不適切動画でバイトの若者だけを血祭りにあげ、訴訟表明の企業を擁護するマスコミとネットはおかしい!

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セブン-イレブン公式HP


 連日、メディアで大きく扱われているアルバイトの「不適切動画」炎上問題。周知の通り、回転寿司チェーン・くら寿司ではゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻し、カラオケチェーン・ビッグエコーでは唐揚げをフライヤーに入れる前に床に擦り付け、すき家ではお玉を股に押し当て、セブン-イレブンではおでんのしらたきを吐き出す、ファミリーマートではペットボトルの蓋を舐めるなどなど……。次から次にアルバイト従業員による“愚行”の動画がネット上で拡散され炎上、各企業が公式に謝罪コメント等を出す事態となっている。

 たしかに、動画のなかには衛生上の問題が発生するものがあり、ある程度の批判は当然だろう。しかし、マスコミやネットが年端もいかない若者のバイトをリンチのように叩くのは明らかに異常だ。

 ワイドショーは連日、この問題を大々的に取り上げ、コメンテーターらが動画をアップしたバイトをまるで殺人事件でも犯したかのように「けしからん」「なぜこんなことをするのか理解できない」と徹底糾弾を行っているのだ。ネットも同様で、〈特定されて一生ネットに晒され続ければいい〉などといって、当該バイトたちの個人情報を暴こうとする動きまででている。

 しかも、マスコミやネットがおかしいのは、バイトだけを糾弾して使用者責任、監督責任のある企業をほとんど批判しないことだ。
 
 それどころか、炎上した企業側がアルバイトに法的措置をとるなどと公言し始めると、これを賞賛し、評価する始末だ。

 周知のように、くら寿司を運営するくらコーポレーションは8日、不適切な行為をしたアルバイト2名に対して〈退職処分としたと同時に、刑事、民事での法的措置の準備に入った〉と公表。セブン-イレブンも11日、当該アルバイトについて〈今後法的措置を含む厳正な処分を検討してまいります〉とホームページ上で発表した。

 くらコーポレーションの場合、8日付文書のなかで、〈多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNSの投稿に対し、当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、抑止力とする為〉としている。ようは、訴訟によって“見せしめ”にすると公言しているのだ。

 だが、不祥事を起こした企業側が、その原因をつくったからといって、アルバイトに対して損害賠償等を請求する訴訟を起こす、なんてありなのか。仮に数億円単位の損害賠償請求を受ければ、若いアルバイトたちの人生はめちゃくちゃになってしまうし、刑事罰を受ければ社会的に過剰な制裁を受けることになる。

 だいたい、従業員の行為に対する責任の大元は雇用した企業側にある。企業にはそのバイトを雇用した責任や、教育、監督する責任があるはずだ。それを、高額の損害賠償請求をしたり刑事事件として立件させようというのは、企業が自らの責任を転嫁しようとしていると言われても仕方がないのではないか。

 ところが、マスコミもネットもそうした批判をせずに、「再発防止のために意味がある」「勇気ある行動」などと評価。また、元東京地検特捜部の若狭勝弁護士などはこの炎上騒動の後に株価が下落したことから、「株価の下落は、賠償額を考慮する材料になる。収益減との因果関係が立証されれば、かなりの額を求められる可能性がある」と煽っている(スポーツニッポン10日)。

 労働問題に詳しい弁護士はこう解説する。

「たしかに一般論としては法的に損害賠償を請求することは可能ですが、企業に損害が生じたとしても全部アルバイトのせいにできるわけじゃない。とくに、株価の下落までを理由とするのは相当に無理がある。株主はいろいろなことを考慮して行動しているわけで、動画との因果関係を立証するのは簡単じゃないと思いますよ。そもそも、バイトが至らないことをしたらすべてその人間のせいであって、会社は悪くないんだ、という風潮は問題です。民法上の使用者責任は業務上の故意または過失による第三者への損害が対象ですが、今回のケースでも、社会的には雇用した企業に責任があるはずです」

問題の本質は、企業のコストカット、非正規雇用への依存だ

 実際に複数の動画の状況を確認すると、周囲に社員などの監督者がおらず、バイトに現場をまかせっきりの時間帯があったことが伺えるが、これは企業側によるコストカットの結果、起きていることだろう。言い換えれば、騒動を受けて信頼を落としたのは、そうした非正規労働者に依存しているという構造的問題が原因であって、損害賠償等をアルバイトに請求しても抜本的な解決にはならない。

 事実、今回の“バイト不祥事”で騒動となっている企業のなかには、以前から“ブラック労働”の実態が指摘されてきた会社が少なくない。

 たとえばセブン-イレブンは、見切り販売の妨害をはじめとしたフランチャイズ加盟店主に対する過重負担や、アルバイトを低待遇で酷使し商品の買い取りノルマを課すなどの“ブラックバイト”を理由に、2015年の「ブラック企業大賞」を受賞。すき家でも数年前に「ワンオペ」と呼ばれる従業員ひとりで店舗を切り盛りする体制が問題化し、昨年5月には元アルバイトの男性と家族から、3店舗掛け持ちの長時間労働による睡眠不足で交通事故を起こし、精神的苦痛を受けたとして鳥取地裁に提訴された(原告男性は今年1月に被告「中四国すき家」と和解)。

 他にも、バーミヤンを運営するすかいらーくグループの「すかいらーく」や、ファミリーマートでも従業員の過労死などが起きている。

 外食産業、コンビニ大手等では、アルバイトは責任や労働と見合わない安い時給で働かされているところも少なくない。そのストレスが、相次ぐ「バイト不祥事」の遠因となっているのではないかという疑念も頭をもたげてくるのだ。

 いずれにしても、安価な労働力を求め、バイト等の非正規労働者に過重な責任を担わせているという構造的問題への視線が、いま、SNSやマスコミで巻き起こっている“リンチ”のなかにはまったくない。そもそも、不安定雇用であるバイトに対して、正社員並みの愛社精神や職業意識を求めるということ自体に無理があると思うが、そういった視点の意見もほとんど出てこない。

 ネットでは以前から、権力者や大企業よりも、無名の個人の不祥事やトラブルをあげつらって血祭りにするという“問題の軽重の逆転”がみられるが、テレビなどのマスコミが企業の責任を追及しないのは、明らかにバイトが不祥事を起こした企業が大口のスポンサーだからだろう。つまり、政権批判や大企業批判ができないため、そのかわりにお手軽な“バイト叩き”に精をだしているにすぎない。

 しかし、「バカなことをしでかしたアルバイトを成敗してやった」と悦に入るだけでは、今後も同じようなことが繰り返されるだけだ。ましてや不祥事企業をかばい、軽い過ちをおかしただけのバイト個人に重たい法的責任を問おうとする動きを歓迎するのは、労働者が自らの首を自らで締めるようなもの。眉をひそめるような行為が相次いでいで話題になっているなかだからこそ、冷静にその背景を検討しなければならない。

最終更新:2019.02.13 01:46

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