菅首相が緊急事態宣言会見で大ボラ連発! ワクチンは「世界でもっともスピード」、ロッキン中止も「じつは五輪も同様の取り扱い」

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首相官邸HPより


 前回の緊急事態宣言の解除から1カ月も経たないうちに、菅義偉首相が東京都に4度目の宣言発出を決めた。

 当然すぎる結果だ。前回の解除時から東京の感染者数は下げ止まり状態で、解除後は案の定、増加傾向に入った。前回の解除を決めたころ、菅首相は周囲の側近議員らに「俺は勝負したんだ」と繰り返し語っていたと伝えられていたが、ようするに国民の命や生活はこのギャンブラー首相に振り回され、またも危険に晒されているのである。

 しかも、感染爆発待ったなしの状況まで追い詰められているにもかかわらず、有観客での開催を諦めていなかった菅首相は、昨日まで宣言の発出ではなくまん延防止等重点措置の延長でお茶を濁そうとしていた。ところが昨日7日の東京の新規感染者数が900人を超え、政府分科会の専門家から重点措置の延長では了承は得られないと悟り、しぶしぶ宣言発出に方針転換。実際、昨日まで首相周辺は「宣言を出せば、コロナに負けた感じになる。それは避けたい」と語っていたという(朝日新聞デジタル7日付)。

 コロナに勝ったことなど一度もないのに何を言っているのかという感じだが、しかし、けっして「負け」を認めたくない菅首相は、本日おこなわれた記者会見で盛大なホラを吹き、国民を欺こうとしたのだ。

 それは、全国の自治体から供給不足に悲鳴があがっているワクチン接種についての発言。菅首相はこの状況下でまさかの7月中に全人口の4割への接種を目指すと言い出したのだが、さらにこうも述べたのだ。

「全国の津々浦々でワクチン接種の加速化が進んでいます。自衛隊や医療などの関係者のご尽力により、いまや世界でももっとも(速い)スピードで接種がおこなわれています」

 国からの供給不足で予約を停止する自治体が相次いでいるのというのに、「いまや世界でもっとも速いスピード」って。しかも、これは大嘘だ。世界のコロナ関連データを集計している「Our World in Data」の「人口100人あたりの1日のワクチン投与量」(7日間平均)を確認すると、カナダや中国、フランス、イタリア、ドイツのほうが日本よりも投与量は多い。また、上位にアメリカやイギリスなどの「ワクチン先進国」が入っていないのは、今年1〜2月の段階から接種をスタートさせており、すでにかなりの量を接種し終えているからだ。

 本サイトの既報でお伝えしたように(https://lite-ra.com/2021/07/post-5939.html)、これと同じデタラメをワクチン担当の河野太郎・規制改革相が世界に発信して笑い者になったばかりだというのに、今度は総理大臣自ら会見でホラを吹くとは……。まったく呆れ果てるほかないが、それ以上に開いた口が塞がらなかったのは、もちろん、東京五輪にかんする発言だ。

菅首相は五輪開催強行の一方でまた飲食店をやり玉 卸業者に「酒類提供停止に応じない飲食店と取引するな」

 菅首相はきょうの会見で恥ずかしげもなく、こう語った。

「オリンピック、パラリンピックには、世界中の人々の心をひとつにする力があります」
「新型コロナという大きな困難に直面するいまだからこそ世界がひとつになれること、人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを東京から発信したいと思います」

 緊急事態宣言を発出するという非常事態にあるのに、「世界中の人々の心をひとつにする」「難局を乗り越えていけることを発信」するために東京五輪を開催する──。まったくふざけるのもいい加減にしろ、という話だ。東京五輪を開催することは、世界どころか国内の人々の心を切り裂き、五輪の開催が新たな難局を生み出すことになるのは目に見えているからだ。

 まず、本日おこなわれた5者会談では都内会場の無観客開催が決定したというが、無観客でも海外からは選手や関係者、報道陣など約7万人が日本にやってくる。すでに「バブル方式」が弾けてしまっていることは次々に露呈しているが、デルタ株や南米などで流行しているラムダ株をはじめ東京五輪が“変異株の祭典”の舞台となり、新たな変異株を出現させる可能性もある。

 だが、もっとも問題なのは、東京五輪の開催によって緊急事態宣言の効果が発揮されない可能性が非常に高いことだろう。

 昨日、厚労省新型コロナ対策アドバイザリーボードに示された京都大学などによる試算では、強い対策をとらなかった場合、東京五輪の期間中に東京都の新規感染者数が3000人に達するとし、一方、新規感染者数が1000人になった時点で強い対策が取られれば〈感染者数は横ばいになり、約10日で減少に転じる〉とした(東京新聞7日付)。そして、この「強い対策」のなかには、宣言発出以外にも「報道や政治家の発言によるアナウンス効果」が含まれている。試算では前回の宣言時のデータを基にし、実効再生産数がアナウンス効果で20%、宣言の効果でさらに20%減ると想定したという。

 しかし、宣言下で東京五輪を開催するのだから、このアナウンス効果に期待できるはずもない。実際、きょうの会見では、菅首相は東京五輪を開催することは棚に上げ、またも飲食店、とりわけ酒の提供を槍玉にあげ、宣言対象地域などで飲食店での酒類提供を一律停止すると発言。かたや東京五輪というお祭り騒ぎを繰り広げるのに、国民には「外で酒は飲むな」と締め付けようとは、矛盾も甚だしい。

 しかも政府は、酒を飲食店に卸す事業者に対し、酒類提供停止に応じない飲食店とは取引するなと要請するという。苦境を強いられる飲食店と卸業者を分断し、要請に応じられない飲食店の事情を汲むこともなく、あたかも感染拡大の元凶のように扱うとは、一体どういうつもりなのか。

「ROCK IN JAPAN」中止の質問にも「東京五輪もじつは同様の取り扱い」とうそぶく菅首相

 さらに、昨日には8月に茨城県で開催予定だった野外音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」の中止が発表されたが、この件について菅首相は会見で「中止になったことは大変残念」としながらも、「イベントの開催制限は、東京五輪もじつは同様の取り扱い」「緊急事態宣言のもとでは午後9時以降は無観客をお願いすることになっているのでご理解いただきたい」と発言。だが、茨城県は緊急事態宣言はおろか、重点措置の対象地域でさえなく、フェスの終演時間は19時55分の予定だった。だいたい、バブル方式のザルぶりが露呈しているのに都内は無観客でも東京五輪を開催しようというのは危険極まりなく、東京五輪こそ中止の判断を下すべきなのだ。

 どうして東京五輪はOKで店内での飲酒はダメなのか、どうして東京五輪はOKで野外音楽フェスは中止になるのか──。このように、国民にだけ負担を強いておきながら、一方で東京五輪だけは聖域として特例扱いにするという状況であるかぎり、菅首相が何を言っても矛盾が浮き彫りになり、アナウンス効果どころかマイナスの反発を生むだけだ。しかも報道によるアナウンス効果にしても、「日本はいくつメダルを獲得したか」に終始する熱狂的な報道がはじまれば、宣言下であるにもかかわらず社会の空気は弛緩しきったものになるだろう。

 菅首相は無観客開催について、まるで「自分の英断」であるかのように語ったが、東京は無観客であっても五輪はこの状況下で開催すること自体が大きなリスクを生み出す。国民の安全を最優先し、万全の感染防止対策をとると言うのであれば、中止の一択しかない。つまり、それを選択しない菅首相は、国民を切り捨てたのである。
 
「緊急事態宣言下での五輪開催」という前代未聞の国家非常事態に突入する日本。1カ月後、一体この国はどうなっているのだろうか。

最終更新:2021.07.08 10:36

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