ワイドショーのドローン少年叩きは異常だ! テレビ局も同じことをしてるくせに…

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威力業務妨害容疑で15歳の少年が逮捕(YouTube「FNNnewsCH」より)


 15歳の少年が、東京・浅草神社の三社祭でドローンを飛ばすと示唆したとして威力業務妨害の容疑で逮捕された事件で、先日からテレビ局がヒステリックな金切り声をあげて、容疑者である少年に糾弾の大合唱をしている。

 たとえば、5月21日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、司会の宮根誠司がこう声を荒げた。

「自分が撮れない映像を撮って、それをたくさんの人が見て、さらに現金化できるんだぞって、だったら何をしてもいいっていう。もう15歳にもなって、こういうことをしてしまうのも問題ですよね!? 大問題ですよ、これ!」
「もうね!こんなことやってること自体がもうね! 人として良いのか悪いのかって判断がついていないこと自体が!」

 まるで連続殺人犯でも追及するような激しい口調に、観ているこっちが「このヒト、一人で何を興奮してるんだろう?」と引いてしまうくらいだったが、しかし、他局も宮根ほどではないにせよ、重大犯罪扱いは同様だった。

『スッキリ!!』(日本テレビ系)では、MCの加藤浩次が「この子、勘違いしてる、この子自体が。まずいと思います」と断じ、コメンテーターの武井壮も「不法者とエンタテインメントを一緒にするような風潮が危険だなと感じる」と応じた。

 また、『とくダネ!』(フジテレビ系)では、笠井信輔アナが「社会をなめている。これで通るとほかの少年に思わせてはよくないですよ」と吐き捨てた。

 しかし、ほんとうにこの少年は、そこまで糾弾されるようなことをしたのか。はっきりいうが、今回の少年の行為は犯罪でもなんでもない。

 先述したように、少年は14日夜~15日未明にかけて、浅草三社祭でドローンを飛ばすことをほのめかす内容をネット配信したとして、21日に逮捕された。15日未明に動画を観た人が浅草署へ通報。警視庁から連絡を受けた主催者の浅草神社奉賛会は警備を強化したほか、境内などにドローンの持ち込み禁止を伝える40枚の張り紙をするなどの対応を余儀なくされ、19日に被害届を出したのだという。

 だが、少年は「明日、浅草で祭りがあるみたいなんだよ。祭り行きますから。撮影禁止なんて書いてませんからね。祭りは無礼講ですよ」などと話しただけで、ドローンを飛ばすとは一言も言っていない。

 また、仮に少年がドローンを飛ばすと言っていたとしても犯罪にはならない。なぜなら、現行法ではドローンを飛ばすこと自体は違法ではないし、予告についても「ドローンを落とす」と言っていたら別だが、「飛ばす」と予告しただけでは威力業務妨害にはならないからだ。これが犯罪になるなら、「車で行く」と言うだけで「車で人を轢く」と言ったと同じだとして威力業務妨害が適用されてしまう。

 しかも、予告動画を配信したものの、少年は祭りの当日(15日〜17日)は自宅にいたという。

 いったいこれのどこをどう解釈したら「威力業務妨害」にあたるのか。今回の警視庁の逮捕は明らかに不当であり、公判維持はもちろん立件さえ難しいだろう。

 実際、この逮捕には当の新聞、テレビの記者も驚きを隠せなかったと言う。

「第一報が飛び込んできたときは、記者クラブでもちょっと信じられない、という空気でしたね。見せしめといっても、容疑に無理があるし、15歳でしょう。手を焼いていたのは知ってましたが、予防拘束で十分対応できますからね。まさかここまでやるとは思わなかった」(警視庁記者クラブ担当記者)

 新聞記者だけではない。たとえば、21日朝の『とくダネ!』。逮捕の一報が入ってきたとき、菊川怜は驚いたように「逮捕……?」とつぶやき、小倉も「何の罪状なのかな?っていうのが気になってたんですが。威力業務妨害……」と驚きの声をあげていた。これが、マスコミ関係者の本音だったはずだ。

 ところが、警察が正式に逮捕を発表し、事態の詳細を把握したとたん、マスコミの態度は豹変。冒頭のような少年糾弾大会を開始したのだった。

 もちろん、どの番組も不当逮捕に対する批判はほとんどなし。それどころか、警察を後押しするような専門家の解説まで垂れ流した。

 たとえば、『とくダネ!』では、元検事の若狭勝が「逮捕は、逃走や証拠隠滅の可能性もあって、これまで注意を何度も受けていながら反省の態度が見られなかったためでしょう。ドローン規制の法律の必要性をPRし、模倣犯を出さないようにという狙いもある」と、法律のPRで逮捕するのは当然、というような無茶苦茶な論理を主張。

『スッキリ!!』では、菊池幸夫弁護士が「実際に現場にドローンを持っていって、さあ飛ばすぞというところまでは行っていない。ふつうは、もっと現場に迫った段階での逮捕。何回も繰り返していることが、伏線となっている。事前に予防しようという意識、何か起きたら困るという意識が警察のほうで非常に強かったんだろう」と、逮捕の経緯が異例だとしながら、逆に警察側の意図を忖度する始末だった。

 唯一の批判は、TBSのニュース番組で、元検察幹部の「逮捕はやりすぎ、せいぜい予防拘束ではないか」というコメントを紹介したくらいだろう。

 まさに、お上が動いたとたん、右へ倣えしてしまう、いまのマスコミのだらしなさが露骨に出たかたちだが、しかし、今回はそれだけではすまなかった。

 ワイドショーは、こんな誰の目にも明らかな不当逮捕の事件で、ただドローンを飛ばしていただけの少年に対して、プライバシ―暴きをはじめたのだ。

『スッキリ!!』では、「学校にラジコンやゲームを持ってきていた」「先生に怒られても口答えするなど反抗的だった」「友だちがあまりいなかった」といった小学校の同級生のコメントを紹介、『とくダネ!』では少年が小学校の卒業文集に「生まれ変わったら死神」と書いていたことを、「この言葉の意味するものは……」などと大げさに取り上げた。

 ほかのメディアでも、逮捕された少年の両親が離婚し、母親と父や違いの姉、妹がいることや、難関私立中学に合格するも中退していること、心療内科で診療した過去があるなどのプライバシーを暴きたてていた。

 さらに、「少年の配信した動画を観る者も共犯だ」と言いながら、少年がネット上にアップしていた動画を流用し、それを繰り返し放映した。たとえば家族にパソコンを取り上げられ、「なにに迷惑かけてんだよ。オレからパソコンをとったら何が残るんだ。これが生きがいなんだよ」と口論する動画。逮捕直前の「祭り、行きます!」と出かけることを宣言する動画。あるいは、少年が警察に食ってかかる動画……。

 そして、最後はお決まりの「ネットにハマった若者」批判だ。現在は無職でネット配信とその反響だけが生き甲斐で、ドローン活動の資金は動画配信の収入で得ていた。そして今回の“動機”もネット上の反響を呼ぶために行為がエスカレートした。そんな物語をしたてた上で、「単なる目立ちたがり屋の幼稚な行為」「ネット依存」「強い自己承認欲求、社会をなめている」と結論づけたのだ。

 この少年に対するマスコミ報道の異様さは、先月、同じくドローンを首相官邸の屋上に不時着させたとして威力業務妨害で起訴された40歳男性の報道と比較すれば一目瞭然だ。

 そもそもこの起訴自体も、官邸という日本の最高権力に歯向かった報復起訴だといわれているが、しかし、このときのマスコミは男性の“動機”や“背景”にはほとんど踏み込まなかった。

 それは本サイトでも既に報じたが、男性が元自衛隊員であり、反原発を訴えるためにドローンに福島の放射性汚染土を搭載していたからだ。こうした動機や背景を報じることは、原発推進を掲げる現政権にとっては不都合であり、メディアは政権に睨まれることを恐れ自粛した。そして「単なるアブナい男」とのレッテルを貼り、事実上、闇に葬った。

 それが、今回の15歳の少年に対して、洪水のような勢いでプライバシー暴きの報道を繰り広げたのは、政治的な意味合いがなく扱いやすい上、数字がとれるからだろう。こんな無節操なマスコミ、テレビ局に果たして、少年を糾弾する資格があるのか。

 そもそも、彼らの少年への批判を聞いていると、実はすべて自分たちに巨大なブーメランとして返ってくるものばかりだ。

 たとえば、宮根は冒頭で紹介した発言に続いて、少年が川崎中1殺害事件の、被害者の通夜や容疑者宅から配信しようとしたことをあげて、こう声を荒げた。

「上村くんのお宅に行って、そんなことやって、何になんねんと。ご遺族の方や、自分自身をふりかえったときにどんな思いやねん、そういう感性がないんか」

 信じがたい話だが、この男は自分たちの番組が事件が起きるたびに、加害者や被害者宅の自宅前に押し掛け、葬儀会場前から中継していることをすっかり忘れているらしい。

『とくダネ!』も同様だ。「少年はなぜ生中継を続けるのか?」などと疑問を呈していたが、当のフジテレビは、萩原流行の妻の会見で生中継を強行して締め出されたではないか。

 彼らは少年のことを「人の迷惑をかえりみずに、ネット上で注目を集めるためにドローンを飛ばしている」と批判するが、自分たちも震災のたびにこぞってヘリコプターを飛ばし、「音がうるさくて助けを呼ぶ声が聞こえない」と問題になっている。

 ようするに、ネットで注目を集めるために人が集まるところへドローンを飛ばそうとする少年と、視聴率狙いで数字がとれる事件現場に大挙して押し掛けカメラを向けるマスコミ、両者の間に本質的な差はないのだ。

 いや、権力にはまったくさからえず、弱い者いじめばかりしているマスコミに比べれば、当局から警告を受けても頑としてつっぱね、不当逮捕されてもきっぱり犯行を否定したこの15歳の少年のほうが、はるかにマシなのかもしれない。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.05.25 11:38

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