時代劇のオワコン化はキムタクのせい!? キムタクもオワコンだけど…

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 本書でも指摘されているが、時代劇での“自然体”というものは、〈「作り込んだ芝居」を観客に違和感なく受け止めてもらうために技術を尽くした結果得られるもの〉である。時代劇は現代とは違う、いわば〈異世界のキャラクター〉を演じなければならないもの。着物を着こなし、所作を身につけ、時代の価値観や役を掘り下げて、はじめて違和感は払拭されるというのだ。

 しかし、こうした役へのアプローチは、時代劇に限らず現代劇でも必要な作業だ。木村にはそれがないからこそ、跳ね上がりの検事を演じても、未来からやってきたアンドロイドを演じても、変人の脳科学者を演じても、すべてが同じ演技だと言われ、“キムタク”というオフィシャルイメージの枠から抜け出せないのではないか。

 少なくとも同じSMAPでも、稲垣吾郎が月9ドラマ『流れ星』(10年)で主人公を追い詰める冷血な兄を演じていた際は、つづく『SMAP×SMAP』を観るたびにその落差に震えたものだが、『HERO』の場合はそんな動揺を受けることなく、ただそこにジーンズからコック姿に衣装チェンジした人物が映っていた。──そう考えると、木村の演技は役や舞台を踏まえた“自然体”などではない。たんなる“ありのままの自分”なだけではないのだろうか。

 時代劇のみならず、現代劇さえ危機的状況のテレビドラマ界。たしかに木村が視聴率王として君臨できたのは、自然体に見えるその演技が当初は新鮮だったからこそだが、それが飽きられてきていることは数字が示している。だが、『信長協奏曲』のキャストを見ると、役作りに定評のある小栗旬を筆頭に、“カメレオン俳優”と呼び声高い山田孝之、そして『アオイホノオ』(テレビ東京系)で強烈なインパクトを残したばかりの柳楽優弥など、反“自然体”の濃いメンツが揃っている。時代劇ファンにとっては荒唐無稽な物語かもしれないが、台頭する若い役者たちの奮闘を見届けるのも悪くはないはずだ。そして、願わくばこの作品が時代劇復活の糸口になればいいのだが……。
(サニーうどん)

最終更新:2015.01.19 05:04

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