松本人志、立川志らくも差別丸出し「ホステスや風俗に補償するな」論に元スカウトマンの高知東生がリアルな反論

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高知東生Twitterより


 ようやく、とんでもない差別政策が撤回された。コロナ対策により仕事を休まざるを得なくなった人への休業補償で、その対象から「接待飲食業」や「性風俗業」の関係者、つまりホステスやホスト、キャバクラ嬢、性風俗従事者らを排除していた問題だ。

 これは明確な職業差別であるだけではない。ホステスや性風俗従事者にはシングルマザーが多く、そういう人たちに子どもの休校による補償をしないというのは、感染拡大の抑止を妨げるうえ、生活困窮家庭を大量に生み出し、子どもの教育の機会を奪うことになる。それこそ、行政による殺人行為と言っていい。

 ところが、厚労省は驚いたことに「風営法上の許可を得ている事業者であっても、公金を使って助成するのはふさわしくないと判断した」(毎日新聞4月3日付)などと、差別扱いを公言。加藤勝信厚労相も、3日の記者会見では「取り扱いを変える考えはない」と、聞く耳をもたない姿勢を継続していた。

 しかし、多方面から非難が殺到し、さすがに安倍政権も方針を転換せざるをえなくなったのだろう。まず、菅義偉官房長官が6日の衆院決算行政監視委員会第1分科会で「(助成金の支給)要領について見直したい」と答弁。続いて、加藤厚労相も7日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休校に伴う保護者への休業補償に関し、風俗業にも適用すると表明したのだ。

 ひとまず安心だが、しかし、信じがたいのは、この間、この差別政策を全面肯定した有名人がいたことだ。

 その代表が松本人志だ。松本は5日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)で、「水商売のホステスさんが仕事休んだからといって、普段のホステスさんがもらっている給料を、われわれの税金で、俺はごめん、払いたくはないわ」と吐き捨てた。

 そもそも普段の給料と同額が支払われるわけがないのに、わざわざミスリードして、補償を否定する──。ようするに、松本はホステスなんて補償する必要がないと主張したのだ。

 松本はセクハラや不倫問題などでも、女性側に責任を押し付ける言動を繰り返し、女性をモノとしか見ない女性蔑視、ミソジニー体質が有名だが、まさかこんな危機的状況のなかで、困窮する女性たちの切り捨てを言い出すとは……。

しかも、卑劣なのは、「俺はごめん、払いたくない」と税金を自分のものであるかのように持ち出してきたことだ。

 いくら高額納税者であろうが、税金は松本ひとりの金じゃない。だいたい税金の問題を持ち出すなら、自身が所属する吉本興業へのクールジャパン100億円出資とか、吉本芸人の官公庁広告・高額出演はどうなのか。それこそ、税金でそんなもの払ってほしくない、と思っている国民は山ほどいるはずだ。

高須院長は「僕の税金から払ってもらいたくない」、立川志らくも…

 ところが、こんな松本に援軍が現れた。高須クリニック院長の高須克弥氏も松本の発言について報じたニュースをリツイートしたうえで、〈何で物議になるのか? 僕だって、僕の税金から払ってもらいたくない。何がいけない?〉と、全く同じ主張を投稿したのだ。

 自分たちが過去にさんざんこういう店を利用してきたのに、危機的状況になると、途端に“汚い商売”扱いして切り捨てる──。彼らのなかでは結局、ホステスや性風俗に従事しているような女性は“モノ”にすぎず、それぞれに意思や生活事情があることなんて全く想像の外なのだ。

 右派やネトウヨが平気で「従軍慰安婦」を否定するというのも、結局、こういう精神構造がベースになっているのだろう。

 しかし、高須院長の場合、ホステスを排除するこの姿勢って、それこそパートナーであるマンガ家の西原理恵子の作品を完全否定するようなものではないのか。西原はこの発言を許すのか。

 松本や高須ほどではないが、立川志らくも、とんでもない理屈で、風俗業の排除を正当化していたひとりだ。

 志らくは4月3日にツイッターでこう述べていたのだ。

〈落語家は「この商売はあってもなくてもではなく、なくてもなくてもいい商売だ」とよく言う。夜の風俗店はあってもなくてもいい商売。だからこれに補償しないのは差別だといのはちと違う。真っ先に補償すべきは、なくては困る商売。職業に貴賎なしではあるが非常事態における優先順位は当然出てくる。〉(原文ママ)

 もっとも、志らくは批判が殺到すると、当該ツイートを削除し、こんな釈明をした。

〈知事に名指しされた夜の風俗店を補償してあげたらと私はひるおびで発言したら風俗なんぞを税金で助けるな!と非難された。でも風俗で働いているシングルマザーだっている。続いて職業に貴賎なしではあるがでも順番はあると発言したら風俗を差別したと非難される。こんな状況だから皆ピリピリしている。〉

 ようするに、風俗業への補償を口にしたら批判されたから、優先順位があると修正しただけ、などと言い出したのだ。しかし、志らくがそこまできっぱり風俗で働く女性たちを擁護したのを見た記憶がないし、仮にしていたとしても、批判なんてたいしてされていない。それを「皆ピリピリしている」とか、何をごまかしているのか。

 まったくその小狡さには呆れるが、もっと問題なのは、風俗業の優先順位が下だと見る認識じたいが間違っていることだ。前述したが、シングルマザーが多い風俗業の女性を補償から外すという政策は、それこそ、生活困窮者を大量に生み出すだけでなく、感染を拡大させることにもなりかねない。志らくはそのことをまったくわかっていないのだ。

高知東生が逮捕で気づいた「根性論と自己責任論ふりかざしてた」自分の無知

 危機的な事態になるとその人間の本質が表れるというのは、よく言われることだが、新型コロナ感染拡大はまさに、松本人志や立川志らくらの、差別意識と卑劣さ、弱者を平気で切り捨てる冷酷な本質をあらわにしたということだろう。

 いや、彼らだけではない。新型コロナ感染では、安倍政権の弱者切り捨ての本質もはっきりした。今回、ホステスや性風俗従事者の補償排除は見直しになったが、それはあくまで子どもの休校措置にともなう休業補償にかぎってのことだ。これまでの安倍政権の姿勢を見ていると、ほかの補償では相変わらずホステスや性風俗従事者が対象から外されることも十分考えられるし、ホステス以外にも、ホームレスや在日外国人など、社会的に弱い立場の人が補償されない可能性は非常に高い。

 しかも、いまの日本社会には、その安倍政権の弱者切り捨てを全面肯定する残酷な空気が広がっている。

 しかし、彼らは明日、自分たちが同じような状況に陥ってしまうという可能性を考えないのだろうか。

 覚せい剤で逮捕された俳優の高知東生が、このホステスや性風俗従事者排除に際して、ツイッターでこうつぶやいていた。

〈今コロナの問題で、風俗で働く女性には風当たりが強くて支援金も貰えないって聞いたけど、風俗で働く女の子には色んな事情を抱えた人が沢山いる。昔スカウトマンやってたからよくわかる。俺が言うと問題かもしれないけど、道徳では生きていけない、生きることに必死な人がいるってわかって欲しいな。〉
〈俺、逮捕されてみて判ったけど困った時に声をあげられる人と、あげられない立場の人がいるんだよね。そこに気づいて代弁してくれる人もいるんだけど、俺はその人達のことも知らなかった。無知ゆえに根性論と自己責任論ふりかざしてた俺が、今は全く見えてなかった人に助けられ救われてるんだよね。感謝〉

 逮捕されて初めて、無知ゆえに根性論と自己責任論をふりかざしていたことの愚かさに気づいたという高知。後悔しないためにも、我々は弱者が抱える問題を自分ごととしてとらえる想像力が必要なのだ。

最終更新:2020.04.09 01:29

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