安倍首相ごり押し「軍艦島」の世界遺産報告書から「朝鮮人の強制労働」を削除! 国際公約を反故にして徴用工問題消し去る安倍政権

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GSOMIA延長も徴用工問題では…(首相官邸ホームページより)


 戦中に日本に連れてこられ、過酷な環境下での労働を強いられた朝鮮人徴用工問題をめぐり、またもや日本政府の歴史修正主義があらわになった。2015年にユネスコの世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」についての最新版「保全状況報告書」(内閣官房作成)が今月、ユネスコのホームページで公開されたのだが、そこに朝鮮人の強制労働の記述が一切なかったのだ。

 周知のように、安倍首相の肝いりである「明治日本の産業革命遺産」のなかには、軍艦島の通称で知られる長崎県の端島を含めた、複数の炭鉱・製鉄所が登録されている。とりわけ、九州地方の炭鉱では朝鮮人徴用工の過酷労働が知られているが、軍艦島も例外ではない。本サイトでもお伝えしてきたように、「(逃げようとした朝鮮人は)悲鳴を聞いて駆けつけた私たちの目の前でさんざん拷問された」「生きた心地がしなかった。人生を台無しにされた。あの地獄は忘れようとしても忘れられない」といった朝鮮人徴用工の証言が多数残っている。

 「明治日本の産業革命遺産」をめぐる朝鮮人徴用工の扱いをめぐって、日本側は、2015年の世界遺産委員会で、〈その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと〉を認め、〈第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる〉(内閣官房「産業遺産情報センターの在り方等について(第一報告書))」)と約束していた。

 ところが、これが2017年に日本側がユネスコへ提出した「保全状況報告書」では、朝鮮人徴用工について「戦前、戦中、戦後にかけて日本の産業を支えた多くの朝鮮半島出身者がいた」という記述で、強制連行や過酷労働の実態を矮小化。そして、今月出された最新の「保全状況報告書」では、朝鮮人徴用工について一切触れなかったのだ。

 たしかに、日本企業に元徴用工らが求める賠償を認めた2018年の元徴用工ら韓国大法院判決以降、安倍政権は「徴用工」を「労働者」と言い換えるなど、徴用工問題そのものをなかったことにする歴史修正主義的動きを強めているが、まさか国際機関とかわした約束を反故にする詐欺行為まで働いていたとは……。

 だが、それも当然かもしれない。そもそも、「明治日本の産業革命遺産」自体が安倍首相とそのお仲間による歴史修正主義的欲望の発露だったからだ。

「明治日本の産業革命遺産」は「一般財団法人産業遺産国民会議」なる団体が登録運動を展開してきたのだが、この団体には安倍首相のお友だちがずらりと顔を揃えている。名誉会長の今井敬・経団連名誉会長は、安倍首相の側近中の側近である今井尚哉首相秘書官の叔父、理事には、日本会議福岡の元名誉顧問でNHK経営委員長の石原進・JR九州相談役、フジテレビ取締役相談役の日枝久・前会長、さらには加計学園問題でも名前が挙がった元内閣参与の木曽功・千葉科学大学学長。しかも、徴用工問題で訴えを起こされている三菱重工業の飯島史郎顧問や、新日鐵住金の林田博顧問なども名前を連ねていた。

安倍首相と「明治日本の産業革命遺産」をごり押しした団体が「徴用工」問題否定のフェイク煽動

 さらに、大きいのは同団体を実質的に仕切っている専務理事・加藤康子氏の存在だ。加藤康子氏は2015年12月から今年7月まで内閣官房参与を務め、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の“陰の立役者”などと呼ばれているのだが、この康子氏と安倍首相は“幼なじみ”で家族同然の深い関係にある。康子氏は故・加藤六月元農水相の長女なのだが、加藤氏は安倍首相の父・晋太郎氏の安倍派四天王の筆頭で、康子氏の母は安倍首相の母・洋子氏と“姉妹”のように親しかったというのは有名な話だ。また、康子氏は安倍首相の側近である加藤勝信厚労省の元婚約者でもある(勝信氏はその後康子氏の妹と結婚したため、義理の弟にあたる)。

「週刊新潮」(新潮社)2015年5月21日増大号に掲載された彼女のインタビューによると、自民党が野党に転落していたころ、安倍氏は「明治産業遺産」の世界遺産登録への熱意を語った康子氏にこう語ったという。

「君がやろうとしていることは『坂の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」

 安倍首相は総裁の地位に返り咲いた3日後、彼女に電話をかけ、「産業遺産やるから」と、決意を語ったという。実際、第二次安倍政権誕生後のやり方は強引としかいいようのないものだった。文科省の文化審議会は2013年8月に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を正式に推薦候補として決定していたにもかかわらず、内閣官房の有識者会議は対抗するように「明治産業遺産」を正式推薦に選定した。

 この動きに対しては、当然ながら、韓国から「遺産群のなかには強制徴用が行われた施設がある」という反対の声が上がったが、安倍首相はそれでも「明治産業遺産」をゴリ押し。結局、最終的には菅義偉官房長官が決定権を握り、「明治産業遺産」を政府推薦とし、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を先送りにしたのである。

 そして、安倍政権は、世界遺産登録の運動の際は、国際社会を納得させるため、〈その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと〉を認めていたにもかかわらず、今になって完全に手のひらを返したのだ。

 それは、世界遺産登録の運動を牽引してきた安倍首相の幼なじみ・加藤康子氏が率いる「産業遺産国民会議」も同様だ。

たとえば、加藤氏は今年の8月5日には産経新聞のインタビューで、〈世界遺産登録は果たせたが、日本が戦時中に朝鮮人労働者に奴隷労働を強いたとのイメージを持った委員国もあったでしょう〉などと語り、〈賃金データでは半島出身者が日本人に比べ不当に低かったということはありません。韓国では朝鮮人労働者には日本人に比べ、質素な食事が与えられていたといわれていますが、炊事場もメニューも同じ。住環境の面も待遇に差はなかった〉などと主張。また、加藤氏が専務理事を務める「産業遺産国民会議」も「軍艦島の真実−朝鮮人徴用工の検証−」なるサイトを作り、元島民らの証言を使い「検証」と称して、朝鮮人元徴用工の証言などを否定する運動を展開している。

歴史的事実の「朝鮮人強制連行」「徴用工」があらゆる場所で削除、封印される事態に

 改めて言っておくが、戦時中の朝鮮人強制連行は、当事者の証言だけでなく、公文書を含んだ史料がいくつも残っている歴史的事実だ。官斡旋時代の朝鮮人総督府の官報や募集企業の文書などにも実態が〈強制供出〉であることを認める記述がある。

 強制連行の実証的研究で知られる東京大学の外村大教授は、「特に90年代半ばからですね、史料の発掘が進み、いろんな話が出てきました。朝鮮人の待遇が日本人よりよかったとか、自ら望んで来た人がいたとか。いずれも事実の断片ではあるんですよ。じゃあ暴力的な連行や虐待は例外的だったかというと、それは違う」「事実というものは無限にあるものです。都合のいい事実だけをつなぎあわせれば別の歴史も生まれる。でも、それは『こうあってほしい』というゆがんだ願望や妄想に近い」と断じている(朝日新聞2015年4月17日インタビュー)。

 いずれにしても、朝鮮人徴用工の強制連行の舞台を「明治日本の産業革命遺産」に登録しようと動いた勢力がいま、ネトウヨ並みの詐術を弄して、その徴用工の歴史を否定しにかかっているというのは偶然ではない。

 安倍首相とその幼馴染、そしてお友だちの右派勢力が「明治産業革命遺産」の登録をごり押しした背景には、もともと、大日本帝国を美化する歴史修正の目的があった。ユネスコという国際機関に「世界遺産」と認めさせることでその歴史を正当化し、戦前の負の部分を相対化しようとしていたのだ。それは前述したように、徴用工問題で訴えを起こされている三菱重工業や新日鐵住金の顧問などが名前を連ねていることからも明らかだ。

 そして、ここにきて徴用工判決で日本国内の韓国への反発が高まったことを逆に奇貨とし、徴用工問題の矮小化、封印、削除という露骨な動きを強め始めた。そういうことだろう。

 まったく卑劣極まりないが、しかし、こうした動きは、今回のユネスコの「保全状況報告書」だけではない。たとえば、約6000から7000人の朝鮮人労働者が工事に従事したとされる長野県の「松代大本営」の地下壕をめぐっては、市が入り口の看板に「強制的に」と記していた部分にテープを貼って削除。群馬県の県立公園「群馬の森」では、朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑の設置更新を県が拒否。奈良県天理市でも、飛行場の建設にあたって朝鮮人の強制連行があったと記した説明板を市が撤去するなどの事例が相次いでいる。

 安倍首相を筆頭とする歴史修正主義者たちは、負の歴史事実をなかったことにしようとする。その最終地点は、人間の生きた証そのものを記録や記憶から消してしまうことだ。このまま安倍政権の歴史修正主義を放置しておけば、この国はどんどんディストピア化してしまうだろう。

最終更新:2019.12.07 12:34

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