紅白の安倍批判で「反日」と炎上の桑田佳祐 じゃあ『永遠の0』主題歌提供はなぜ!?

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思いつくままに行動する桑田佳祐(画像はサザンオールスターズ公式サイト「sas-fan.net」より)


「このクソ反日が」「どうみても朝鮮人です」「日本人なめくさったようなコノヤロウ」「売国奴め!」「芸能界って韓国人朝鮮人多すぎだろ」

 やっぱり出た。これらの差別・ヘイト発言はネット上で国民的人気を誇るサザンオ−ルスターズの桑田佳祐に向けられたものだ。

 昨年末のNHK紅白歌合戦に31年ぶりに出場したサザンだが、直後からそのパフォーマンスに驚きの声が上がった。理由はもちろん横浜の年越しライブ会場からサプライズ中継で出演した桑田の“変装“と歌った曲。画面にあらわれた桑田は「チョビ髭」で登場し、「ピースとハイライト」を歌ったのだ。

 この楽曲は日本を取りまく国際情勢や平和をテーマにしたもので、そのなかに〈都合のいい大義名分(かいしゃく)で 争いを仕掛けて 裸の王様が牛耳る世は……狂気〉という詞もある。チョビ髭のヒトラーに扮した桑田が、勝手(都合のいい)な憲法解釈(大義名分)で集団的自衛権容認した安倍晋三首相(裸の王様)を揶揄したのではないかと話題になったのだ。また桑田のバックには「ピースとハイライト」のPVも流されたが、その中にも安倍首相や韓国の朴槿恵大統領らを模したお面をかぶったランドセル姿の人物が登場することで様々な憶測が広がった。

 ネット上では桑田のパフォーマンスを絶賛する声があがる一方、批判的に捉える声も大きくなり、賛否両論の大きな話題になる。その反響の大きさからこの一件を「朝日新聞」(1月5日)までが取り上げる事態となった。

 そしてお決まりのように、冒頭のようなネトウヨたちによる桑田ヘイト攻撃が開始されたのだ。自分たちの気に食わない言論には「在日」「売国」にしてしまうという相変わらずの単細胞・ワンパターンぶりには呆れ果てるほかはないが、しかし、そもそも桑田はネトウヨがヒステリーを起こすような「反日」的思想の持ち主なのだろうか。逆にいうと、左翼リベラルが喝采を叫ぶような確固とした反戦の意志をもったアーティストなのだろうか。

 たしかに「ピースとハイライト」を初めて披露した2013年8月のライブで、サザンは「在特会」と「しばき隊」の小競り合いの映像を流して話題になった。歌詞の内容も安倍政権を批判したものと考えてまちがいないだろう。これまでもインタビューなどで桑田は反自民、反原発を訴えてもいる。

 だが、その一方で、桑田はネトウヨが大好きなあの百田尚樹原作映画『永遠の0』の主題歌をつくり、歌っているのだ。特攻隊、そして先の戦争を全面的に美化した映画のために、桑田が23年ぶりにつくった主題歌は「蛍」という作品で、こんな歌詞が並ぶものだった。

「たった一度の人生を捧げて さらば友よ 永遠に眠れ」
「何のために己を断って魂だけが帰り来るの? 闇に飛び交う蛍に連れられ 君が居た気がする」

 安倍批判と戦争反対を叫びつつ、安倍とべったりの作家が書いた戦争礼賛本の映画に楽曲提供する――いったいこれはどういうことなのだろうか。

 一つの解釈として語られているのは、桑田は一つのイメージに固定化されることや予定調和を嫌い、あえて対立する価値観やイデオロギーを越境しているのではないかという説だ。

 実際、これまでも桑田は、テレビやライブで予想外の危険水域ぎりぎりのパフォーマンスを見せてきた。とくに病気から復活してからはそれが顕著になっており、2014年12月28日に横浜アリーナで行われたサザンのライブでは、鑑賞に訪れた安倍首相と昭恵夫人を前に、「爆笑アイランド」の一部歌詞を「衆院解散なんてむちゃを言う」と替え歌にし、安倍首相を揶揄するというパフォーマンスも見せた。

 安倍首相は一応、「(歌を聴いて)のけぞって驚いたが、楽しみましたよ」などと答えていたが、その態度は明らかに気分を害していることがわかるものだったという。

 加えて紫綬褒章だ。桑田は14年に紫綬褒章を授与されたが、紫綬褒章に関しては一時、安倍政権に批判的な桑田が受賞を拒否するのではないかとの憶測もあった。しかし桑田はこれを受けた。そして、受けておきながら、年越しライブでは大晦日の紅白中継後、紫綬褒章をポケットから取り出し、たいしたもんじゃないというようなパフォーマンスをしてみせたのだ。

 これについては「在特会」会長の桜井誠がツイッターでこんな怒りの声を上げている。

「サザンの桑田佳祐の件が話題になっています。彼の出自を問わず紫綬褒章を尻のポケットからだして800円などと嘯き、天皇陛下を卑下する輩を日本人とは認めません。そんなに嫌いなら最初から紫綬褒章など貰わなければいいものを、何をトチ狂って受賞したのでしょうか?」

 天皇の「護憲」への意思を無視し、「在日」呼ばわりしているネトウヨこそ天皇蔑視ではないかとツッコミたくなるが、それはともかく、右と思えば左、左と思えば右といったこの桑田の行動は、ようするに桑田の好きなプロレスのように危険水域ぎりぎりに踏み込み、既成の価値の攪乱を狙ったパフォーマンスだというのである。

 だが、結論からいうと、これは深読みのしすぎだろう。桑田がそこまでの確信犯でないのは『永遠の0』への楽曲提供を決めた経緯を見ても明らかだ。主題歌の依頼は映画の製作サイドがオファーしたものだったようだが、桑田はそれを引き受ける前に仮編集の『永遠の0』を鑑賞して多いに感動したらしい。桑田はあるインタビューでこんなことを語っている。

「凄い映画を観た。手ぬぐいがビショビショになるくらい泣いた」
「映画の中に流れている“平和への祈り”のようなメッセージを、私なりに音楽という形を通じて、多くの方々に伝わっていくお手伝いができればと思っております」

 つまり、桑田は『永遠の0』をほんとうに反戦映画だと思って感動していたのだ。実際、できあがった歌詞も批評性がある訳ではなく、百田のつくりだした情緒的な世界観に丸乗りしたものだった。

 おそらく、桑田の政治行動にはたいして深い考えがあるわけではない。もっとシンプルに、そのときの正義感、怒り、感情、盛り上がりで行動しているにすぎないのではないか。

 横浜アリーナのライブも、安倍首相が来るというものだから半分冗談で仕掛けてみたら、安倍が何も知らずにのこのことやってきたということらしい。

 紫綬褒章についても、当初は何も考えずにありがたくもらったら、一部で「日和った」などといわれたため、ちょっと照れ隠しにたいしたことないよと言ってみせたという程度のことだろう。

 そういう意味では、その反戦メッセージがアメリカという国家から危険視され、FBIから監視され、国外退去命令まで受けたジョン・レノンなどとはまったくちがう。ただの思いつきで行動しているおっちょこちょい。その感じはむしろ、山本太郎に近いといってもいいかもしれない。
 
 だが、桑田の行動は思いつきで一貫性がないゆえに、大きなインパクトをもったことも事実だ。政権の顔色ばかりをうかがっているNHKをここまで慌てふためかせ、褒章の権威をここまで揺るがせ、ネトウヨをここまでいらだたせることは、ポジションが固定化された反戦・権力批判では不可能だっただろう。

 これからも、桑田にはネトウヨの炎上攻撃などは気にせず、ぜひ、思いつくまま安倍攻撃、戦争批判、政治的発言をがんがん展開していただきたい。ただし、百田作品の主題歌だけはイデオロギーとは関係なくイメージダウンにつながるのでやめた方がいいとは思うが……。
(酒井まど)

最終更新:2017.12.09 04:44

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