JRでタブーになった「リニア新幹線」慎重論…「新幹線の父」の意見も封印

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画像は「リニア中央新幹線ホームページ」より


 JR東海が2027年に東京~名古屋間での先行開業をめざすリニア中央新幹線は、この秋にも着工される予定だ。来たる10月1日には東海道新幹線の開業からちょうど50年を迎える。JR東海としては着工をその時期に設定することで、高速鉄道の歴史におけるリニアの正統性をアピールするという思惑もあるのだろう。

 だが、ほかならぬ東海道新幹線の計画を推進し「新幹線の父」とも呼ばれる人物が、リニア開発に懐疑的であったという事実はどのぐらい知られているだろうか。

 その人物の名は島秀雄という。1955年に当時の国鉄総裁・十河信二の申し入れで、副総裁格の国鉄技師長となった島は、十河とともに東海道新幹線の実現に尽力した。おそらく彼らがいなければ新幹線は完成しなかっただろうし、大都市間の旅客輸送の主役は鉄道から飛行機や自動車へと完全に移行していたはずだ。それだけに、島が新幹線の進化形ともいうべきリニアに疑念を抱いていたというのは、意外な気すらする。

 リニアに対する島の立場は一貫している。それは、技術的にはおおいに研究すべきだが、実用化には慎重にならねばならないというものだった。以下、彼の亡くなった2年後、2000年に出版された『島秀雄遺稿集―20世紀鉄道史の証言―』(日本鉄道技術協会)から、過去の雑誌や新聞記事におけるリニアへの言及箇所を、時代を追って確認してみたい。

 旧国鉄におけるリニアモーターカーの研究は東海道新幹線の開業前夜、1960年代前半より始まり、1970年の大阪万博では、実際に磁力で浮上走行する模型が展示された。この時点で島は、リニアモーターは原理としては簡単なので、模型をつくるぐらいなら何でもないとしつつ、次のように指摘していた。

《それを大電力でもって、電車のようなものに実用化するというところに問題があるんですよ。(中略)それを本ものにしてわれわれエコノミック・アニマルが社会生活に使うものとして役立つようなものができるか、どうかということが実現上の問題として残るのです》(『週刊朝日ゼミナール』1970年12月9日号)

 島は、リニアを高速で運転するには大量の電力を必要とすることを見抜いていた。この問題は現在にいたっても解決したとはいえず、リニアの電力消費は現行の新幹線の3~5倍(時速500キロで走行した場合)であることが指摘され、反対論の一つの根拠となっている。

 さらに、東海道新幹線が開業から10年を迎えた1974年の雑誌記事には、次のような島の言葉が見られる。

《わたしは技術屋が、何か技術的可能性を確立したい、あるいは形に現したいと考えるのは無理ないことだと思うのです。そういうことで一所懸命研究することは、とくに若いエンジニアの士気高揚のためには非常に必要です。だから、いま未来交通の花形のようにいわれてるリニアモーターの研究など、わたしがまだ国鉄にいたころからやってもらっています。(中略)しかし一方、そういう技術的可能性が仮に実現した場合、社会生活の面でどういうことが起こるか、交通経済的、社会的な研究をやる人がもっといなければいけないと思います》(『季刊中央公論』1974年冬季特別号)

 この記事のタイトルは「不肖の息子・新幹線を語る」というものだった。時期的にはちょうど東海道新幹線の騒音公害が社会問題化していた頃にあたる。騒音のことなど、新幹線の開発中にはさほど深く考えられていなかった。それだけに島は自らの反省も踏まえて、リニアのような新技術の実用化に際しては、社会とのかかわりを最大限に考える必要があると主張したものと思われる。

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