マスゴミ(マスコミ)に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
年末特別企画 リテラの2015年振り返り
安倍、橋下、憲法がタブーに…リテラが選ぶメディアタブー大賞2015 第5位〜第2位、そして大賞発表!
いよいよ大賞発表!!
年末恒例リテラ編集部が選ぶ「メディアタブー大賞」、つづいて、5〜2位、そして栄えある(?)大賞を発表しよう。いったい今年、メディアを凍りつかせたのはなんだったのか!
★5位 罵倒されても橋下徹に尻尾を振り続けた在阪メディア!「橋下劇場」の共犯者はマスコミだ
今月、おおさか維新の会代表を引退し、18日に大阪市長を任期満了、政界から引退した……はずの橋下徹氏。が、政界引退早々、安倍晋三首相、菅義偉官房長官の2人と改憲について話し合ったり、さらには法律政策顧問という肩書きで夏の参院選に向けたおおさか維新の公約づくりに参加することが発表されるなど、「これで政界引退って言うの?」という状態に。しかも本人は「私人」であることをアピールし、「社会的評価を低下させる表現に対しては厳しく法的対処をしていきます」と恫喝のようなツイートまで行っている。
この、最後までやりたい放題だった橋下氏に対して、在阪メディアは問題を追及するどころか、尻馬に乗るという愚行を働きつづけてきた。いや、この8年間、橋下氏が気に入らない記事や番組、それを報じた新聞社やテレビ局、ときには記者やコメンテーターの個人名まで挙げて激しく口撃しつづけた結果、メディアは完全なまでに橋下氏に取り込まれてしまったといっていい。
たとえば、橋下氏がぶち上げた「大阪都構想」をめぐっては、反対派の急先鋒だった藤井聡・京都大学大学院教授に対して「バカな学者の典型」「この、小チンピラ」とツイッター上で罵るだけでなく、テレビ各局に「藤井を出すな」という内容の“要請文”を出していたことが発覚。もちろん文書では、自民党の“伝家の宝刀”となった〈放送法四条における放送の中立・公平性に反する〉という、放送法を曲解した脅し文句も御多分に洩れず忘れていない。
こうした状況もあって在阪メディアはすっかり萎縮。いざ都構想の住民投票を控えても、テレビの番組はほとんどで「賛成派はこう言っている、反対派はこう言っている」と動向を並列に伝え、表面的な解説やコメントを加えるだけ。ワイドショーや情報バラエティのなかにはそもそもこの問題を取り上げようとしない番組さえあった。
しかし、こうして都構想の反対意見は影を潜め、橋下氏に配慮した番組づくりが横行していったにもかかわらず、大阪市民が住民投票によって下したのは「NO」という結果だった。そうして橋下氏は政界からの引退を発表するにいたるが、その会見でも、不自然なまでの笑顔とサバサバした口調で自らの潔さをアピール。本来ならば都構想問題が総括されるべき場であったのに、マスコミは逆に橋下氏が目論んだ“イメージアップ会見”をアシスト、「70万人の方が都構想に賛成した」「(引退)発言を覆してほしいと思っている有権者も多い」などとさんざん持ちあげるだけでなく、「お疲れさま」「やめないで」とラブコールを連呼したのだ。
だが、橋下氏はそんな会見での態度を一転させ、手のひら返しで「大阪維新の会」の国政政党化を表明。当然ながらこの無節操をメディアが追及することもなく、11月に行われた大阪府知事・市長のダブル選挙ではおおさか維新の会が圧勝を果たした。そして12月の退任会見では、冒頭から橋下氏が一方的にメディア批判を繰り出したにもかかわらず、対する記者たちは「エネルギーが枯渇したようにはまったく見えない」などとヨイショしつづけたのだ。
批判は封じ込めようとし、自分にとって都合のよい情報を流すメディアを優遇する政治家に、まんまと籠絡されてしまった在阪メディア……。橋下氏がこの後、国政に進出したら、大阪で起きたことが全国規模で起きる可能性もあるし、権力が衰えないかぎり、今後もつづいていくだろう。
★4位 東京五輪問題の根本的戦犯である電通の利権独り占めに触れないテレビ・新聞、週刊誌
新国立競技場をめぐるドタバタ劇に、佐野研二郎氏のエンブレム騒動など、今年のメディアを賑わせつづけた2020年東京オリンピック問題。これらの戦犯として東京五輪組織委員会の森喜朗会長の名が取り沙汰され、週刊誌ではその責任を問う声が見られたが、しかし、その裏でメディアが追及しなかったのが、電通と博報堂という大手広告代理店の責任問題だ。
たとえばエンブレム問題では、審査委員長の永井一正氏は佐野氏が博報堂時代に師事した間柄で、審査委員の長嶋りかこ氏も博報堂時代の佐野氏の部下だったりと、裏には博報堂人脈があった。また、公式エンブレムの公募開始前に佐野研二郎氏をふくむ8名のデザイナーに応募を要請し、2次審査へ進ませるよう要望、永井氏に耳打ちして投票を行わせていたのは、槙英俊・組織委マーケティング局長と、組織委クリエイティブ・ディレクター兼審査委員の高崎卓馬氏という電通からの出向組だった。さらに、高崎氏はパクリが発覚したサントリーのトートバッグなど、電通の仕事でも、佐野氏を重用しており、エンブレムでも佐野氏をプッシュしたとの疑惑が浮上した。
こうした“広告クリエイター村”の癒着については一部週刊誌でも問題視する論調が見られたが、しかし、問題の本質はもっと根深い。
そもそも2020年の東京五輪は、招致活動から一貫して電通が食い込み、開催決定後はマーケティング専任代理店に選ばれたという経緯がある。つまり、あらゆるマーケティングや広告利権をすべて電通に集約させるよう動いていたのが、高崎氏ら社員だったのだ。本来はこの根本の問題こそ追及されるべきなのだが、電通といえばテレビや新聞、雑誌という日本のメディアの広告を牛耳る巨大組織。兵站である社員は批判できても、本丸をバッシングすることはできない、というわけだ。
槙氏と高崎氏は事実上の更迭という人事がなされたが、これはたんなるトカゲの尻尾切り。電通の利権ひとり占めという構造的問題は、メディアによって掘り下げられることはないまま、2020年まで放置されていくはずだ。
★3位 東芝の不正事件で「粉飾決算」表現を封印! 裏には原発タブーと安倍政権との癒着が
総額2000億円超の巨額“粉飾”が発覚した東芝事件は、国策に関与する巨大旧財閥系企業がこの国では。いまなおタブーになっていることを証明したといえるだろう。
というのも、この問題に対する新聞・テレビの動きの鈍さは異常とも言えるものだからだ。
東芝が巨額売り上げ水増ししていることは、すでに今年4月の段階でSESC(証券取引等監視委員会)に告発がなされており、5月には各社ともかなりの証拠をつかんでいた。ところが、メディアは当初、ほとんどこれを報道しようとしなかった。
7月21日には粉飾決算を調査した第三者委員会報告書の全文が公表され、過去7年間で1500億円を超える利益の水増しの事実に加え、歴代の経営トップが関与して“不適切会計”が行われたことが明らかになったが、この時も報道は散発的。ライブドアやオリンパス、山一証券事件の時に見せたような厳しい追及はまったくなかった。
とくに唖然とさせられたのは、第三者委員会が利益水増しを確定した段階でも、「粉飾決算」という言葉を使わず「不適切会計」というあいまいな言葉を用いたことだ。
マスコミのこうした弱腰の理由のひとつはもちろん、東芝が大スポンサーだからだ。東芝はグループ全体で年間329億円もの宣伝広告費を計上しており、これは日本の企業ではかなり上位に入る。それに配慮して、自主規制しているというのはあるだろう。
だが、マスコミにはもうひとつ、この東芝問題に触れられない理由があった。東芝は11月にも“疑惑の本丸”といわれていた原子力事業の損失隠しが発覚したが、その問題の中心人物というのが佐々木則夫元社長だった。
じつは佐々木元社長は社内で「原発野郎」と揶揄されるほどの人物で、第二次安倍政権発足後、政権に深く食い込んで海外への原発売り込みにも積極的に関わっていた。詳しくは本サイトでも追及しているが(過去記事参照)つまり、たんなる一企業の経営問題ではなく、背後に安倍政権と原発ビジネスが絡んでいたのだ。
実はこの事件については、こうした政権との関係から検察の動きも非常に鈍い。たとえば、ライドア事件ではわずか53億円の粉飾金額で堀江貴文元社長が刑事摘発され、その他の粉飾事件でも経営幹部がことごとく起訴されているが、東芝については全く動きがないのだ。
12月末には、一部のメディアでSESC(証券取引等監視委員会)が田中久雄、西田厚聡、そして佐々木則夫の歴代3人の社長を検察に刑事告発する方針を固めたと報道されたが、予断は許さない。一応、刑事事件として捜査するポーズをとるだけで、検察で起訴猶予になるだろうともいわれている。
だが、こうした権力との癒着についても、マスコミはまったく取り上げることはない。この先も、刑事事件にならないかぎり、マスコミが東芝を追及することはないだろう。
★2位 政策批判も金銭問題も…安倍政権の圧力はテレビ、新聞、週刊誌にまで! 菅官房長官の恐怖支配
この1年、もっともメディアのタブー化が進んだのが、政権批判だろう。とくに安保法制をめぐる議論では、テレビは昨年末に自民党が送りつけた“圧力文書”が影響し、TBSの『NEWS23』や『報道特集』などの一部番組や、テレビ朝日『報道ステーション』などを除いては、ただ政権の言い分を垂れ流すような報道姿勢に終始。とくに『報ステ』での古賀茂明氏による「I am not Abe」発言では、官邸は大激怒。古賀氏のコメンテーター降板やプロデューサー更迭という問題にまで発展した。
新聞も同様だ。読売と産経が露骨な政権支持を紙面化しただけでなく、昨年の誤報問題が尾を引いてか、朝日までもが弱腰に。毎日や東京新聞などの一部ブロック紙、地方紙が奮闘したものの、ほぼ大手新聞は安保法制の問題や政権側の説明の矛盾点などの正当な検証を怠った。
まさに体たらくと呼ぶほかないが、じつはメディアが沈黙したのは安保法制の問題だけではない。新国立競技場の建設問題でも、その戦犯として東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長への追及は行っても、安倍首相の責任にふれるメディアはほとんどなし。計画の白紙撤回時には、あたかも安倍首相の英断であるかのように報道されたが、そもそもIOC総会で「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから確かな財源措置に至るまで、その確実な実行が確証されている」と宣言したのは安倍首相ではなかったのか。
しかも、安倍政権が圧力によって批判を封じ込めたのは、テレビと新聞だけではない。
たとえば、今年「週刊ポスト」(小学館)は、4月に高市早苗総務相の大臣秘書官をつとめる実弟が関わったとされる「高市後援会企業の不透明融資」問題を、つづく5月には菅義偉官房長官の日本歯科医師連盟(日歯連)からの3000万円迂回献金疑惑を報じた。しかも菅官房長官の疑惑はただの噂レベルではなく、政治資金収支報告書からも読み取れる明らかなもの。本来なら、一大政権スキャンダルに飛び火しておかしくないネタだ。
だが、「ポスト」の報道に官邸は激怒。まず、高市総務相の問題では、高市氏の実弟がすぐさま「ポスト」を名誉毀損で訴えたが、これが当時の三井編集長だけでなく、発行人の森万紀子氏、担当編集者、ライターまでをも被告にするというスラップ訴訟だった。さらに高市氏の実弟は警視庁への刑事告訴まで行った。じつはこの訴訟は菅官房長官の指示によるものとされているのだが、今度は自分の迂回献金疑惑が報じられてしまい、菅官房長官は怒り心頭。会見で「ポスト」への訴訟をちらつかせた。結果、「ポスト」は三井編集長を更迭し、政権批判は完全にトーンダウンしてしまった。もちろん、高市総務相と菅官房長官の金銭問題を、テレビと新聞は後追いすることなくほぼ無視しつづけたのは言うまでもない。
その後、安倍首相の体調不良問題を報じた「週刊文春」(文藝春秋)や「週刊現代」(講談社)にも抗議を行うなど、テレビや新聞だけでなく、ついに週刊誌にまで圧力をかけはじめた安倍政権。なかでもいまメディアがもっとも恐れているのは、菅官房長官だ。強硬にメディアの政権批判封じを行うその姿勢に、新聞もテレビも、そして週刊誌編集部も震え上がっているという。
その結果、どんな事態が日本に起こってしまったのか。それが次に紹介するタブーである。
★メディアタブー大賞 「憲法を守る」がタブーになるという異常な状況! 安倍政権による憲法攻撃は来年、さらに激化する!
安倍政権がメディアに睨みをきかせ、放送法や訴訟をちらつかせつづけた結果、信じがたい異常な事態が生み出されてしまった。それは、「憲法を守ろう」という法治国家の大原則の声すらタブー化してしまう、というとんでもない状態だ。
昨年も、NHKが天皇・皇后による「平和と民主主義を、守るべき大切なもの」という発言をカットするという事件があり、憲法タブーが3位にランクインしたが、今年はこれが文句なしの第1位、「メディアタブー大賞」だ。
何しろ、「憲法九条を守ろう」という集会を開こうとしただけで公共施設が「政治的な主張の集会には会場は貸せない」と拒否する事例が相次いだり、東京都日野市の市役所は封筒に印刷された「日本国憲法の理念を守ろう」という文言を黒いフェルトペンで塗りつぶだれていたり、とまるで戦前のような光景が繰り広げられているのだ。
あらためて言うまでもないが、「憲法を守る」ことは公務員や政治家にとって義務だ。しかし、第二次安倍政権が地道に憲法問題をタブー化してきた結果、「憲法を守る=政治発言」という風潮がすっかり根付いてしまったのである。
それはメディアも同じだ。本サイトでも詳しく報じたが(過去記事参照)、例年なら憲法記念日前後にテレビのニュース番組では憲法特集を行ったり、全国で開かれた憲法イベントを詳しく紹介するはずだが、今年は『サンデーモーニング』や『NEWS23』(ともにTBS)などのごく一部の番組を除いて、ほとんどすべての番組がストレートニュースとして紹介。とくにフジテレビはストレートでも取り上げることはなく、憲法のケの字すら出てこない始末だった。
つまり、護憲か改憲かではなく「憲法問題にふれる」こと自体が禁忌になりつつある状況下で審議されたのが安保法制だったのだ。たしかにこんな状態では、いくら根本的な問題として「安保法制は違憲」「立憲主義に反している」と声が湧き上がっても、一部メディアを除いてまともに取り上げられることはなかったわけだ。
しかも、もっと恐ろしいのは、「憲法を守れ」という当然の声が、警備や警察の取り締まり対象になりつつあるという現実である。こちらも本サイトで詳しく紹介したが(過去記事参照)、「No.9(憲法9条)」と書かれた缶バッチを身につけているだけで国会本館や議員会館では警備員に入館を制止されたり、国会周辺で「平和がだいじ」と書かれた絵本袋を持っているだけで職務質問を受けるという事例が発生。音楽評論家でラジオパーソナリティであるピーター・バラカン氏も、「9条のTシャツを着ているから」という理由だけで警官に呼び止められたエピソードを自身のラジオ番組で明かしていた。
ようするに、戦中、政府が特高警察によって戦争反対の意見を持つ市民を社会主義者や共産主義者という“思想犯”に仕立て上げて取り締まったのと同じように、いま、「9条」や「平和」のメッセージを身につけているだけで、“危険思想”の持ち主かであるかのように扱われる事態が起きているのだ。
この背景には、間違いなく安倍政権が進める“改憲への道”がある。安倍首相が描く“改憲スケジュール”は待ったなしで、本格的着手は来年の参院選後と言われているが、自民党や日本会議などの右派勢力は改憲の世論づくりのために、あらゆる場所で日本国憲法への攻撃を強めている。
この流れは間違いなく今後、テレビや新聞にも踏襲されていくはずだ。何度も繰り返すが、現行憲法を守ることは、安倍首相をはじめすべての政治家、すべての公務員に義務づけられている。しかしこの異常な空気のままで改憲の議論に雪崩れ込めば、メディアは護憲の意見を封殺し、憲法批判を繰り出すだろう。はっきり言って、戦後最悪の言論状況と言わざるをえない。
すでに官邸の圧力によってTBS上層部は『NEWS23』のアンカー・岸井成格氏、膳場貴子キャスターの降板を画策し、『報ステ』にいたっては古舘伊知郎が降板を発表した。もうすでに来年の改憲議論へ向けて布石はメディアに打たれている。
この安倍政権がつくりだしたタブーをメディア自身が打開しなければ、ほんとうにこの国は、戦前に戻ってしまうだろう。
(編集部)
最終更新:2016.01.01 07:37
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