒合していた。癒合を支える前提が、濃密な共同性です。でも複雑な社会になると全域を濃密な共同性で覆えない。だから、文明的段階(帝国的段階)になると、必ず〈表現〉と〈表出〉が峻別されるようになります。例えばプラトンは、紀元前5世紀後半になると、政治に〈表現〉と〈表出〉の峻別を求めるようになります(哲人政治)。近代社会も複雑だから、〈表現〉と〈表出〉の峻別がないと社会システムが淘汰されてしまう。血縁集団であれ、企業組織であれ、国民国家であれ同じこと。だから近代では人々に以前より感情の制御能力が強く求められます。

──つまり感情が制御されないとき社会システムは崩壊する、と。具体例としてはどのようなものがあるのでしょう。

宮台 例えば、民主主義は無条件では成り立たない。民主制が健全に作動するには、エリートから庶民まで〈表現〉と〈表出〉を区別できなければダメ。前編で話した通り、これが難しいことだと考えるのが大衆社会論の伝統です。大衆社会論は19世紀末に新聞大衆化と共に始まり、マスコミの発達に並行して深化します。未曾有の最終戦争だった第1次大戦の後、民主制が戦争を回避できなかった理由として、ラジオと新聞の感情的動員が挙げられました。いわく、人々が分断され孤立すると、感情的に動員されて、選挙や議会決議で愚昧な開戦に道が開かれるのだと。動員される人々を〈公衆〉ならぬ〈大衆〉と呼びます。にもかかわらず、メディア的動員でナチスが誕生しました。第2次大戦後はナチスへの反省から、マスコミ効果研究と亡命ユダヤ人の批判理論が、人々が分断され孤立した状態に置かれない条件を実証研究した。そして、分厚い中間層が可能にする近隣ネットワークが見出されました。幸い、第2次大戦後の20年間は重化学工業化と郊外化で──専門的には技術革新の限界効用の高さゆえに──先進各国で中間集団が膨らんで中流意識も拡がり、それを背景に民主制の妥当な作動を支える〈公衆〉が信頼された。ところが以降、まず福祉国家体制が財政的に破綻して新自由主義の時代が始まり、続いて冷戦体制が終焉して資本移動自由化(グローバル化)の時代が始まる。かくて過去20年間、先進各国の中間層が一挙に分解したのです。そして21世紀に入ると、先進各国で〈大衆〉の感情に訴えて溜飲を下げる勇ましい連中が、議員や大統領に選ばれるという〈感情の政治〉が始まり、資本移動自由化にブレーキがかからぬばかりか、浅ましい排外主義が跋扈します。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

宮台真司がネトウヨを語る「あれは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。インタビューネトウヨ吉岡命の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 岸田首相が性差別発言や統一教会擁護の安倍応援団・小川榮太郎をブレーンに
2 葵つかさが「松潤とは終わった」と
3 マツコが文書改ざんは安倍首相の独裁に原因と指摘
4 高橋治之と安倍晋三は親戚関係だった!安倍家の自宅購入資金も高橋弟が捻出
5 テレ朝で『モーニングショー』統一教会報道中止、ネット動画削除!
6 統一教会問題で下村博文と山谷えり子の呆れた開き直りと嘘
7 統一教会とズブズブ報道の萩生田光一政調会長がテレビ各局に圧力か
8 KADOKAWA夏野剛社長に新たな暴言が発覚! 一方、森喜朗には…
9 統一教会とズブズブ萩生田「政調会長」に批判殺到!一方、テレビは…
10 小川榮太郎の安倍擁護本を東京地裁が14カ所も「真実性なし」と認定!
11 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
12 三浦瑠麗が近財職員の自殺にトンデモ発言
13 NGT山口真帆が秋元康と指原莉乃に謝罪の謎!
14 安倍首相の祖父・岸信介のアヘン利権
15 吉田羊と熱愛の中島裕翔が痴漢騒動
16 乃木坂46橋本奈々未が背負った貧困
17 安倍政権がコロナ対応よりも言論弾圧に必死!標的は『モーニングショー』
18 コロナ補償で「在日外国人、生活保護受給者に払うな」の排除論が跋扈!
19 赤木ファイル公開で改ざん指示は安倍から菅、菅から佐川のルートが濃厚に 
20 八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
1高橋治之と安倍晋三は親戚関係だった!安倍家の自宅購入資金も高橋弟が捻出
2岸田首相が性差別発言や統一教会擁護の安倍応援団・小川榮太郎をブレーンに
3 統一教会問題で下村博文と山谷えり子の呆れた開き直りと嘘
マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄