デリヘルIT化で顧客情報が警察に筒抜け、30万人の風俗嬢が警察のスパイに!?

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『デリヘルの経済学』(モリコウスケ/こう書房)

 日本最大の風俗激戦区をどこかご存じだろうか? 歌舞伎町でもなければ、渋谷や池袋でもない。実は「新橋」らしいのだ。このサラリーマン街が首都圏屈指のデリヘル最激戦区になっているという。

 なぜ、こんなことになっているのか。理由は、06年、大幅改正と厳格適用となった風営法にある。繁華街にあった店舗型の風俗店の多くは閉鎖に追い込まれ、「風俗街」は吉原のような一部の特殊区画以外、この数年で、ほぼ消滅した。歌舞伎町も今や単なる「ネオン街」であり、風俗街とセットだった歓楽街ではなくなった。風営法改正前まで歌舞伎町は、日の高い時間から派手な看板の風俗店で賑わっており、ある意味、風俗街としての顔が剥き出しなっていたものだが、それも今や昔である。

 とはいえ、消滅したのは風俗街と店舗型の風俗店であって、その多くはデリバリー(派遣型)へと姿を変えることで性風俗産業は生き残ってきた。

 そもそも風俗街が消滅した原因は、04年、都知事に就任した石原慎太郎の「歌舞伎町浄化作戦」に端を発するが、それを後押ししたのはいうまでもなく「警察」である。月刊宝島8月号の「年商10億円のデリヘル社長が明かすフーゾク業界『儲けの裏ワザ』」によれば、店舗型風俗店の経営者の大半は、デリヘル型への移行に失敗、キャバクラやガールズバーといった水商売へと鞍替えするなど、現在、デリヘルで成功している経営者たちは、みな、従来の風俗経営者のイメージとはかけ離れたビジネスマンタイプになったという。風俗嬢は同じでも経営者が総取っ替えになったらしいのだ。理由は以下、年商10億円のデリヘル社長の言葉から理解できよう。

「うちはシステムエンジニアを雇って、周辺地域のすべてのホテルやレンタルルームの予約情報、交通情報などの専用システムを組んで、配送するドライバーや手配するマネージャーに端末をもたせて情報を共有しています。こうした運用コストをかけないと、結局、渋滞で時間に遅れた、自宅の場所がわからない、ホテルが取れないとなって客を逃してしまう。顧客情報だってプレイ内容や特徴をデータにして女の子に教えています」(123ページ)

 店舗型風俗から派遣型風俗へと移行していく過程で性風俗業界に「IT革命」が起こり、「風俗業界のホリエモン」を次々と生み出しているわけだ。

 さらにデリヘルのIT化は、顧客情報と風俗嬢の「個人情報」にも及んでいる。デリヘルを利用した人ならば知っているだろうが、昨今、デリヘル店の多くが「身分証」の提示を求めるようになっている。これは「知らない場所で二人きりになる」デリヘルの特性上、客とのトラブルを想定しているためで、身分証を提示して正規会員になれば、値段もサービスもよくなる。会員制の店は安全なので若くてかわいい風俗嬢も集まりやすい。利用客もそれなら仕方ないと、気楽に身分証を出すようになっている。

 デリヘルには客が女の子を気に入らない場合、「チェンジ」をするシステムがある。店側も、どのタイプの子がチェンジになったのか、どんなプレイを好んだのか、顧客情報を細かく管理し、情報を共有するようになっている。プレイ後、そうしたデータを風俗嬢が入力して、情報を共有するようになっているのだ。

 つまり、○○企業に勤めるAさんが、いつ、どこで、どの風俗嬢を選んで、どんなプレイをして、いくら支払ったのか。月に何度利用しているのか、果ては特殊な性癖や射精までの時間など、恥ずかしい情報まできっちりデータが蓄積されているのである。

 実は、06年、風営法の改正で大きく変わった点に、「懇親会の義務化」がある。06年、施行された風営法改正には「営業所の管理者」(第24条)と、「都道府県風俗環境浄化協会」(第39条)で、当局からの講習を定期的に受けなくてはならなくなったのだ。取材したデリヘル経営者によれば、当局とは、警察が生活安全係だけでなく、保健所、消防署、税務署の関係者まで揃い、個人面談で経営の実態を調査しているという。つまり、その店舗がどの程度の顧客情報を管理しているのか(IT化しているのか)、実は当局もしっかり押さえているのだ。

 さて、風営法にはもともと、「公安委員会は、(略)その業務に関し報告又は資料の提出を求めることができる」(第37条/報告および立ち入り)があった。しかし、これまでの店舗型ならば、それほど意味のある条文ではなかった。店側にせよ、どこの誰が店に来ていたのか、把握してないのだから当然だろう。

 だがIT化したデリヘルは、違う。繰り返すが、いつ、どこで、誰が、誰と、どんなプレイをしたのか、データとしてすべて残っている。つまり、あなたがデリヘルを利用したプレイ内容が警察に筒抜けになるということだ。犯罪にかかわっていなければ関係ないというかもしれないが、そんなことはない。あなたが犯罪に関係していなくても、あなたの所属する会社や知人が何か犯罪への関与が疑われたときに、警察はそのデータをちらつかせながらあなたに証言を求めてくるかもしれない。

 また、政府を批判するような言論活動や政治運動にかかわっていた場合、公安部からそれをちらつかされて嫌がらせをされる可能性も十分ある。

 それだけではない。このデータの流出は、デリヘル嬢を“警察のスパイ”化させる可能性がある。風営法の厳格適用もあって、いま、店舗側は風俗嬢を雇うとき、戸籍謄本や身分証明書の添付が義務づけられるようになっている。一説にはのべで「30万人」ともいわれる風俗嬢の個人情報は、すべてデータとなっている。

 つまり、風俗嬢は当局が調べる気になれば、簡単に「身バレ」してしまうのだ。警察官、とくにマルボウと呼ばれる暴力団対策の刑事は、風俗嬢を「S」(スパイ)としてヤクザに送り込むことで知られている。実際、援助交際をした女子高生を「見逃してやる」という条件で半グレや暴力団のフロントにあてがい、情報収集をしてきた。

 風俗嬢のなかには、風俗経験を知られたくない女性も少なくないだろう。IT 化したデリヘルでは、風俗経験の有無が簡単に一発検索できてしまう。その情報を知った警察が身バレを絶対に悪用しない、と誰が言い切れるだろうか。

 さらに、警察が店にがさ入れをかけ、集積していた顧客データを抜き取るようなマネはしない、と言い切れるのか。

 警察は、店舗型風俗を潰してデリヘル主流時代にした理由を「暴力団の資金源を絶つのが目的」と発表してきた。それも嘘ではないかもしれないが、一方で、その利権や情報をそのままそっくり警察状況が掌握する状況ができつつあるのは確かだろう。

 まったく萎える話である。
(西本頑司)

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