ユースケ・サンタマリアが語る“うつ体験”「体がダルくなって、飯が食えなくなって…」不調を脱することができた理由とは?

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NHK土曜時代ドラマ『悦ちゃん』 番組サイトより


 7月にスタートしたドラマ『悦ちゃん』(NHK)で現在主演を務めているユースケ・サンタマリア。そんな彼がウェブサイト「文春オンライン」7月15日付のインタビューで、精神面での疲労から来る体調不良で悩んでいた過去について振り返っている。

「僕は、正確には鬱ではなかったんです。鬱って本当に大変で、まず仕事なんてできませんからね。家から出られないし、顔付きだって変わってしまう。僕が鬱だなんて言ったら、本当に鬱になった人、それを克服した人に申し訳ないですよ。とはいえ、ストレスが原因で、30代の8年間は本当に体調がよくなかったのも事実。鬱未満なんだけどひどく調子が悪くて、仕事が大変という人も少なからずいる」

 2004年、彼は体調不良を理由に少しの期間だけ仕事を休んでいるが、その際、身体は一目見ただけでわかるほどガリガリに痩せこけていた。しかし、その休業の理由については明かされなかったため、一時期重病説までささやかれたこともある。

 ユースケは、吉田豪『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)のなかでストレスが原因のこの体調不良について詳らかに語っているが、そもそもの体調を崩したきっかけをこのように語っている。

「考えたら、単純に仕事がすごいつまんなかったっていうのがあって。その前が、謎のよくわからないデビューの仕方をして。バンドで全然売れなかったんだけど、なんもわかんないうちからドラマとか映画とか出るようになったりして、どんどん忙しくなってきて仕事もおもしろかったんですよ。その頃って結構いい作品が多くて。30歳ぐらいまではすごくよかったんですね。それと比べてたわけではないんだけど、この話おもしろくねえな、みたいなのが5本ぐらい続いたんですよ。そしたら体がダルくなってきて、飯が食えなくなってきて。すごい下痢で。八カ月、硬い便が出なかったんですよ。だからそのとき、すごく大きい仕事いっぱい断ってます」

 こういった仕事の躓きに加え、「芸能界」という特殊な場所にいる彼は、「ここは自分の居場所ではない」という思いが拭えず、据わりの悪い場所でなんとかがんばり続けなくてはならないというのも心に大きな負担を強いた。

「お芝居したり、タレント業みたいなことも楽しかったんですよ。いまも楽しんでるけど、どこか芸能人にはなれないなっていう。要は一般人がなぜか芸能界にいるっていう感覚かな。完全なこの世界の住人にはちょっとなれないなっていうのはいまだにすごい思うし。(中略)自分にはトゥーマッチな現場で、でも平気な感じでいなきゃいけないし」

ユースケ・サンタマリアが体調不良を克服できた理由とは?

 その結果、ご飯もまともに喉を通らないような状況になってしまったわけだが、そういった時期につらかったのが、体調の悪そうな彼を励まそうとする周囲の人々の善意だったという。

「「どうしたの? ユースケさん! 美味い寿司屋あるから行こうよ!」って、とにかく俺を元気づけたいから。「気分悪いから寿司なんて一番食えないんだよ」って話なんだけど、でもそれ言うと向こうが「あぁ……そう」みたいな感じで二度と連絡ないですから。「せっかく人が元気づけようとしてやってるのに断りやがった」「後輩のくせに」とか思われちゃう。俺は飯が食えないし、人と会ったりするテンションじゃないんだよ、動けないんだもん」

 そんな状況のユースケが立ち直ることができたのは、発想を転換させたのがきっかけだった。

「いつの間にか、体調が悪いことに疲れてくるんですよ。で、もうどうでもいいか、みたいな。体調悪かったら悪いって言おう。そこで帰らせてもらおうぐらいの感じで現場に行くようになって、いつの間にか楽になってたのかな? いまはそういう状態ではないって言えるようになりました」

 良い意味での開き直り。それがだんだんと彼の心を救ってくれた。その結果、いまでは折りに触れてつらかった時期のことを話すようになっているが、そういった機会をつくることができなかったのは失敗だったと振り返る。

「それが長引いた原因だと思う。そういうことを話しちゃいけない、みたいな。俺はこういう話すきなんだけど、(中略)でも「ちょっとその話なしで」みたいな。番組的にね」
「当時はCMっていうのもデカかったですね。特に俺の場合、パブリックイメージとかもあって、鬱じゃないけど、鬱みたいな感じで書かれちゃうとイメージ的にも変に思われちゃう」

 無理をしないで、なるべく楽に生きる──。言うは易しでなかなか実行に移すことは難しいが、しかし、精神的な健康を保ちながら生きるのはこれが一番なのかもしれない。

 漫画家・田中圭一によるエッセイ漫画『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)が話題を集めたのは記憶に新しいが、そのなかに登場する大槻ケンヂもまた、現代人がどうしても心にかけてしまう「無理」な負荷との付き合い方を学んで病を乗り越えたひとりだ。

大槻ケンヂや内田樹も「無理をしない」ことで心の病に打ち勝った

 彼がだんだんとおかしくなっていったのは、あまりに若くして成功してしまったのが原因だった。24歳で武道館のステージに立つなど大ブレイクを果たすも、もともとネガティブな思考が強かった彼は「こんな状況がずっと続くわけがない」という心配と不安に苛まれるようになり、そのうち「自分はエイズなのではないか?」と怯える心気症になってしまう。一番ひどい時期は、カタカナの「エ」の字を見ただけでパニックになってしまうような状況だったという。

 そんな状況を変えたのは心療内科で受けた診療と投薬。そして、本で出会った「森田療法」であった。彼は心のありようを変えてくれた発想法の変化をこのように語っている。

〈それは仏教の考え方をとり入れた治療法で、「不安」も「葛藤」もなくすことはできない。人間生きていく限り、老いも病気も死もさけられない。だから、「不安」はあるがままにすておいて、今自分がすべきことをすればいい。そのうえで、成功しても失敗してもその人生はまちがいではない。ここでボクは自分を俯瞰する視点を持てるようになって、一気に気が楽になりました。「不安」は消えることなく、時々ちょっかいを出してくる困った存在だけど、いっしょに歩くことが可能なヤツだ──そう思えるようになってきたんです〉(筆者の判断で句読点のみ付け加えた)

 内田樹も「がんばり過ぎた」ことが原因で心の病も患ってしまったひとり。そのきっかけのひとつは阪神淡路大震災だった。この地震により家は半壊状態になったうえ、職場である神戸女学院大学も復旧作業を余儀なくされる。そのうえシングルファーザーとしての子育てが重なり、震災以降馬車馬のように働く日々が続くことになる。そして、地震発生から半年の月日が経ち、ようやく家に帰ってきたときに変化は起きる。

 落ち着いた日々を取り戻すと同時に心は病み始めていく。ちょっとした音にも震災のことがフラッシュバックして恐怖を感じて不眠状態になり、無理に眠ろうとして服用した睡眠薬により授業中も記憶が飛ぶようになってしまう。そんな生活が続き、自己否定の感情が心を蝕んでいく。

 そんなとき彼を救ってくれたのは、趣味の合気道だった。合気道は試合に勝つために負荷をかけて練習し、頭にも身体にもストレスをかけるといった一般的な競技スポーツとは違い、むしろ、脳を休ませ、身体がどう動きたいのかを見つめる武道。心を休ませ、身体が心地いいと感じることを優先的にしてあげるという生活の送り方を合気道から学んだのだ。自分の心に負荷をかけないような生活を心掛け、無理をしない生活の送り方を会得することで心の病を寛解させていった。

 本稿冒頭にあげた「文春オンライン」のなかでユースケは、最近の役者としての仕事についてこのように語っている。

「僕ももう「なんでもやります!」みたいな歳でもないので、出る作品もすごく選ぶようになりましたし。というのも、つまらない仕事していると、如実に体調に出るんですよ。ストレスが影響して、心身ともに蝕まれてしまうので、今はもうできるだけ自分が好きなことだけをするようにしています」

 やりたくない仕事だって食べていくためにはやらざるを得ないこともあり、みんながみんなこのような仕事観で生活できるわけではないかもしれないが、一度その思い込みをはずすことは、とかく真面目になんでもこなしていこうとしがちな現代人にはひとつ参考になる生き方なのではないだろうか。

最終更新:2017.12.06 06:12

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