今国会で成立か「国家情報局」の母体となる「内調」が行なってきた政治謀略総まくり! 政権批判へのカウンター、野党攻撃…

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内閣情報調査室HPより


 武器輸出の解禁、安保3文書改定……虎視眈々と戦争のできる国づくりを進める高市政権だが、またひとつ危険な法案が成立しそうになっている。

 ほかでもない、4月23日に衆院を通過し、連休明け5月8日から参院で審議入りしている「国家情報会議(国家情報局)設置法案」だ。

 参院では自民・維新の与党だけでは過半数に満たないとはいえ、衆院で国民民主、チームみらい、参政党、さらには中道改革連合までもがこの「国家情報局法案」の賛成に回っており、今国会で成立してしまう可能性は非常に高い。

 国家情報会議(国家情報局)設置法案は、インテリジェンス(情報収集・分析)の強化をはかる司令塔として「国家情報会議」を新設し、情報を集約するというものだが、その本質はきわめて危険なものだ。市民監視の強化やプライバシー侵害、政治的中立の逸脱などが多くの識者から指摘されている。

 実際、この国ではこれまで、公安警察が過激派・テロ対策と称して、デモの参加者から野党議員、さらにはなんの関係もない市民までを監視対象にしてプライバシー情報を収集、悪用してきた。

 2014年には、岐阜県警の警備課(公安警察)が、中部電力子会社の風力発電計画をめぐって、その計画すら知らない市民までをも反対運動に関わりそうな危険人物と決めつけてプライバシー情報を収集し、中部電力側に提供していたことが発覚。2024年、名古屋高裁が「違法」の判決を下している。

また、2010年には、ネットに流出した捜査資料から、警視庁公安部外事2課が国内のイスラム教徒について片っ端からプライバシー情報を収集し、リスト化していたことが明らかになった。

今回、この国家情報会議設置法案が成立すれば、こうした市民監視、プライバシー侵害が合法化されてしまうことになるのだ。

現に、この法案では国家情報局に犯罪が起きる前に予防的にかつ秘密裏に広範に情報を集める任務・所掌事務が与えられる一方、諜報活動をどのように行うのか、個人情報をどこまで収集できるのか、対象や制限など歯止めがまったく書かれていない。

また、情報機関をもつアメリカやイギリス、ドイツ、フランスなどには、その情報機関の公正性を監視する体制があるが、この法案では、そういう仕組みがまったくないのである

中道や国民民主は、プライバシー保護や政治的中立性への配慮を求める附帯決議を条件に賛成に回ったが、附帯決議にはなんの拘束力もなく、「公共の安全と秩序の維持」などを名目に国民監視の諜報活動をフリーハンドでおこなえる代物なのだ。

 この法案の危険性は、高市首相の答弁からも明らかだ。国会で国家情報局の監視対象について問われた高市首相はこう答えている。

「政府の政策に反対するデモや集会に参加していることのみを理由に、普通の市民が調査対象になることは想定しがたい」

「普通の市民」と「普通じゃない市民」を腑分けする発想自体、戦時中に戦争に異を唱えたものを「非国民」として迫害した歴史を想起させるが、高市首相は「想定しがたい」と明確に否定しなかったのである。

 しかも、この法案にはもうひとつ大きな問題がある。それはこの法案によって設置される国家情報局が、あの内閣情報調査室(内調)を「格上げ」するかたちになるということだ。内調のこれまでやってきたことを考えると、国家情報局は市民の監視どころか、もっととんでもない組織になる可能性が高い。

「国家情報局」に格上げされる「内調」の卑劣な実態! 政権批判者に対する監視、情報操作、謀略工作の数々

 国家情報局の母体となる内閣情報調査室(内調)は公安警察出身者が中心になって構成される首相官邸直属の諜報機関。従来から「日本のCIA」などと呼ばれ、国民の間では、海外各国の政府機関の動きや国内のスパイ、テロ活動監視をメインにしていると思われているようだが、その実態は全然違うものだ。週刊誌記者が苦笑しつつ語る。

「内調は外国機関やテロ組織の動向を探る独自の活動なんてほとんどしてませんよ。国際部門という部署もあるけど、やっているのは海外メディアのチェックくらい。じゃあ何がメインの活動かというと、官邸や政権のための情報収集。野党や政権を批判する動きを監視し、政権批判に対するカウンターを仕掛けるのがメインの仕事になっています。内調には、テレビ、新聞、週刊誌にそれぞれ担当がいて、その幹部や記者と定期的に会食をし、批判報道やスキャンダルが出ないかをチェックする一方、政権に批判的な野党や政権の不正を告発しようとする人物などのネガティブ情報をリークしている。いまはSNSの書き込み部隊もいるといわれていますね」

 そう、内調は国民の安全を守るための組織などでなく、政権・官邸を守るための政治工作・謀略機関なのである。

 内調のこの本質がもっとも露骨なかたちで現れていたのが第二次安倍政権時代だ。

 あの「加計学園問題」でも、まさに官邸と内調によるカウンター工作が発覚している。加計学園問題は、安倍晋三首相の盟友が経営する大学の獣医学部設置認可をめぐって、官邸が関係省庁に圧力をかけたとされるものだが、当時、文科省トップの事務次官だった前川喜平氏が圧力を受けた当事者としてこの問題を告発しようとしたところ、その直前、読売新聞の1面トップで前川氏の“出会い系バー通い”が報道されたのである。

 全国紙が一官僚のプライベートな行動を大々的に報道すること自体が前代未聞なうえ、読売の報道はその後、当該バーに出入りしていた女性の証言などによって前川氏の目的が若者の貧困調査であり、ミスリードだったことが明らかになった。当然、読売には、なぜこんなフェイクまがいの記事を出したのか疑問と批判の声が殺到したのだが、実はこの前川氏の“出会い系バー通い”情報は官邸が前川氏を監視してつかんだものだった。そして、官邸や内調関係者によって読売以外の複数のメディアにも持ち込まれていたことが判明したのである。

「前川氏は事務次官時代、加計学園の獣医学部認可に抵抗していた。すると、公安警察出身で、内調トップの内閣情報官を歴任した当時の官房副長官・杉田和博氏が公安警察に前川氏を尾行させ、バー通いを把握。前川氏に脅しをかけていたんです。ところが、前川氏がそれに屈せず、退官後に『週刊文春』に官邸の圧力を告発しようとすると、動きを察知した官邸と内調が告発を潰すために、複数のメディアに持ち込んだのです。官邸が前川氏の行動調査を行い、脅してきたことは前川氏自身が証言しているし、内調のリークも複数の週刊誌関係者が証言している」(全国紙政治部記者)

 安倍政権では、前川氏のケース以外にも、政策に対する批判が大きくなったり、首相や閣僚の不祥事が発覚すると、批判を牽引する野党幹部や議員、告発者の問題点がメディアを賑わすということが頻発したが、これらも多くは内調の仕掛けだった。

 たとえば、安倍政権当時、沖縄では米軍基地の辺野古移転に反対する翁長雄志知事が保守メディアを中心に苛烈なバッシングにさらされたうえ、「娘が中国に留学している」「人民解放軍の工作機関が沖縄入りして翁長と会った」といったまったくのデマ攻撃までを受けていたが、これらも多くは内調が情報源というのが定説になっている

 甘利明・経済再生担当相(当時)の口利き賄賂報道の直後に告発した不動産会社社員が暴力団のフロントだというフェイク情報が流れたのも、小渕優子経産相、松島みどり法相の選挙不正が発覚した直後、産経などの保守メディアを中心に民主党の枝野幸男氏ら野党幹部の政治資金報告書不記載が報じられたのも、内調のリークが発端だったとされる。

 ほかにも、内調は、蓮舫氏の“二重国籍疑惑”や山尾志桜里氏のガソリン問題などの野党議員攻撃、さらには安倍政権が強行してきた特定秘密保護法や共謀罪、安保法制の成立に向けた根回し、世論誘導などでも、暗躍が囁かれてきた。

安倍官邸の謀略工作を仕切ってきた“官邸のアイヒマン” 山口敬之による性加害問題でも…

 安倍政権時代、政敵や政権批判勢力を狙い撃ちするこうした謀略工作を内調トップとして仕切っていたのが、“官邸のアイヒマン”と称された、北村滋内閣情報官だった。

 北村氏はもともと警察庁外事課長などを歴任した公安警察のエリートだが、第一次安倍政権で首相秘書官に抜擢されたのをきっかけに安倍首相と急接近。警察と官邸のパイプ役として、日本版NSC立ち上げにも深く関わり、特定秘密保護法の法案策定でも中心的役割を担った。

 そして、第二次安倍政権で内調のトップに就任すると、北村氏はまるで安倍首相の私兵のような動きを見せ始める。ほぼ毎日のように安倍首相と面会し、菅義偉官房長官を飛び越えて情報を直接伝えることもしばしばだったという。しかも、内調は本来、国内外の情報を収集・分析するのが役割なのに、政権批判のカウンター情報や安倍政権の政敵のスキャンダルを流し始めたのだ。

「北村さんがトップに就任してから、内調は政権のための謀略機関的色彩がさらに濃くなってしまった。古巣の公安のネットワークを使って、野党議員や政権の告発者たちの身辺を洗わせ、その情報を自分と近い読売や産経、さらには『週刊新潮』『週刊文春』に流すというのがパターンでした」(元内調関係者)

 実際、北村氏自身が官邸の意を受けてスキャンダル封じの謀略工作に関与していたという証拠も発覚している。それは、安倍首相の側近記者だった山口敬之氏による伊藤詩織氏への性加害事件をめぐるものだ

 この事件では、伊藤氏に告発された山口氏が親しい安倍首相や菅官房長官に相談。官邸の圧力で捜査が潰されてしまったことを「週刊新潮」がスクープしたのだが、その「新潮」が続報で、当時、内調トップの北村氏も山口氏から直接相談を受けて、スキャンダル封じ込めに動いていたことを報じたのだ。

 その証拠となったのは、山口氏が誤送信したメールだった。当時、「週刊新潮」がこの事件について山口氏に取材を申し込んだところ、山口氏が誤ってこんな文章を「週刊新潮」編集部に送信してきたのだ。

〈北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。伊藤の件です。取り急ぎ転送します。
山口敬之〉

「週刊新潮」は周辺取材から、この山口氏が宛先にしていた「北村さま」が内調トップの北村氏であることを特定し、本人に直撃しているのだが、北村氏は「お答えすることはない」と言っただけで否定していない。

 ようするに、この性加害事件では、北村氏自身が安倍首相の側近記者の相談を受け、官邸の意向を受けてもみ消しに動いていたということだろう。

 実際、この事件では内調が組織ぐるみでカウンター情報を流していた形跡がある。というのも、伊藤氏が初めて山口氏による性加害告発の記者会見をおこなった直後から、ネット上では、伊藤氏について「民進党の回し者」なる風評が飛び交い、伊藤氏を「民進党関係者」だとするフェイクチャート図の画像が出回っていたのだがが、「週刊新潮」の取材によると、これらは内調が作成し、流した可能性が高いというのだ。

戦前の特高体制の再来か!国家情報局を構想したのは元内調トップの北村滋

 内調が過去にやってきたこうした謀略を振り返るだけでも、今回、高市政権が設置を目論む「国家情報局」がどんな組織になるか明らかだが、さらに恐ろしいのは、今回の「国家情報局」構想に、安倍政権下で内調の官邸私兵化をエスカレートさせきた張本人である北村氏が、深くかかわっているということだ。

 実は今回、高市政権が打ち出した内調の拡大=国家情報局設置はもともと、北村氏が構想したことだった。そのことは、当の北村氏が公言している。

 昨年末ごろより様々なメディアに登場し、まるでスポークスマンのように「国家情報局」について喧伝している北村氏だが、今年4月18日付けの毎日新聞のインタビューで、国家情報局について「私が随分前から主張してきたこと」「直接提言したわけではないが、首相は当然ご存じだったのだと思う」と胸を張ったうえ、こう語っているのだ。

「私が内閣情報官として実務に携わった第2次安倍晋三政権では、各省庁が情報を出し惜しみするような問題はなかった。当時は官邸の求心力が強く、おのずと情報が集まってきたからだ。ただ、内閣の情報機能を常に高めておくためには制度化が必要不可欠だ」

 ようするに、北村氏は、安倍政権時の内調の状態を制度化し、首相が誰かに関わらず、謀略による官邸支配が可能になるような体制をつくろうとしていたということだろう。

 そして、この北村氏の構想に乗っかったのが、高市首相だった。

 北村氏は2021年から有識者会議「経済安全保障会議」のメンバーを務めているが、2022年経済安保相となった高市氏とともに経済安全保障制度の整備を推し進めてきた。一緒にメディアに出演して経済安保のPRをしたこともあるし、北村氏が経済安全保障にかんする著書を出版した際には、高市氏がXにこんな投稿をしている。

〈待ちに待っていた北村滋・前国家安全保障局長(元警察庁外事情報部長)の御著書『経済安全保障』が発売になり、入手しました。日本で暗躍するスパイの生々しい話に始まり、更に強化するべき法制度整備のヒントを頂けました。〉(2022年5月23日)

 そして、高市氏は先の総裁選で「国家情報局」設置を公約に掲げ、総裁に就任すると、党にその構想を推し進めるインテリジェンス戦略本部を設置。その初会合で、講師を務めたのが北村氏だった。その後、インテリジェンス戦略本部は国家情報局・国家情報会議に関する提言をまとめ、今年3月に高市首相に設置を申し入れた。

 つまり、国家情報会議法案=国家情報局の設置構想は、安倍政治の後継者を自認する高市首相と、安倍官邸の独裁支配を担ってきた北村氏の“魔合体”によって生まれたものといってもいいだろう。

 だとすれば、この組織が、政権批判を抑え込み、野党や政敵を陥れるための謀略機関となることは必定ではないか。

 いや、この2人の最終的な狙いはそんなレベルではとどまらないかもしれない。改憲、安保3文書改定と、「戦争のできる国づくり」に邁進していている高市首相は、かつて「説得できない有権者は抹殺するべき」などと主張するヒトラー本に推薦文を寄せていた。そして、北村氏は内閣情報官に着任する前、戦前・戦中の特高警察、弾圧体制を生んだ法体系を高く評価する論文を警察関係の専門書に発表したことがある。

 行政法を専門とする白藤博行・専修大名誉教授は、国家情報会議設置法案について「『戦争する人づくり』を狙っている」と指摘している。

「戦争の遂行は国民の反対が大きければできません。戦争を容認する雰囲気づくりを進め、戦争に反対するものに冷や水を浴びせ、つるし上げてでも抑え込む必要があります。そのために国家が行う諜報(ちょうほう)活動(スパイ活動)で、すべての国民を監視する体制の強化が法案の狙いです」(しんぶん赤旗4月11日付)。

 国家情報会議設置法案は、まさに戦前の特高体制を復活させる第一歩なのだ。こんな法律を絶対に成立させてはならない。

最終更新:2026.05.12 08:36

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