JRでタブーになった「リニア新幹線」慎重論…「新幹線の父」の意見も封印

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
rinia_140913.jpg
画像は「リニア中央新幹線ホームページ」より


 JR東海が2027年に東京~名古屋間での先行開業をめざすリニア中央新幹線は、この秋にも着工される予定だ。来たる10月1日には東海道新幹線の開業からちょうど50年を迎える。JR東海としては着工をその時期に設定することで、高速鉄道の歴史におけるリニアの正統性をアピールするという思惑もあるのだろう。

 だが、ほかならぬ東海道新幹線の計画を推進し「新幹線の父」とも呼ばれる人物が、リニア開発に懐疑的であったという事実はどのぐらい知られているだろうか。

 その人物の名は島秀雄という。1955年に当時の国鉄総裁・十河信二の申し入れで、副総裁格の国鉄技師長となった島は、十河とともに東海道新幹線の実現に尽力した。おそらく彼らがいなければ新幹線は完成しなかっただろうし、大都市間の旅客輸送の主役は鉄道から飛行機や自動車へと完全に移行していたはずだ。それだけに、島が新幹線の進化形ともいうべきリニアに疑念を抱いていたというのは、意外な気すらする。

 リニアに対する島の立場は一貫している。それは、技術的にはおおいに研究すべきだが、実用化には慎重にならねばならないというものだった。以下、彼の亡くなった2年後、2000年に出版された『島秀雄遺稿集―20世紀鉄道史の証言―』(日本鉄道技術協会)から、過去の雑誌や新聞記事におけるリニアへの言及箇所を、時代を追って確認してみたい。

 旧国鉄におけるリニアモーターカーの研究は東海道新幹線の開業前夜、1960年代前半より始まり、1970年の大阪万博では、実際に磁力で浮上走行する模型が展示された。この時点で島は、リニアモーターは原理としては簡単なので、模型をつくるぐらいなら何でもないとしつつ、次のように指摘していた。

《それを大電力でもって、電車のようなものに実用化するというところに問題があるんですよ。(中略)それを本ものにしてわれわれエコノミック・アニマルが社会生活に使うものとして役立つようなものができるか、どうかということが実現上の問題として残るのです》(『週刊朝日ゼミナール』1970年12月9日号)

 島は、リニアを高速で運転するには大量の電力を必要とすることを見抜いていた。この問題は現在にいたっても解決したとはいえず、リニアの電力消費は現行の新幹線の3~5倍(時速500キロで走行した場合)であることが指摘され、反対論の一つの根拠となっている。

 さらに、東海道新幹線が開業から10年を迎えた1974年の雑誌記事には、次のような島の言葉が見られる。

《わたしは技術屋が、何か技術的可能性を確立したい、あるいは形に現したいと考えるのは無理ないことだと思うのです。そういうことで一所懸命研究することは、とくに若いエンジニアの士気高揚のためには非常に必要です。だから、いま未来交通の花形のようにいわれてるリニアモーターの研究など、わたしがまだ国鉄にいたころからやってもらっています。(中略)しかし一方、そういう技術的可能性が仮に実現した場合、社会生活の面でどういうことが起こるか、交通経済的、社会的な研究をやる人がもっといなければいけないと思います》(『季刊中央公論』1974年冬季特別号)

 この記事のタイトルは「不肖の息子・新幹線を語る」というものだった。時期的にはちょうど東海道新幹線の騒音公害が社会問題化していた頃にあたる。騒音のことなど、新幹線の開発中にはさほど深く考えられていなかった。それだけに島は自らの反省も踏まえて、リニアのような新技術の実用化に際しては、社会とのかかわりを最大限に考える必要があると主張したものと思われる。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

JRでタブーになった「リニア新幹線」慎重論…「新幹線の父」の意見も封印のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。JR近藤正高の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 萩生田光一の問題は消費税延期論でなく「ワイルド改憲」発言
2 橋下徹が岩上安身リツイート裁判で矛盾を追及され逆ギレ!
3 ブラックホール会見でNHK記者“日本スゴイ”質問に世界が失笑
4 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
5 東電が福島原発の廃炉作業を外国人労働者に押しつけ
6 葵つかさが「松潤とは終わった」と
7 上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
8 報道特集が中曽根の慰安所作りを報道
9 ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
10 安倍首相「桜を見る会」招待状が8万円で売買との報道!
11 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
12 自衛隊スパイ事件、官邸が解禁の理由
13 安倍首相と省庁幹部の面談記録ゼロ!安倍政権“公文書破壊”の実態
14 ピエール瀧逮捕でワイドショーが石野卓球に「謝れ」攻撃の異常
15 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
16 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
17 国民健康保険料が大幅値上げ、年間10万円増額も
18 衆院補選で安倍自民党が大惨敗の予想が!
19 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
20 安倍首相が「桜を見る会」に『虎ノ門ニュース』一行を堂々招待
1国民健康保険料が大幅値上げ、年間10万円増額も
2安倍首相と省庁幹部の面談記録ゼロ!安倍政権“公文書破壊”の実態
3石野卓球がワイドショーに勝利した理由
4忖度道路めぐり安倍の直接指示の新事実が
5安倍首相が「桜を見る会」に『虎ノ門ニュース』一行を堂々招待
6安倍が“忖度道路”の要望書を提出、山陰自動車道でも利益誘導
7上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
8 塚田「忖度」発言は事実! 麻生利益誘導の疑惑
9イチローに国民栄誉賞を断られ安倍政権が赤っ恥
10野党議員をデマ攻撃「政治知新」の兄・自民党県議を直撃!
11NHKで国谷裕子を降板に追い込んだ人物が専務理事に復帰
12維新勝利で橋下徹が「反対した年配の人が死んじゃった」
13中村文則が安倍政権批判に踏み込む理由
14 『あさイチ』の「中高生に韓国が人気」企画炎上の異常
15 安倍首相「桜を見る会」招待状が8万円で売買との報道!
16菅官房長官「令和おじさん」人気の正体!
17ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
18「あつまれ!げんしりょくむら」以外も…原子力ムラの醜悪SNS戦略
19衆院補選で安倍自民党が大惨敗の予想が!
20 ピエール瀧出演の『麻雀放浪記2020』に“安倍政権への皮肉”

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄