うさぎの解体実況で炎上! 「狩猟女子」が笑顔で突きつける「命の現実」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
syuryou_140825.jpg
『わたし、解体はじめました─狩猟女子の暮らしづくり』(畠山千春/木楽舎)

「森ガール」「山ガール」に始まり、「林業女子」「農業女子」ときて、ついに現れた「狩猟女子」。ゆるふわ系女子アウトドアカルチャーも行く所まで行き着いた感があるが、狩猟ともなれば、ファッションやレジャー感覚で気軽に楽しめるようなことでもなさそうだ。自分の手で動物を捕まえ、絞めて解体し、肉を食べるのである。人間と動物の「命」の関係、生きることや食べることの意味、あるいは、大量に肉を消費する社会の現実……など、日頃は目をそらしている面倒な問題に否応なく向き合うことになる。なぜ、20代のどこにでもいる女の子がそんな世界にハマり、新米猟師となっていったのか。その過程を綴ったのが『わたし、解体はじめました─狩猟女子の暮らしづくり』(畠山千春/木楽舎)である。

 きっかけは東日本大震災。横浜で平凡な会社員をしていた著者は死の恐怖を感じ、余震と放射能に怯える中で考える。

〈食べものにしろ、エネルギーにしろ、暮らしの中の大事な部分を人にお願いして自分はお金を払うだけ。そうやってひたすら消費し続けるだけの暮らしは、もうしたくない〉

 震災直後、同じように思った人は多かったはず。だが、ほとんどの人がすぐ元の生活に戻っていく中、著者は行動を起こす。それが「解体」だった。少々唐突な気もするが、もともと自給自足の暮らしに興味があり、「食べることが大好き」だった著者には、自然なことだった。

 最初は震災の半年後。ネットで「鶏 解体」と検索してヒットしたブログや動画で方法を調べ、養鶏農家から仕入れた鶏を数人の仲間と絞めた。首をうまく落とせず、返り血を浴びて「ごめんね、ごめんね」と言いながらも、肉を処理していくうちに「あれ、美味しそう」と感じ、食べ終わった時には大きな満足感に包まれる。

〈「命を奪って食べる」よりも「さっきの鶏が自分の一部になった」という感覚のほうがしっくりくる気がしました。(略)この結びつきを感じられたことが、私にとって大きな発見でした〉

 この体験を個人ブログ「ちはるの森」に書くと反響が大きく、著者は初心者ながら各地でワークショップを開くことになる。鶏の首をひねるか、棒で頭を殴るかして気絶させ、包丁で首を切り落とし、ポリ袋の中で逆さにして血抜きをし……五感を使って「命」を感じるワークショップは好評だった。面白いことに、参加者はたいてい少量の肉で満腹になるという。〈絞めたてのお肉は新鮮で、生命力に溢れているからでしょうか〉と著者は書く。ちなみに、彼女自身は解体を始めてから、来客や特別な時以外にはほとんど肉を食べない「ゆるベジタリアン」になったという。

 こうして、著者はどんどんディープな方向へ突き進んでいく。

〈自然の中に入れば、動物も自分も一対一の命。(略)狩猟を通じて、もっともっと自分が「一動物である」ということをちゃんと感じたい〉

 と狩猟免許を取ると、関東から福岡へ引っ越し、罠を仕掛けて獲る猟を学ぶ。解体する動物の種類も増えた。イノシシ、シカ、合鴨、うさぎ、イタチ、アナグマ、自分で育てた烏骨鶏……。

 ただし、描かれる仲間や道具立ては、どこか「今どきの女子」らしい雰囲気が漂う。7人でシェアする古民家暮らし。「tracks」という名の若手猟師グループ。Googleマップを使った猟場開拓。ワークショップにトークイベント。「狩猟」という行為とのギャップを新鮮に感じる人もいれば、反感や拒絶感を覚える人もいるらしい。本書でもさらりと触れられているが、著者のブログ「ちはるの森」は大炎上を起こしたことがある。それはうさぎ猟の様子を書いたエントリだった。

 新潟の地元猟師たちについて冬山に出かけ、うさぎを獲って解体し、食べ尽くすまでの一部始終をレポートした記事には、写真もふんだんに挿入されている。真っ白な雪原にうさぎの血が飛び散る様は、なるほど生々しい。しかしそんな内容でも、タイトルには「うさぎはかわいい味がした。うさぎ狩りと解体してきたよ。」とあり、著者は屈託のない笑顔を見せている。「そんなの見たくない」「かわいそうだ」という人には、格好の攻撃材料となっただろう。本人は、日刊SPA!のインタビューで騒動について聞かれ、「ブログは不特定多数の人が見る場所なので、表現が直接的すぎたかなとは反省しました」と語っているが、一方で、こんな思いも口にしている。

〈昔は軒先とかで鶏絞めていましたし、もっと暮らしの近くにあったことだと思うんです。あと、狩りといえば「マタギ」のイメージがあって、みんな無言で真面目で笑わずに真剣に……って思っている人多いと思うんです。もちろんそうだとは思うんですけど……。(略)そこで笑顔が出たからといって、命に対する敬意がないかどうかっていったら、違うんじゃないかなと思っていて。命に対する敬意というのは、その人の暮らしの中からにじみ出すものであって、一部だけで判断することはできないんじゃないかなっていう気持ちがあ ります〉

 狩猟や解体はもちろん、肉屋の店先で枝肉や部分肉を捌く光景すら、あまり目にしなくなった現代。スーパーの陳列棚に並ぶパック詰めの肉が当たり前の都市生活者にとっては「見たくない現実」を「狩猟女子」は突きつけてくる。あくまでも笑顔で、ゆるふわな語り口で。事件事故や戦争報道でお題目のように繰り返される「命の大切さ」よりも、よほど有効な「命の教育」なのかもしれない。
(大黒仙介)

最終更新:2014.08.28 02:21

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり─

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

うさぎの解体実況で炎上! 「狩猟女子」が笑顔で突きつける「命の現実」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。○○女子大黒仙介の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 上田晋也『サタデージャーナル』終了の不可解
2 退職代行サービスだけでは対応できないブラック企業の恫喝手口
3 交番襲撃“父親が関テレ常務”より「元自衛官」
4 『いだてん』が関東大震災「朝鮮人虐殺」を示唆!
5 グッディ!土田マジギレ真の原因
6 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
7 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
8 安倍イラン訪問でNHK岩田明子記者がまた安倍フェイクPR
9 香港市民はデモの力示したが、日本は…
10 葵つかさが「松潤とは終わった」と
11 秋篠宮家の料理番がブラック告発
12 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
13 『朝生』で百田尚樹が徹底論破され大恥
14 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
15 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
16 『クロ現』降板の国谷裕子が圧力を語る
17 安倍が統計不正答弁中の根本厚労相に「戻れ」指示
18 田崎スシローが望月衣塑子記者を「トンチンカン」と攻撃
19 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
20 久米宏が電通タブーに踏み込む激烈な五輪批判
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄