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竹田恒泰が『モーニングショー』で女系天皇否定を強弁! 女性差別を批判され「天皇そのものが差別の根源」と開き直り
『モーニングショー』に出演した竹田氏
あの“ネトウヨのアイドル”こと竹田恒泰氏が5日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の皇位継承問題特集に登場、“女系天皇否定”を強弁し話題を呼んでいる。
本サイトでも既報のとおり、先月、皇室の後継者問題をめぐり、青山繁晴参院議員率いる「日本の尊厳と国益を護る会」なる自民党の極右議員グループが“男系カルト”むき出しの提言。「男系男子」維持のため、法改正による「旧宮家」の皇籍復帰や、その男子を現皇室の養子にするべきだと主張している。
念のため説明しておくと、「男系男子」とは父方の血統のみをたどって天皇にたどり着く(皇族の)男性という意味で、「旧宮家」とは1947年に皇籍を離脱した竹田宮など11宮家を指し、現在は一般人である。青山センセイらの主張のトンデモっぷりについては、先日、本サイトでも解説したとおりだ(https://lite-ra.com/2019/05/post-4703.html)。
この日の『モーニングショー』では、この「護る会」の提言を受ける形で、男系維持および女性・女系天皇容認の是非について議論され、竹田氏は、元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司氏とともに、ゲストコメンテーターとしてスタジオに生出演したのだ。
竹田氏といえば、以前から旧宮家の皇籍復帰や養子にすることを繰り返し主張しており、「日本の尊厳と国益を護る会」と目ざすところは一緒なのだが、そもそも自身が旧宮家である竹田家出身。つまり、自民党議連の提言のどおりにことが進めば、竹田氏のような人物が皇族や天皇になることだってありうるわけだ。番組では、当然のように、竹田氏が「男系男子」こそ「伝統」であり、女性・女系天皇は認められないと喚き立てるかたちで進行していった。
だが、その竹田氏に対して正面から反論をしたのが、番組レギュラーコメンテーターの玉川徹氏や弁護士の菅野朋子氏、ジャーナリストの青木理氏だった。
まず、玉川氏は「『伝統だから』と言うが、その伝統っていうのは世の中が変われば変わっていくもの。長い間天皇家が続けてこられたのは側室制度があったからでしょ。(かつてのように)側室制度もなく男系だけでいくってことになれば、継承を(女性を除いた)半分しか認めないってわけになる。皇統を維持するという意味で言えば合理的ではない。でも、側室を置くことによって維持されてきた。側室制度みたいなものも伝統だったかもしれないけど、やめたわけですよね。なぜやめたか。世の中が変わったからですよ」と皇室の伝統が時代とともに変わっていることを指摘。
さらに、宮家を増やせば皇位継承者は増えると強弁し、あくまで「男系男子」に固執する竹田氏に対して、「女性天皇や女系天皇を認めることがなぜダメなのか、やっぱり僕にはわからない」とこう疑問をぶつけた。
「女性天皇や女系天皇を認めることに、なんでダメなのかがやっぱり僕には分からなくって。僕は男性だけど、女性の立場からすると、日本国の象徴たる天皇が女性はダメなんだよと言われ続ける国ってどうなんだろうって僕は思うんですよ。つまり、女はダメなんだよって。国の象徴ですからね」
たしかに、番組でも紹介されていたが、ヨーロッパの王室では男子のみ、あるいは男子優先で王位継承権を持っていた国々があるが、1979年に国連が女子差別撤廃条約を採択したことを受けて、男女関係なく年齢順で順位を決めるようになった。男女同権は当たり前のことであり、世界の王室はその流れのなかで変化していったのだ。ところが、竹田氏は「権利が主体のヨーロッパの王位と義務が中心の日本の皇位とを同じに扱ってはいけない」などと強弁を続けた。
皇室の男系優先のもつ差別性を訴えた菅野朋子弁護士に対し竹田恒泰は…
そこで、「皇室の男系優先」が社会にもたらす女性差別の問題を追及したのが菅野氏だ。
「私がひとつ申し上げたいのは、女系・女性を認めないということが、どれだけ女性にとって苦痛か。それは玉川さんがおっしゃったように、女性が天皇になれないということだけではなくて、女性が男を産まなきゃいけないんですかって、そこを強いられることになるんですよね。側室の時代だっておそらくそれは女性にとってすごく争いもあったでしょうし、いろんなことがあったと思います。男の子を産まなきゃ認められないといったようなことを突きつけられてるんですよ。その価値観というものがたぶん国民にはなかなか受け入れられないじゃないか」
菅野氏の言う通りだろう。そもそも、女系天皇を認めない現制度では、皇室に嫁いだ女性は、後継として男子を産むことを強制される。雅子皇后の例を見てもわかるように、そのプレッシャーは本人の人格や自由意志を完全に否定するほどグロテスクなものだ。これは皇室に限った問題ではない。「後継者として男子を産め」という極めて強制的な圧力は、皇室問題を経由することで世の中に一般化・正当化されてしまう。日本社会で生活する一般の女性たちにもまた、のしかかってくるのだ。
だが、竹田氏はこの社会的な女性の苦しみ、差別を助長するという問題にまともに向き合わない。というか、ハナから頭にないようなのだ。竹田氏は「だからこそ宮家を充実させれば、どこかで生まれればいいわけで」などとトンチンカンなことを言って、菅野氏から「そういうことでは全然ないんですよ。宮家を増やしたって、それは男の子です、結局」と反論されると、半ば逆上するようにこう吐き捨てた。
「もしそれを言うならば、天皇の全否定なわけですよ。つまり特定の男性だけが天皇になるということですから。皇室そのもの、天皇というものの差別を言うならわかるんだけども、それを認めておきながら、女性差別だけ持ち込むというのはバランスがおかしい。もしこれを女性差別というならば、天皇そのものが差別の根源だと言うのと一緒に語らなければ矛盾をきたします」
なんと、竹田サン、天皇制度自体が非民主主義的かつ非人権的なシステムであり、まさに“差別の制度化”であることを、認めてしまったのである。
もちろんこれは日本の天皇制に限ったことではなく、だからこそ世界各国の王室が民主主義社会のなかで王室制度を維持していくという矛盾を糊塗するために腐心しているわけだが、竹田氏は「女性差別だけ持ち込むのはバランスがおかしい」などと非難して差別を全肯定するのだ。竹田氏は、女性差別をなくすくらいなら、天皇制度そのものをなくしたほうがいいと考えているのだろうか。
しかも竹田氏は女性・女系天皇を認めず、旧宮家の子どもを養子にしてまで「男系男子」にこだわることを、こんな失笑モノの屁理屈で正当化しようとしていた。
「よく説明されるのは伝統だとか王朝が変わるから、だから男系だ、という話がよくあるんですけど、やっぱり考え方がバラけるわけですね。自分は男系の天皇しか認めないという人もいれば、まあ女系でもいいじゃないかという人に分かれる。すると、将来、男系の血を引かない天皇が成立したときに、認める人と認めない人が分かれてしまう。これが私、一番問題だと思ってまして。日本国憲法第一条で、国民統合の象徴と書かれているにもかかわらず、認める、認めないで意見の分かれる天皇というのは避けなければいけない」
竹田恒泰ら右派が女性・女系天皇を否定し男系の血筋にこだわる異常性
いったい何を言っているのだろう。番組のなかでも他の出演者から「そんなの旧宮家の皇族復帰だって同じ。認めるか認めないか分かれる」と総ツッコミを食らっていたが、事実として、各社の世論調査などを見ても、女性・女系天皇への賛成意見はいずれも7割前後である。あの産経新聞とFNNの合同調査(5月11、12 日)でも、女性天皇に「賛成」が78.3%に対し「反対」は13.1%、女系天皇に「賛成」が64.2%に対し「反対」は21.4%である。
竹田氏は「女系天皇は賛否が真っ二つに割れるから国民の統合ではなくなる」というふうに言うが、むしろ、70年以上も前に皇族でなくなった旧宮家の人物をどうこうしようというほうが、よっぽど国民を二分するだろう。事実、産経FNN調査ですら、旧宮家の皇籍に復帰を「認めてもよい」が42.3%、「認めないほうがよい」が39.6%だ。
実際、旧皇族とは言っても、現在はすでにほとんどの世代が戦後生まれで、宮家であったときを知らない。とりわけ若い世代は、一般の国民とほとんど同じ生活環境で育っていると推察されるし、そもそもその人々自体がもはや公的存在ではなく「民間人」だから、国民がよく知る由もない。いきなり「法改正したので明日から皇族です」ともなっても、それこそ、ほとんどの国民がすんなり受け入れられないだろう。
現に竹田氏自身が、今年5月の『AbemaPrime』(AbemaTV)で、眞子内親王の婚約者である小室圭さんを引き合いにだして、こうディスっていたではないか。
「もし数年前に女性宮家の制度ができていたらですね、今ごろ小室圭さんは皇族になっていた可能性があるんですね。今年の1月のお正月の一般参賀で、あそこに小室さんがいて手を振っていたかもしれないわけで。小室さんがいいか悪いかは別にして。何が言いたいかって言うと、民間出身の男性が皇族になるっていうのは我が国の2000年以上の歴史のなかで一例もないんですね。(中略)ですから眞子内親王殿下、佳子内親王殿下がご結婚後も皇族に残っていただける、そこだけ見るとなんか良さそうですけど、じゃあそのね、旦那さんを皇族にしますよと、誰でもいいんですか?と。もしかしたらこれ、小室さんかもしれないわけで」
では、あえて聞きくが、竹田サンは、小室さんが仮に何代前かの天皇の男系の血を引いてさえいれば「ようござんす。めでたしめでたし」とでも言うのだろうか。ちなみに竹田サンにしたって、“明治天皇の玄孫”と紹介されることが多いが、実際には明治天皇の子女の家系なので“明治天皇の男系の玄孫”ではない。男系で見れば南北朝時代まで遡らねばならないらしく、一般的感覚で言えば、現天皇家とはほとんど「男系的に他人」も同然である。それこそ“ブーメラン”ではないが、ネトウヨそのものである竹田サンのような人が皇族になるかもしれないということのほうが、よっぽどヤバイだろう。
「千数百年間も受け継がれてきた皇室のY染色体を手放してはいけない」と朗読した竹田恒泰
結局のところ、十何代も遡らなければ天皇に行き着かない「男系の血筋」にこだわるのは、明らかにカルト的な思想である。しかも、連中は「神武天皇のY染色体を継承できるのは男系男子だけ」などと言っており、その頭の悪さにはほとほと呆れる。
たとえば、最近も竹田サンはYouTubeの「竹田恒泰チャンネル」で、自称・動物行動学研究家の竹内久美子氏が産経新聞に寄稿した「天皇Y染色体論」を嬉しげに紹介していた。なお、竹内氏といえば「セクハラ? チンパンジーでは常識ですよ」なる対談でMeToo運動を批判するようなトンデモだが(https://lite-ra.com/2018/06/post-4051.html)、竹田サンは竹内氏の文章を読み上げて「若い人からすると、これでピンとくる人もいる」などと宣伝。それはこんな文章である。
〈日本の皇室では少なくとも、そして知りうる限り、千数百年にわたり、ほとんど同じYが受け継がれている。Xや常染色体上の遺伝子は交差などによってばらばらとなるなど、世代を経るごとに変化するのに対し、Y上の遺伝子はしっかりと保存されているのだ。〉
〈我々は千数百年間も受け継がれてきた皇室のYを決して手放してはいけない。どの国が、どう逆立ちしても敵わない、最強のYとその継承の歴史を我が国は持っている。天皇陛下となられるお方は、男系でなくてはならないのだ。〉(産経新聞5月15日)
いやはや「最強のY」って……。しかし、本気で言ってそうだからヤバイ。じゃあ、その天皇の「最強のY」を辿るとどこに行くか。本サイトでは何度も指摘していることだが、類人猿に他ならないのである。
結局、竹田サンや日本会議のような“女系天皇反対派”がやりたいのは、戦前の日本の支配構造を支えた「万世一系の神話」の温存でしかない。だからこそ、女性差別の問題をネグって、民間人である旧宮家の子孫を養子に入れるなどという滅茶苦茶なことをほざいてまで、ひたすら「男系男子」をゴリ押しするのだ。
そして、これは安倍首相も同じだ。『モーニングショー』のなかでも、青木氏が自民党極右議員グループの提言について「おそらく安倍さんや安倍さんのコアな支持層の意向をある種、代弁するような形で出してきた」と指摘していたが、事実、安倍首相自身が女系天皇反対派の急先鋒だった。たとえば、2012年の「文藝春秋」2月号では〈皇室の伝統と断絶した「女系天皇」には、明確に反対である〉としてこう語っている。
〈(前略)女性宮家を認めることは、これまで百二十五代続いてきた皇位継承の伝統を根底から覆しかねないのである。
いうまでもないことだが、二千年以上にわたって連綿と続いてきた皇室の歴史は、世界に比類のないものである。そして皇位はすべて「男系」によって継承されてきた。その重みを認識するところからまず議論をスタートさせなければならない。〉
〈二千年以上以上の歴史を持つ皇室と、たかだか六十年あまりの歴史しかもたない憲法や、移ろいやすい世論を、同断に論じることはナンセンスでしかない。〉
基本的人権の制限された皇室をイデオロギーに利用する“男系カルト”
しかも、安倍首相や竹田サンたち“男系カルト”が置き去りにしているのは、憲法と国民の意思だけではない。実は、この「男系男子」の強制こそが、実は天皇家を苦しめ、抑圧していることに触れず、ひたすら自分たちの願望を喚いているに過ぎないのだ。『モーニングショー』のなかで青木氏がこの点に言及していたが、実はそれこそが、本来、国民がなすべき皇室議論から完全に取り残されているものに他ならない。
「僕らが真剣に考えなくちゃいけないのは、女系天皇を認めるか認めないかっていうことをやるんだったら早くしないと、愛子さんとか眞子さんとかのこれからの人生に関わってくるわけですよ。(人生が)一変しちゃうわけでしょ。だって民間に結婚して出ていくのか、あるいは残って場合によっては天皇になるんじゃないかってことになる。その人生にかかわってくるわけで、天皇制を仮に存続させましょうって言ったときに、非常に人権が制限された立場の方々の、さらに人生を考えなくちゃいけないんですよ。それを本当にやるんだったら、女性天皇を早く入れるという方針を入れてやらないとだめなんですよ。じゃないと、どんどんいなくなってしまうし、やるなら早めにやってあげないと、ただでさえ人権が制限されている皇族の皆さんの人生のことを考えなくちゃいけない」
周知のように、天皇や皇族は、わたしたちが当たり前に有している権利の多くが、極めて強く制限される。実際、参政権もなければ、職業選択の自由もなく、表現の自由は大幅に制限され、好きな人と結婚することですらあまりに多くの困難が立ちはだかる。この国では誰しもに基本的人権が保障されているはずだが、皇室だけはその領域から隔絶されているのだ。ところが “男系カルト”は、そうした状態をむしろありがたがってみせる。自分は基本的人権を享受しながら、皇室を祭り上げることで天皇を神格化し、イデオロギーに利用しようとしている。
青木氏が指摘するように、民間人として暮らしていた旧宮家の子弟を、憲法の「基本的人権の尊重」つまり“人間らしく当たり前に生きる権利”の例外へと向かわせることは、すなわち、わたしたち国民の決断として、その“非人間的な生き方を歩ませる人間”を選ぶということに他ならない。それは、仮に法改正がなされ、たとえ「旧宮家の男系男子」その人が自由意志で皇室に入ったとしても同じこと。そこに新たに生まれる赤子は“人柱”だ。産声をあげた瞬間、強制的に人権を制限される。国民は、天皇制を現状維持で黙認しているという以上に、その重たすぎる責任を負わねばならない。
“男系カルト”たちの口車に乗ることは、つまり、そういうことなのだ。連中はしたり顔で「女系天皇は先例がない」「意見の分かれる天皇というのは避けなければならない」「最強のYを継承せよ」などと言うが、いったい何様なのか。いずれにしても、国民が真剣に向き合わないまま、政府主導で皇位継承問題を「解決」させては絶対にいけない。
(宮島みつや)
最終更新:2019.11.06 05:09
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