『報ステ』安倍政権忖度CPのセクハラを文春、新潮が報道も…テレ朝内部から被害女性たちへ卑劣なバッシング

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テレビ朝日『報道ステーション』公式Facebookより


 本サイトが9月1日にスクープした『報道ステーション』(テレビ朝日)チーフプロデューサーがセクハラで更迭された問題だが、やはり今週、「週刊文春」「週刊新潮」(両誌とも7月5日発売号)が大々的に記事にした。

 更迭されたのは、“テレ朝のドン”早河洋会長が『報ステ』に送り込んだ桐永洋氏。桐永氏は昨年7月にCPに就任するや、『報ステ』の政権批判や原発報道を極端に減らし、スポーツなどをメインに。さらに、小川彩佳を番組から追放し、早河会長お気に入りの徳永有美アナをMCに起用するなど、安倍首相に近い早河会長の意向を受けて、『報ステ』を完全に骨抜きにしてしまった。

 ところがその桐永氏が8月30日、突如「3日間の謹慎」という懲戒処分を受け、『報ステ』CPから異動になった。原因は女性アナウンサーやスタッフへのセクハラ。桐永氏は複数の被害女性からテレ朝のコンプライアンス室に告発されていた。

 本サイトはこの事実を報じた上、「テレ朝が突如、処分を発表したのは、自主的に処分したわけでなく、文春が取材をかけたから」と指摘していたが、その通り「週刊文春」、さらに「週刊新潮」も動いたというわけだ。

 しかも、「週刊文春」「週刊新潮」両誌が報じた桐永氏のセクハラの中身は想像以上に露骨なものだった。

 なんと、今年4月から『報ステ』のフィールドリポーターに抜擢されていた森葉子アナウンサーを呼び出し、サシ飲み。その後、マンションまで強引についてき、エレベーターの中で抱きつき無理やりキスをしたというのだ。さらに桐永氏は部屋にまで入ろうとしてきたという。森アナはなんとか阻止してことなきを得たが、合意なしのキスは「強制わいせつ」という立派な犯罪だ。

 さらに「週刊新潮」によると、桐永氏は森氏と飲んでいる最中、「俺のバックには早河さんがいる」と自慢していたという。これは関係を迫るため、職権や社内の地位をチラつかせていたということではないか。

 しかも、驚いたことに、桐永氏がこうしたセクハラを働いたのは、森アナに対してだけではなかった。

「(セクハラの被害者は)社員から学生アルバイトまで、10人以上に及んでいたようです。複数で飲むと見せかけて実は2人きりの飲み会だったという『手口』も何度かあったそうです」(「週刊新潮」に掲載された関係者の証言)

「桐永氏は、しょっちゅう女性記者やスタッフを飲みに誘っていた。番組の最高権力者の誘いは断りにくく、やむなく応じるものも多かった。手口はいつも同じで、二人きりの席で猥談を連発。『その服エロイねぇ』と言ったり、『恋がしたい』と嘆いたり。学生バイトの女性が手を握られたこともある。セクハラが酷いという声がいくつも出ていたところに森アナの件が舞い込んできたため、怒った女性ディレクター陣がこれまでのセクハラ被害を報告し、女性スタッフ全員の聞き取り調査をコンプラ室に求めた。調査の結果、十人ほどが被害を訴えたそうです」(「週刊文春」に掲載された関係者の証言)

 さらには、昨年秋、小川彩佳アナが報ステを卒業する直前の8月、桐永氏が広島取材に同行し、小川アナに2人きりで飲もうと誘い、断わられていたことも、両誌が暴露していた。

セクハラの告発があっても、桐永CPを守ろうとしたテレ朝上層部

 ようするに、森アナの件だけでなく、女性スタッフから大量のセクハラ被害の訴えがコンプライアンス室に持ち込まれていたのだ。テレビ朝日が会社として、きちんと対処し、桐永氏を厳しく処分するのは当然だろう。

 いや、桐永氏だけではない。政権批判潰しのためにこんな問題人物を看板報道番組のCPにねじ込んだ早河会長、早河会長の側近である篠塚浩常務なども、当然、責任を問われるべきだ。

 だが、テレ朝の対応はまったく逆だった。上層部が責任をとるどころか、なんと桐永氏を謹慎3日間、BS朝日への異動で済ませてしまったのだ。しかも、その処分通達も、名前を明かさず「社員としてふさわしくない行為」という理由しか明かさなかった。

 実は、テレ朝上層部は当初からおかしかった。セクハラ被害がコンプライアンス委員会に持ち込まれたのは7月はじめだったが、1カ月以上、何も動こうとしなかった。

「セクハラが明らかになってからも、桐永さんが早河会長のお気に入りということで、上層部はなんとか守ろうとしていた。実際、篠塚(常務)さんは、注意処分だけで済ませようとしていたらしい。週刊誌が動いていなかったら、おそらくそのまま、『報ステ』CPを解任することもなかったんじゃないでしょうか」(テレビ朝日関係者)

 前述したように、相手の意志に反するキスは強制わいせつという犯罪だ。普通の企業なら、解雇されるのが普通だろう。それを早河会長の子飼いだからと、こんな軽い処分で済ますというのは、異常というほかはない。

 しかも、卑劣なのが、テレ朝上層部が、桐永氏を告発した森アナはじめ女性たちを攻撃するカウンター情報をメディアにリークしているフシがあることだ。「酔っ払った森アナが最初に誘った」「今回のセクハラ告発の裏には『報ステ』の派閥抗争がある」「桐永の路線に反発する『報ステ』旧勢力がセクハラ疑惑を仕掛けた」……。

被害女性をバッシングするカウンターは矛盾だらけの恣意的情報

 実は「週刊文春」「週刊新潮」両誌にも、これと同内容のカウンター情報が掲載されていた。

 たとえば、森アナへのセクハラについて、「週刊新潮」では「桐永氏をよく知る関係者」が、「森アナから“私桐永さんみたいな身体の大きい人が好きなんです”と言われて勘違いした」「彼女は(酔って)フラフラで放っておけなかった」「マンションの前まで行ったら、彼女から抱きついてきたので、それに応えるようにキスをしてしまった」という反論をしている。

 しかし、「女性は酔っていた」「女性のほうから誘ってきた」という情報は、性暴力の加害男性の言い訳の典型だし、森アナはお酒に強く、当日もほとんど酔ってなかったという。しかも、桐永氏がCPになって『報ステ』に抜擢されたアナウンサーで、わざわざ嘘をついて桐永氏を陥れる理由がない。

 また「週刊文春」は、『報ステ』に古舘伊知郎時代のCPで、政権批判や原発問題に取り組んできた松原文枝氏を慕う勢力が残っており、桐永氏が松原一派に「刺された」と周辺に漏らしたとの情報を書いていたが、これもまったく為にするものだ。

 というのも、今回、セクハラをコンプライアンス室に告発した女性は前述した森アナはじめ、桐永氏がCPになってから抜擢したスタッフや、桐永氏の『グッド!モーニング』時代のスタッフが大半を占め、彼女たちは松原氏とまったく関係ない。

 また、「週刊文春」も「週刊新潮」も参院選報道で静岡選挙区をめぐる菅義偉官房長官の動きを取材したVTRを、桐永氏が放送予定当日、「こんなものが放送できるか」とお蔵入りさせたことを報じており、この件を担当していたのがセクハラ被害を告発した女性たちの一人だったことを意味深に紹介していた。

 たしかに、桐永氏が官邸に怯えて参院選静岡選挙区をめぐるVTRをお蔵入りさせたのは事実で、これはこれで大問題だが、セクハラ告発とは何の関係もない。なぜなら、セクハラがコンプライアンス委員会に告発されたのは7月はじめ参院選公示の直前で、VTRのお蔵入りトラブルの起きる2週間も前のことだからだ。

 ようするに、こうした情報を流している連中は、桐永氏を守って、上層部への責任追及をそらし、逆に、安倍忖度に抵抗している『報ステ』の良識あるスタッフたちをこのセクハラ騒動を利用して攻撃しているのだ。いったい誰がそれを仕掛けているかは明白だろう。

 それにしても、自分の番組に起用している女性アナウンサーに無理やりキスをし、10人以上の女性へのセクハラが発覚したチーフプロデューサーがたった3日間の謹慎で済まされ、逆に告発した女性たちへのバッシング情報が流される。いったいこの放送局はどうなっているのか。

 こんなことでは、桐永氏が交代しても、『報ステ』がかつてのジャーナリズムを取り戻せるとはとても思えないのである。

最終更新:2019.09.07 11:59

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