川上奈々美、森林原人、カンパニー松尾…AV出演が家族にバレた女優や男優はどう修羅場を乗り切ったのか…

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川上奈々美公式ブログより


 AV業界では、人気のあった女優が引退宣言を行うこともなく突如ファンの前から姿を消してしまうことがよくある。そういったケースのなかで多いのが、「親バレ」による引退だ。公式に発表されるわけではないからあくまで憶測の域を出ないが、新作のリリースが突如止まると、ネットでは「親バレしたか……」といった声がたびたび漏れる。

 AV関係者にとって「親バレ」とは、いったいどれほどのインパクトをおよぼすものなのか。そんな疑問に応える、「「親公認AV女優」たちの親子関係深イイ話」という特集が「週刊プレイボーイ」(集英社)2016年6月27日号に掲載された。川上奈々美、南梨央奈、澁谷果歩ら3人の人気女優が、どのような経緯で自分の職業が身内にバレ、それから家族間でどんなすったもんだがあったのかを赤裸々に語っている。

 まずは、恵比寿★マスカッツの副キャプテンとしても活躍中の川上奈々美。12年1月にデビューした彼女だが、そのわずか半年後、3歳上の兄がネットで作品を見つけたことがきっかけで親バレしてしまったと言う。

 兄や弟がいると、このような経緯でバレてしまうケースは多い。成瀬心美も11年7月のブログで、自分から告白する前に兄はAVの仕事のことを知っておりブログも読んでいると告げられた顛末を語っていたが、年頃の男であれば、当然そういったビデオに触れる機会も多いわけで、バレる確率は上がるのだろう。

 川上奈々美の件に話を戻すと、彼女がAV女優であることを知った母の反応は、強烈なものであったという。その修羅場についてこのように語っている。

「すぐに母親から電話がかかってきて『こんな子に育てた覚えはない。完全に信頼関係をなくしました』って怒られました。母親はドラマのキスシーンでもいやな顔をするほど“潔癖”な人だから、娘がAVやってるなんて、絶対に許せなかったんだと思います」

 しかし、自分の仕事にやりがいを見出し始めていた彼女は、親の反対も押し切り仕事を続けていく。結果として、実家とも距離を置くことになってしまったというが、そんな関係が変わったのは、彼女が初めて舞台に出演することになったとき、両親を招待したことがきっかけだった。

 その舞台は、ワケありの男女が各々の秘密を抱えながら合コンに参加し、次第にその秘密が明かされていくという群衆劇。彼女の役は、AV女優であることを隠して合コンに参加する女の役だった。自分自身を投影した役のセリフのなかに、彼女は両親へのメッセージを込めていた。

「劇中に『両親は反対しているかもしれないけど、私はこの仕事を誇りに思っている』っていう自分で考えた長ぜりふがあったんです。もちろん、両親に舞台の内容は話してなかったんで、あれを見てもらうのは正直、一か八かの賭けでしたね」

 その舞台を見て、母は泣いていた。それ以降、二人の距離は縮まったという。

「それから少しずつお母さんとも電話で話をするようになりました。舞台も毎回、見に来てくれて、そのたび泣いてました。でもことあるごとに『早く芸名を変えて、脱がない仕事をやって』って言ってくるんですよね(苦笑)」

 そうは言うものの、彼女が弱音を吐くと、「いまさら、途中で辞めるなんてダメでしょ!」と叱咤激励してくれる、そんな関係になることができたと語る。

 続いては、東京スポーツ新聞の記者からAV女優へと転身した異色の過去をもつ澁谷果歩。彼女が親バレしたきっかけは、なんと、プロレスラーの前田日明だったという。いったいどういうことなのか?

「もともと、私の父が前田さんのリングドクターを務めていて、家族で仲良くさせてもらっていたんです。ところがAVデビューしたとき、私の『元東スポ記者』という経歴が派手に週刊誌にスクープされて、前田日明さんにも伝わったみたいで。心配した前田さんが父親に連絡したみたいで」

 父が医者で、子どもたちを幼稚園から私立のエスカレーター校に通わせるような厳格な家庭からAV女優が出るというのは、親にとっては天地がひっくり返るような衝撃的な出来事にあったに違いない。

「母から『今日、とにかく早く帰ってきなさい』ってLINEメールが来たんです。家に帰ったら仏壇に線香がたかれてました(苦笑)。母は今にも死にそうなか細い声で『澁谷果歩って知ってる?』って聞いてきたのを覚えてます」

 この後、「この子は頭がおかしいに決まってる」と、彼女を知り合いの精神科医まで連れていくなど、その拒否反応はすさまじいものがあったという。そんな関係が雪解けするきっかけは、親バレから3カ月後、彼女が実家を出て一人暮らしを始めたことだった。

「それまでずっと実家暮らしだったんで、親は『あの子はひとりで生きていけるか』と心配されるようになりました。AVのことは理解はされないけど、ちゃんと打ち明けてからは、頭ごなしに怒られることはなくなりました。スポーツ紙の連載を読んだ父が『文章がうまくなったね』と言ってくれたり、確定申告や税金のアドバイスをしてくれたのはうれしかったですね」

 実家を飛び出したことで、娘がどれだけ本気なのかが理解できたのだろうか、表立って賛成はしていないものの、それ以降、これまでのように反対されることはなくなったと語る。

 こういった二人のケースとは真逆で、何の問題もなくスムーズに親公認AV女優となるパターンもある。南梨央奈がそうだった。

「デビューして1年くらいたった頃ですね。帰省して母親と飲みに行ったタイミングで自分から打ち明けました。(中略)母親に打ち明けたら『へえ〜。楽しく仕事できてるの?』って。まったく怒らないどころか、『ママもやってみたいわ〜』なんて冗談交じりに言ってました。普通の人は驚くかもしれないけど、私にとっては予想どおりの反応でしたね」
「お父さんも『やりたいことだったら応援するよ』って。お兄ちゃんも『味方が多い世界じゃないんだから、身内の俺たちが応援してあげるんだよ』って言ってくれました。AVに対する偏見がまったくない家族なんです」

 ただ、両親とも口ではそうは言うものの、やはり心中は複雑なものがあるようで、「以前、父親には『おまえの芸名を検索したけど、さすがにDVDの中身は見れなかった』って言われましたけど(笑)」とも語っている。

 紗倉まなも、著書『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)のなかで、自分から親に仕事のことを打ち明けたと綴っているが、及川奈央や成瀬心美などAV女優からタレントに転身する人が出るようになったり、また、恵比寿★マスカッツのメンバーを始め、現役でAV女優としての活動を続けながらアイドル活動をする人も出ている昨今、AV女優という職業に対する忌避感も薄れたのだろうか、このように自ら打ち明ける人も珍しくはなくなっている。

 ただ、そんな昨今でも、なかなか衝撃的なのが、桜井あゆのエピソードだ。ウェブサイト「幻冬舎plus」の連載「親公認AV女優 裸になる娘とその親たち」で、桜井あゆはこのように語っている(サイトでは「桃乃遥香」という仮名でのインタビューとなっているが、後に本人がツイッターで自分のことであると告白している)。

「AVは親も地元の友達もみんな知ってます。デビューのときから『あたし、AV女優になったんだ』って自分から言いました。同い年の友達からしたら『俺の友達AV女優なんだぜ!』って恰好の話のネタじゃないですか、あはは。デビュー作は口コミでも有名になっていたみたいで売り上げは良かったみたい」
「(AVに)出るだけじゃ親にはバレないけど、雑誌とかに出ちゃったら絶対にバレると思った。なのでデビュー1ヶ月くらいして週刊誌でのグラビアの仕事が入ったとき、撮影が終わったその日のうちにお母さんに電話で言いました。反応は『あ、そう』って(笑)。『あんたが死ぬこと以外、なにも驚かないよ、どうせ私たちが止めたところであんたはやるでしょ。だったらやればいい。ただ体には気をつけなさいね。やりたいところまでやってみなさい』ってLINEがきました。さすがにそれは驚いたけど私も『絶対に恥ずかしくないくらい有名になるから』って伝えましたね」

 ここまで女優たちの親バレエピソードを見てきたが、当然のことながらAVは女優だけでつくっているわけではない。男優もいれば監督もいる。そういったAV業界の男たちは、身内バレに関してどのような葛藤を抱えているのだろうか。

 日本一の難関校、筑波大学付属駒場中学・高等学校出身という、これまた異色の経歴をもつAV男優の森林原人が親バレしたのは、大学時代、AVの仕事ばかりで学校にほとんど行かなくなってしまったのが原因だった。

「AVの仕事を始めてから2年が経った頃に、大学から「履修届けが出てない」っていう連絡が母親に入っちゃって。当時、僕は実家からの通学だったのですが、母親から「あんた大学に行くっていって、どこに行ってるの? 今日は何時まででも待ってるから、話をしましょう。待ってるから」って留守電に入ってたんです。ちなみにそれ、母の日だったんですけど」
「いざ両親と対面して、どう説明しようか悩んでいると、向こうから「どんな宗教団体に入ったんだ?」って。AVやってるなんて頭の中にはなかったんでしょうね。「AV男優やってるんだ」って正直に告白したら、しばらくの沈黙の後、父親が「そんなことをさせるために今まで育ててきたんじゃない」って」(鈴木おさむ『AV男優の流儀』扶桑社)

 結局その後も表立ってAV男優という仕事を認めてくれることはなかったと言うが、そんな自分の仕事のことを少し理解してくれているのかもしれないと思わせるエピソードがあった。それは以前付き合っていた彼女と結婚の話が出たときのこと。彼女に「私と結婚したいならAV男優を辞めてくれ」と言われ、そのことを相談すると、親は厳しくこう言った。

「あんた10年も続けたんだからプライドを持ちなさい」

 ちょっとホロリとする良い話である。ただ、ある程度の年齢になったら引退する女優と違い、一生アダルト業界で生きていくことの多い場合、親バレ以上につらいものがある。子バレである。カルト映画と化した『劇場版テレクラキャノンボール2013』の生みの親であるAV監督のカンパニー松尾は、子どもに自分の仕事を説明するにあたっての苦悩をこう語る。

「僕も子どもが小学生の低学年ぐらいの頃は仕事を聞かれてもテキトーに「カメラマンだよ」なんて言ってたんです。でも、中高生とかになったら「どんなカメラマンなの?」「何を撮ってるの?」なんて聞きたくなりますよね、普通。でも聞かれたら困るから、家では仕事のことは極力触れない。もう気づいていてもおかしくない年頃ですよ。もし気づいてくれてて、僕に気を使ってるだけなら逆に見せたいものもあるんです。AVじゃなくて。幼い頃の子どもをムービーで撮ってて、それをPV風にまとめてるんです。本当はそれを見せてあげたいんですよ。子どもの反応を見たいんです。「お父さんは映像の仕事をやってたんだよ」って言いたい。でも、まだ言えないんです」(前掲『AV男優の流儀』)

 サングラスがトレードマークの強面のルックスからは想像もできない発言だが、ハメ撮り監督として自ら男優も務め画面に映ることも多いカンパニー松尾監督だから、その葛藤はより深いものなのかもしれない。

 ただ、そんなに気にせずとも、子どもは親の仕事を知ったとしても何も思わないものなのかもしれない。V&Rプランニングの元代表取締役で、黎明期からAV業界に関わる安達かおるはこう語る。

「一番上の子供が18歳になった時に、実は「俺の本当の職業はな……」って初めてカミングアウトしたんですね。意を決して。そしたらすごい笑われて。「そんなの小5の頃から知ってるよ」って(笑)。中学校で私の作品がクラスで話題になって「俺すげー困ったんだからな」とか言われて」(前掲『AV男優の流儀』)

 インターネット時代に入り、AVの映像を見ることは格段に容易になった。特に変わったのが、10年前、20年前にリリースされた過去作品も簡単に見ることができるようになった点だ。DMMなどの動画配信サイトにアクセスすれば、DVDやVHSでは入手困難な作品もクリックひとつで簡単に見ることができる。

 先日当サイトでも取り上げたが、ゴールドマン・サックス社に内定を受けていた女性が、過去のAV出演歴が明るみになったのがきっかけで再度身辺調査が行われ、結果的に内定取り消しになってしまった騒動は話題になった。

 そういったネット時代ならではの事情により、親バレ、兄弟バレ、友だちバレ、子バレなど、親しい人たちにAV出演がバレるリスクは以前に比べれば高くなった。AV業界に対する偏見もだいぶ減った昨今だが、今後もこのような葛藤にまつわる小咄は、AV関係者の間で生まれ続け、語り続けられるのであろう。
(田中 教)

最終更新:2018.10.18 05:47

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