松尾スズキが『夫のちんぽが入らない』著者に自身の夫婦生活を吐露「妻は僕が仕事した女優のSNSを監視している」

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大人計画 OFFICIAL WEBSITEより


 話題の本『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)の勢いが止まらない。先月18日の発売日から1週間足らずで部数は6万部を超え、現在でも書店では先日発表されたばかりの芥川賞・直木賞受賞作品(山下澄人『しんせかい』、恩田陸『蜜蜂と遠雷』)に負けずとも劣らないスペースで大きく展開されている。

『夫のちんぽが入らない』は、主婦ブロガー・こだま氏による実体験をベースとした自伝的私小説。物語は彼女が大学に入学した年の春、後に夫となる彼と出会うところから始まる。順調に交際を重ねていく2人だが、初めてベッドを共にしたとき問題が起きる。本のタイトル通り、ちんぽが入らなかったのである。初体験の相手とは問題なくできたのに、夫のちんぽだけが入らない。ジョンソンベビーオイルを塗っても、激痛が走りシーツが血まみれになるだけでどうしてもダメ。それは結婚後も変わらず、結果として夫は風俗に、そして彼女は不倫に走るなど悩み苦しみながらも、最終的には2人だけの夫婦のかたちを見つけだしていくという物語だ。

 なかなかレジに持って行きづらいタイトルとは裏腹に、読後は読んだ人がに自分の家族観や夫婦観を再考するきっかけにもなる趣深い本で、読者層は老若男女問わず広がりを見せている。

 そんななか、「SPA!」(扶桑社)2017年1月31日号に掲載された松尾スズキ氏とこだま氏との対談が話題となっている。松尾氏はこの小説をいち早く見出して、昨年11月15日付毎日新聞夕刊の書評コーナーで紹介し、出版に際しても帯に推薦文も寄せている。

 小説のなかでも現実でもこだま氏は夫の風俗通いを見て見ぬ振りをし、加えて、実は現在でもなお夫に本を書いていることを打ち明けていない。そのように、お互いが普段なにをしているか明かさない関係性を良い意味で「兄妹のような関係」と彼女は語るが、その一方で松尾家は180度真逆の関係のようだ。

〈松尾 奥さんが家で執筆しているのも気づいていないんでしょ? よっぽどおおらかというか無頓着なんだね。
 こだま よくも悪くも、お互いのことには全然踏み込まないんですよ。
 松尾 うちの妻はすごく踏み込みますよ。僕が演出した女優のTwitterは全部チェックしてますから(笑)。〉

 2014年に20歳年下の一般人女性と再婚した松尾氏だが、仕事で関わった女優との交流すらすべて妻に管理され、しかもそれを笑いながら語るなんて……。

 毒々しい作風からはずいぶんかけ離れた私生活を送るようになってしまったようだが、実は少し前に出版された岡村靖幸氏の対談本『岡村靖幸 結婚への道』(マガジンハウス)に登場した際にも松尾氏はこんなことを語っていた。

「僕は風俗はもう二度と行かないんです。絶対に。断じて行きません。マジです。声を張って言います。行・き・ま・せ・ん・か・ら!」
「でもね、風俗店のホームページだけは面白いからよく見るんですよ。でね、あるとき、嫁がネットで検索していて履歴でそれが出てきちゃった。「まだ行ってるの!?」ってもう激怒ですよ。「いやいや、行ってないから! 風俗嬢を頭の中で育ててるだけなの! 脳内でマネージメントしてるだけだから!」」

 物事を常に斜めから切り取り、それを苦みいっぱいの物語に詰めたり、自嘲的な笑いに昇華する。そういった彼ならではの作品づくりは、いわゆる世間一般の家庭的幸せとは相性が悪いようにも思われるが、松尾氏が再婚を機に生活を一変させたのには実は理由があった。前掲書のなかで彼はこのようにも語っている。

「いままでは、思うがままにいかないのなら、せめて「型」というのを破りたいと走ってきたんです。成人式にも出てないですし、そういうものはすべて「FUCK!」だと。でも、50を過ぎて、「逆に型にはまってみよう」と思ったんです。日常のモラルにはまってみることで、頭の中の反モラルみたいなものが活気づくこともあるんじゃないかなって」

 この私生活すべてを捧げた実験は、もうすでに実を結び始めているのかもしれない。先ほど述べた毎日新聞掲載の『夫のちんぽが入らない』書評で彼はこのように綴っている。

〈これを読んで想像したのは、「結婚」という名の怪我をしたか弱い生き物の姿だ。いろんな夫婦をこれまで見て来た。しかし、完璧な夫婦など出会ったことがない。夫婦に会う。そして、別れるときいつも、羨ましい夫婦だなという感情と、うちはああじゃなくてよかったという感情が、自分の中でもつれる。なんのことはない。我が結婚生活の抱える傷と、彼らの傷を照らし合わせて、こっちの傷の方が浅い、でも、数が多い、などと一喜一憂しているだけなのである。
 ちんぽが入らない。字面はあくまでこっけいであるが、それだけで「夫婦」という生き物は血まみれになる。その姿は、世の中のあらゆる夫婦の痛みを肩代わりしているようで、とても痛々しい〉

 一見幸せな小市民的幸せをのろけているように見せて、その裏では彼もまた結婚生活に悩み、そして、自身が結婚生活で抱えた傷を冷静に見つめている。「逆に型にはまってみよう」という思考実験の果てに松尾氏のなかで生まれた創作の種が、どんな作品に昇華されるのか楽しみだ。
(新田 樹)

最終更新:2017.11.15 07:24

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