急増! 知られざる「ひきこもり主婦」の実態…彼女たちを追いつめるものとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
otonanohikikomori_01_150210.jpg
『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』(講談社)

 ひきこもりは若者特有のもの──そんな社会の思い込みを打ち砕き、「40歳以上のひきこもりは100万人以上」という“ひきこもりの高齢化”を昨年『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』(講談社)で明かした、ジャーナリストの池上正樹氏。その衝撃的な内容で本は大きな話題を呼んだが、池上氏は先日発表したレポートでも、隠されたひきこもりの実態を明らかにした。それは、「主婦のひきこもり」という存在だ。

 そのレポートとは、「週刊朝日」(朝日新聞出版)1月30日号に掲載された「見えない『ひきこもり主婦』たち」。ここで紹介されている主婦たちがひきこもった原因は、じつに多岐に及ぶ。

 たとえば、上司から受けたパワハラが原因で会社を退職し、その後もパワハラ体験を引きずり、家族の前では「普通の母親」を振る舞いつつも実態は家から出ることもできずにひきこもり状態になっている女性。あるいは、幼少期に受けた心の傷が癒えぬまま結婚したことで〈家族以外の人に心を閉ざし、社会やコミュニティから孤立している〉女性。夫の転勤によって海外に移り住み、現地の“駐在員妻のママ友コミュニティ”に入れずにひきこもってしまった女性……。

 また、前述した『大人のひきこもり』でも、ある主婦のひきこもり体験が紹介されている。ひきこもってしまったのは、32年間公務員として働いてきた50代の女性。彼女は長男が就活に失敗したことをきっかけに〈家からほとんど外出できずに、ひきこもり状態〉に。この女性は医療保険にかかわる窓口相談などに携わってきたことから、バブル崩壊後、就職できなかったことを理由に自殺した若者たちや、うつに悩む人などを数多く目の当たりにしてきた。それゆえ、長男の行く末を考えると心配と不安に押しつぶされ、うつ状態になった。〈子どもより、私が壊れてしまった〉のだ。

 そもそも、家庭をもった女性はうつになりやすいと言われている。専業主婦の場合は育児に追われ社会から孤立することによって塞ぎがちになりやすく、仕事をもっていても家事と仕事の両立というハードワークから心身ともに体調を崩す女性も多い。その結果、ひきこもりになる……そうしたことは想像に難しくないが、その問題はこれまでクローズアップされることがなかった。

 じつはこうした「ひきこもり主婦」の存在が問題にされてこなかったことには、理由がある。まず、最後にひきこもりの数が発表されたのは、2010年の内閣府調査。ここで、ひきこもり者の人数は約70万人、予備軍をふくめると225万人にものぼるという結果が発表されたが、この調査では「自宅で家事・育児をすると回答した者を除く」としていた。すなわち〈結婚した女性がひきこもると想定されていない〉わけだ。そもそもこの調査は39歳以下が対象で、いまから5年も前のもの。全体の割合でいえば女性のひきこもりは3割とされているが、現実にひきこもり主婦は〈潜在的にはかなりの数に上るのではないか〉と池上氏は推測している。

 そして、「週刊朝日」のレポートで目を引くのは、“優等生であるために、ひきこもりになるケース”だ。その例を紹介しよう。

〈30代まで社会人経験がなく、2人の子を育てる専業主婦〉だったある女性は、日本に根強く残る“妻である自分は夫の所有物”という価値観に縛られていた。そのため、どんなに理不尽で身勝手な夫からの要求にも反論ができず、いつも言いなり。深夜に「迎えにこい」と言われればそれに従い、眠る子どもを抱いて車を走らせ、それでも壁にドアをぶつけてしまったら夫から殴られる……。夫の顔色を窺ってばかりの生活の果て、彼女はパニック障害を発症してしまった。

 夫に従わなくてはという気持ちから、強いストレスを溜め込んでしまう。──彼女はその後、自分のやりたいと思うことを見つけることで元気を取り戻し、ついには夫との立場も逆転。〈(彼女が)深夜まで飲み、夫に車で迎えに来てもらうまでになった〉というが、こうした古い男女の価値観からひきこもりに陥ってしまうのは女性特有といえるだろう。もちろん、女性自身が規範にとらわれない考えを身につけることも必要だが、男性の意識の変革なしには、このようなケースを解消することは難しい。

〈夫の口から何かの拍子にポロリと飛び出す「誰のおかげで食べさせてもらってると思うんだ!」という常套句がある。「よい妻」「よい母」は男性にとっての都合のいい幻想に過ぎないのに、社会は妻がひきこもることをこぞって強制してきたといえないだろうか〉(池上正樹氏「週刊朝日」のレポートより)

 さて、こうして「主婦のひきこもり」例を見ていくと、あることに気づく。わたしたちがもっともよく知っている「ひきこもり主婦」は、雅子妃ではないか、と。昨年10月、11年ぶりとなる宮中晩餐会に出席した雅子妃だが、長く患っている適応障害はまだ全快にいたってはいないという。この間、雅子妃はたびたび「公務に参加しないくせに、娘の愛子さまをかまってばかりだ」とバッシングにさらされてきたが、世間の声という強いストレスのなかでは、治るものも治らないだろう。

 池上氏は、ひきこもりの特徴をこのように綴っている。

〈これ以上傷つけられたくないし、相手を傷つけたくもない。空気を読みすぎて周囲を気遣いすぎ、迷惑をかけることを忘れ、疲れ果て、社会から離脱していく。そんな“諦めの境地”が、ひきこもり当事者たちには共通している〉(「週刊朝日」より)

 一般社会だけでなく皇室の世界でも生じている、ひきこもり主婦という問題。解決の糸口を探るためにも、その実態調査が待たれるところだ。
(田岡 尼)

最終更新:2018.10.18 03:13

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

急増! 知られざる「ひきこもり主婦」の実態…彼女たちを追いつめるものとは?のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ひきこもり主婦田岡 尼障害の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍首相の「野党は年金不安煽るだけ」デマに騙されるな!
2 『いだてん』俳優・古舘寛治の安倍批判ツイートがキレキレ
3 安倍の秋田「イージス・アショア」演説はデタラメだらけ! 
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 ワイドナショー「女子高生はいま韓国で生きている」発言が炎上
6 松尾貴史が語るテレビで芸人が権力批判できない理由
7 ジャニー喜多川社長の性的虐待問題を一切報じないマスコミ
8 大橋巨泉の安倍批判の遺言がテレビでカット
9 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
10 参院選情勢調査に焦る自民党!秋田では県知事や職員が選挙応援
11 安倍首相の街頭演説で批判派潰しの異様
12 山口敬之氏が菅官房長官と親しい企業から資金援助!
13 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
14 安倍「基礎年金6万3000円を確保」の信じがたい詐術
15 ジャニー社長死去でジャニーズ事務所が解禁時間を指定する報道統制!
16 『上田晋也のサタジャ』が山本太郎の企画をボツに
17 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
18 安倍首相が統計不正追及に「だから何だってんだ!」と逆ギレ野次
19 TBS宇垣アナが夫婦別姓反対派を一蹴
20 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄