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最上もがの年齢公表を機に女性アイドルの年齢差別問題を考える…20代半ばで「ババア」「卒業強制」はおかしい
写真集『MOGAMI』(集英社)
少し前のことだが、元でんぱ組.incの最上もがによる年齢公表が話題となったのをご存知だろうか。でんぱ組はグループの方針として年齢を公開していなかったため、グループ在籍中も、また、昨年8月のグループ脱退以降も彼女は年齢を伏せていたが、誕生日である2月25日に〈2月25日!29歳になりました!ありがとうございます。二十代最後!〉とツイート。いきなりの年齢公開にファンからは驚きの声が漏れた。
この突然の年齢公開について、同月26日に行われた写真集『MOGAMI』(集英社)発売記念イベントでの囲み取材で年齢公開の件について質問を受けた彼女は、こんな驚くような経緯を説明している。
「モヤモヤさせるくらいなら言っちゃったほうがいいと。(公表前から)SNSに『28歳のババア』とか中傷コメントがすごくあったんですよ。別に28歳を恥だと思っていないのに、28、28ってすごく強調するからだったら言った方がいいなと、つもりつもって…ちょうど誕生日だったので」(ウェブサイト「ORICON NEWS」より)
また、最上は「ぼくは今、(グループに)所属していないし、恥だとも思っていないので、何歳でも頑張れる」(前掲「ORICON NEWS」)とも語っているが、彼女がここで語っていることは、昨今のアイドル界における「年齢」の扱いを象徴するような発言だ。
そもそも女性に対して直接「ババア」と罵ること自体があり得ないが、そこで「ババア」とされている年齢が「28歳」であるというところに普通ではない価値観を感じざるを得ない。
しかし、これは、当のアイドル自身ですら内面化してしまっている感覚であり、高校卒業ぐらいの年齢になると年下のメンバーから「おばさんイジリ」のようなものを受けるのは定番の現象となっている。かつて指原莉乃は『HKT48のごぼてん!』(テレビ西日本)のなかで「『おばさん』って言ってるほうが可愛いに決まってんじゃん。『おばさ〜ん』って言ってウケるわけじゃん若い子は。ウケるし、こっちの株は下がるし、あっちは『面白い』みたいに言われるし、最悪じゃん」と発言し、そのような状況を問題視していた。
明石家さんま、土田晃之の“アイドル年齢いじり”が表す芸能界の現実
ただ、こういった感覚はアイドルやアイドルファンといった存在のみならず、広く世間に膾炙してしまっているものでもある。
たとえば、明石家さんまは、昨年12月18日放送の『明石家紅白!』(NHK総合)のゲストに乃木坂46を招いた際、白石麻衣が25歳になることを知って「え! 君、もう25!? ウソや!」と発言。あまりの驚きように、口を両手で覆い「25なんですよ。どうしよう」と困惑する白石に対し、さんまは「笑ってしもうてごめん。62歳が笑ってごめんね。乃木坂って、25歳の人いてんの!? ものすごい若いイメージや、オレの頭のなか」とも発言していた。
同じく、土田晃之は昨年放送の『芸能義塾大学』(AbemaTV)に出演した際、「アイドルの限界は25歳」説を提唱。SUPER☆GiRLS、9nine、X21、吉川友といった現役アイドルたちを相手に、なるべく早いうちにアイドルの次のキャリアを模索することをすすめ、このように講義している。
「アイドルファンは基本的にはロリコンですから。もちろん、そうじゃない方もいらっしゃると思いますけれども。逆にですよ、40(歳)になってユニット組んでやってる女性グループ、誰か言ってみてくださいよ。5、6組言えます? 言えないでしょ?」
「AKB48っていうグループを見てても、僕が見て個人名がわかる人たちって、卒業するでしょ? それこそ、モーニング娘。姉さんたち。僕らが見てた、僕が知っているモーニング娘。姉さん、もう一人もいないですよ。中澤裕子さん踊ってます? いないでしょ?」
こういう芸人の“年齢”いじりが成立すること自体が日本の芸能界のセクハラ容認体質を表していると思うが、たしかに、日本の女性アイドルには、20代半ばをすぎると、アイドルグループを卒業せざるを得ない、という傾向があるのは事実だ。
このような傾向は、かつて、日本の男性アイドルグループも同様だった。しかし、SMAPがブレイクして以降、その構図は大きく変わる。男性アイドルは年を重ねてもアイドルでい続けることが可能になった。その状況は現在でも変わっていない。
たとえば、嵐や関ジャニ∞は全員が30代だし、比較的若手扱いをされるKis-My-Ft2ですら、最年長の北山宏光は32歳、最年少の千賀健永でも26歳だ。ジャニーズが1967年に解散したとき、メンバー全員が20歳前後だったことを考えると、状況がいかに変わったかよくわかる。
しかし、女性アイドルについてはいまなお、20代 半ばを超えると、「卒業は当然」という空気になって、本人が希望してもアイドルを続けることが不可能になるというのが現実だ。これは明らかにおかしいのではないか。
いや、アイドルが続けられないだけではない。議論を発展させると、これまで述べてきたような日本の女性アイドル界に特有の「年齢」問題は、グループから離れた後のキャリアにも影を落としている。
乃木坂46・橋本奈々未、ももクロ・有安杏果の芸能界引退の衝撃
2008年ごろに端を発するAKB48の大ブレイク以降、「アイドル戦国時代」という言葉まで生まれるほど多くのアイドルグループが登場した。
しかし、数年前より徐々にブームは収束。℃-ute、Rev. from DV、GEM、アイドルネッサンスなど、大手事務所所属のアイドルグループですら解散が相次いでいる。
そして、目立つのが、メジャーなグループでセンターポジションに近い位置にいたような人気メンバーが、グループ卒業とともに芸能界自体も引退してしまうケースだ。
たとえば、乃木坂46の人気メンバーで、「CanCam」(小学館)の専属モデルとして女性からも人気のあった橋本奈々未。彼女は昨年2月にグループを卒業したが、それと同時に芸能活動も終了。グループから離れても十分に芸能活動が可能なほどたくさんのファンを抱えていたメンバーだっただけに、その決断には多くの驚きの声が漏れた。
同様のケースで最近大きな話題を巻き起こしたのが、ももいろクローバーZの有安杏果だ。彼女は今年1月15日、突然、グループからの卒業を発表。しかも、同月21日開催のライブをもって活動を終えるという異例の慌ただしさでファンを驚かせ、悲しませた。
そして、ファンにとってさらに衝撃だったのが、今後の芸能活動について語らなかったことである。有安はオフィシャルブログに〈子役時代から22年間やってきた世界から一度距離を置いて、普通の女の子の生活を送りたいという想いが強くなり、わがままを受け入れてもらいました。これから私は何をするか具体的には何も決まってません。逆に何も予定のない日々を人生で一度くらい過ごしてみたいなと思ってます〉と書き、復帰の可能性を否定してはいないものの、今後の芸能活動については白紙であるとした。
ももクロは、モーニング娘。やAKB48が採用しているような「卒業したら新メンバーを加入させて新陳代謝していく」というグループのかたちとは、また別のものを模索しようとしていたグループだった。ももクロも、グループ発足直後こそメンバーの入れ替わりの激しいグループだったが、11年に早見あかりが卒業して以降、グループ名を「ももいろクローバーZ」に改めてからは特にその傾向が強かった。
たとえば、16年に行われたイベント「ももいろクローバーZ ももクロくらぶxoxo バレンタイン DE NIGHT だぁ~Z!2016」開演前囲み取材では、百田夏菜子が「私たちの目標は昔からSMAPさんや嵐さん、ドリフターズさんみたいな、メンバーがそれぞれでも活躍できて、みんなでそろったらグループとしての輝きを持てるような存在になりたい」(ウェブサイト「ORICON NEWS」より)と発言している。
アイドルを取り巻く厳しい現実、乃木坂46では卒業ラッシュも
アイドルという仕事を、10代から20代前半ぐらいの時期だけの期間だけに限定したものにはせず、彼女らは息の長い活動ができるようなグループを目指していたが、結局その理想は崩れてしまった。「BUBKA」(白夜書房)18年3月号のインタビューのなかで有安は卒業を考えた経緯と理由についてこのように答えている。
「具体的に卒業を考えはじめたのは1年ぐらい前ですかね。ちょうど大学卒業のタイミングですよ」
「周りの同級生はみんな、大学を卒業するタイミングで就職とか、新しいスタートを切るわけですよ。それぞれが勇気を持って新しいスタートに向かう姿を間近で見ていて、私ももっと成長したいな、自立したいなって。もちろん勇気はいるんですけど、私にとって新しいスタートを切ることが、ももクロからの卒業ってことになっていったんです」
もちろん、アイドルグループを卒業した後に芸能人以外のキャリアに進むこと自体は問題でもなんでもない。本人がそれを希望するのであれば、既得権を捨て去るその勇気には拍手を送りたいくらいだ。
しかし、年を重ねたことで自分に価値がなくなったと考えた結果、明るい未来が見出せないために、やむを得ずそうなっているなら問題だろう。実際、まるで「アイドルは20代前半で定年」とでもいわんばかりの風潮が世間にあるのだから、なおさらだ。
ももクロが理想と唱えていたような道筋の先にいる稀少なグループとしてPerfumeの名が挙げられる。ただ、Perfumeがそのような存在になれた背景には、中田ヤスタカによる楽曲、MIKIKOによる振り付け、ライゾマティクス・真鍋大度による最新技術を駆使したステージ演出などの優秀な裏方のクリエイティブによるものも大きく、SMAPのようにアイドル業界の流れを抜本的に変革するような存在にはなれていない。
前述した白石麻衣をはじめ、西野七瀬が23歳、秋元真夏が24歳になるなど、乃木坂46の主要な人気メンバーの大部分が20代中盤に差し掛かりつつある。このことから、今後グループから卒業ラッシュが起きるのではないかと言われているが(生駒里奈はすでに卒業発表済み)、今後も「アイドル卒業=引退」という流れは続いてしまうのだろうか。
(新田樹)
最終更新:2018.03.25 07:59
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