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司忍6代目山口組組長が塀の中で読んでいた本とは? 府中刑務所の配本管理担当が受刑者購入図書リストを暴露
『ヤバい!刑務所体験 有名人の獄中生活』(宝島社)
依然として緊迫した状況が続く、6代目山口組と神戸山口組の対立抗争。8月9日には、神戸山口組系の事務所に6代目山口組系の組員が運転したトラックが突っ込んだり、また10日には警察が神戸市の山口組総本部の近くに捜査員が情報収集や監視にあたるための「特別警戒所」を開くという全国初の措置がとられるなど、いまだに緊迫した状態が続いている。
そんななか、少し珍しい情報が流出した。6代目山口組の組長・司忍組長が獄中で読んでいたとされる本のリストが公開されたのである。
司忍組長は銃刀法違反により、2006年から11年にかけて府中刑務所で過ごしているが、その間に府中刑務所の図書工場に配属され、受刑者の配本管理をしていた元受刑者の男が、取っておいたメモを『ヤバい!刑務所体験 有名人の獄中生活』(宝島社)のなかで暴露している。
読書家と言われていた司忍組長はいったいどんな本を読んでいたというのだろうか?
150冊近くある膨大なリストのうち、まず目につくのは歴史に関する本だ。『宮本武蔵』(吉川英治/講談社)、『新書太閤記』(吉川英治/講談社)、『徳川家康』(山岡荘八/講談社)などが目立つ。
このへんは暴力団組長らしいセレクトともいえるが、興味深いのは、映画に関する本が多くあるという点である。いわずと知れた1972年公開のフランシス・フォード・コッポラ監督作品の原作本『ゴッドファーザー』(マリオ・プーヅォ/早川書房)といった、おそらく「座右の書」なのだろうというものから『天才 勝新太郎』(春日太一/文藝春秋)といったいかにもなものがあるが、目を引くのは多くある映画パンフレットの数々。しかも、そのラインナップがかなり意外なものばかりなのだ。ミュージカル映画の『マンマ・ミーア!』、アカデミー賞外国語映画賞を獲得した滝田洋二郎監督の『おくりびと』、シャネルの生涯を描いた『ココ・シャネル』(08年と09年で2年連続同じタイトルの映画が公開されているが、これはシャーリー・マクレーン主演の08年版の方か?)、草なぎ剛が盲目の按摩を演じた心が和むラブストーリー『山のあなた 徳市の恋』など、なんともイメージとかけ離れたセレクトである。
また、司忍組長が定期購読していた週刊誌は「アサヒ芸能」(徳間書店)、「週刊大衆」(双葉社)、「週刊実話」(日本ジャーナル出版)の3誌。ヤクザ報道に強い老舗週刊誌である。そして、ときどき購入していたのが、“ちょいワル”オヤジのバイブルであるファッション誌「LEON」(主婦と生活社)だ。司忍組長といえば、麻生太郎氏もその服装を必死で真似ているほどのファッションリーダーとして知られているが、そのネタ元はやはり「LEON」にあったのか。ちなみに、購読していた新聞は「朝日新聞」。実は、リベラル寄りの人なのだろうか。
もちろん、リストは元受刑者の男が一方的に流したものであり、完全に本物かどうかは断定できないが、もし司組長がこういう本を読んでいたとしたら、かなり興味深い。
この『ヤバい!刑務所体験 有名人の獄中生活』には、司忍組長の読書記録のみならず、「本と刑務所」にまつわる興味深い情報が他にも掲載されている。先ほど、司忍組長の定期購読している週刊誌が「アサヒ芸能」「週刊大衆」「週刊実話」の3誌であるという情報をお伝えしたが、この3誌は府中刑務所における人気週刊誌トップ3でもある。
やはり、組関係者の人は獄中でもできる限りの情報収集に努めようとするのだろうか、発売日に200冊納本することもあるという。ただ、どのページも好き勝手に読めるわけではない。刑務所に入ってくる本は、事前に図書係が検閲して塗りつぶしたうえで受刑者に届けられる。ヤクザ記事はこの検閲対象に入るため自由には読むことができないのだ。
ところで、一般社会で週刊誌といえば、やはり「週刊文春」(文藝春秋)と「週刊新潮」(新潮社)が2大看板となるわけだが、これらはどうなのかというと、シャバとは逆でこれらの週刊誌はまったく人気がない。2〜3冊入ればマシなほうというぐらいの不人気雑誌なのだそうだ。刑務所と一般社会では読書傾向が真逆なようである。
しかし、これがマンガとなると話は変わる。刑務所ではマンガの購入も可能なのだが、そこでダントツ人気なのが『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)。そして、一番人気のマンガ週刊誌も、もちろん「週刊少年ジャンプ」(集英社)となる。
先ほどの読書傾向から見れば、『土竜の唄』(高橋のぼる/小学館)や『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平/小学館)あたりの裏社会をテーマにしたマンガが人気を集めそうなものだが、もちろんこういった作品も人気はあるが、それでもやはり一番人気は『ONE PIECE』なのである。刑務所に入ったときは一切興味がなくても、まわりの受刑者が皆読んでいるため、その流れで読み始め、出所するときには立派な『ONE PIECE』マニアになっていることも珍しくないという。
インターネットなどもちろんできなければ、テレビも自由に見ることは許されない刑務所において、読書は息抜きとして重要な位置を占めている。
現在、出版業界の返本率の平均は4割を超えている。書店に並んだ本の40%は買われることなく出版社へ返されている状況だ。深刻な活字離れが進み、もはや打開策すら見出せない状況にあるわけだが、そういったことを考えると、もしかしたら、もっとも熱心に「本」と向き合っているのは、塀の中にいる人々なのかもしれない。
(新田 樹)
最終更新:2017.11.24 06:34
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