中国・韓国に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
年末特別企画 リテラの2014年振り返り
トンデモぶりに背筋も凍る!? 冬の「ヘイト&嫌韓本」ワースト5
左『説教ストロガノフ 「日本の敵」を叩きのめす!』(PHP研究所) 中『テキサス親父の熱血講座 日本は世界一だ!宣言』(扶桑社) 右『ここがヘンだよ「反日」韓国』(イースト・プレス)
いまだに書店で平積みの嫌韓本。その内容はもちろん差別、決めつけ、妄想、陰謀論が蔓延するヘイトスピーチ並みのトンデモばかりだ。リテラでは今夏に、2014年前半に出版された嫌韓本の中からトンデモ発言ランキングを紹介し、大きな反響を呼んだ。そこで、今回は、2014年後半に出版された本・雑誌・SNSなどから、嫌韓本トンデモ発言ワースト5を紹介しよう。寒さ厳しい折に、さらに背筋を凍りつかせるような差別発言の数々。ぜひ暖をとりながら読んでいただきたい。
★第5位 倉山満「家出した不良のコギャルと同じですよ。『居候させて』といって徹底的に値をつり上げてくる」
「Voice」(PHP研究所)9月号「説教ストロガノフ第2回 朝鮮戦争は終わっていない」
■コミンテルン陰謀論の次は女性差別? 嫌韓中年の童貞的妄想が止まらない■
最近、なぜかPHPが保守系コミンテルン史観でおなじみの憲政史研究者・倉山満を重宝している。保守系月刊オピニオン誌「Voice」で経済評論家・勝間和代のブレーンで、浜田宏一イェール大学名誉教授の広報官的役回りの上念司とともに対談連載を持っているのだ。タイトルの「説教ストロガノフ」という題名は、嫌韓系有力オピニオン誌「WiLL」(ワック)の名物連載対談「蒟蒻問答」にならったもので、5時間考えたものだそうだ。もっとも内容は「蒟蒻問答」よりももっとひどく、事実上、保守系コミンテルン史観的な「妄想」の垂れ流しに終始している。
冒頭の発言は「Voice」(PHP研究所)9月号「断末魔の朝鮮半島」という特集の巻頭対談のはずなのだが。たとえば、
〈倉山「韓国もすでに北朝鮮に乗っ取られていますね。北のスパイが約一二万人、韓国内に入り込んでいると聞きますから」
上念「そんなに大勢いるの!」〉
と憶測発言連発なのだ。なお、この二人は中央大学辞達学会の先輩・後輩コンビなのだそう。後輩の倉山に先輩の上念がツッコミをいれるという体らしい。
ちなみに冒頭の発言は、北朝鮮の本音という文脈で飛び出したもの。“実は北朝鮮は日本とアメリカが頼みで日米同盟に入りたいのだ”などと妄想がとまらない倉山は、当面、北朝鮮は日本から援助をむしり取れるようにしたいと考えるだろう、という。
では、日本側はどうすべきか。その交渉の例として持ち出したのが、コギャルの援助交際。日本側は「いっそ『日米同盟に入らない?』と軽くナンパしてみる交渉姿勢が望ましい」というのだ。今時、「コギャル」というのもびっくりだが、この後に、こんな記述が……。
〈上念「いまの発言はさすがに看過できないな。援助交際を助長するなんて」
倉山「え?誰が助長しているんですか!いまの発言のどこが?」
【※中断、しばらくお待ちください】
上念「なんだ、そういうことか(笑)」
倉山「人の話、聞いていませんね」〉
なんだ、この意味不明な馴れ合い。ちなみに、この対談をまとめた単行本『説教ストロガノフ 「日本の敵」を叩きのめす!』(PHP研究所)ではこのくだりがカットされているが、ここから見えてくるのは、北朝鮮がどうのこうの以前に、女性への差別意識だ。だいたい国家間の交渉を援助交際にたとえるなんて、ステロタイプな女性観しかないネトウヨ中年の童貞的妄想といわれてもしようがないだろう。
なお、「Voice」は14年7月号でも「断末魔の韓国経済」と“「断末魔韓国」キャンペーン”をはっているが、断末魔をあげているのは壊滅的な部数を“遅れてきた嫌韓”でどうにかしようとしている「Voice」編集部のほうである。
★第4位 テキサス親父「日本にいる友人たちは、『何かが起こってたまるものか!』と新しい軽い拳銃と防犯カメラを家の周りにつける資金を集めてくれた」
『テキサス親父、韓国・中国を叱る!』(PHP研究所)
■友人は日本のネトウヨだけ!? テキサス親父が拳銃をプレゼントされ大喜び■
投稿動画サイト「YouTube」で嫌韓、嫌中発言を繰り返し、それをまとめた書籍も話題のテキサス親父こと、テキサス在住のトニー・マラーノ氏。ワシントンの国立公文書館から、ビルマでの朝鮮人慰安婦20人に対する尋問報告書を取り寄せたところ、「彼女たちは綺麗じゃない」という一文があったことから、そんな慰安婦と“行為”をする場合は顔に紙袋をかぶせなきゃならないという“ジョーク”を思いつき、慰安婦像の顔に袋をかぶせた写真をフェイスブックにアップ。
この差別丸出しの悪質なパフォーマンスが韓国で大反発を呼んだ。200通を超える暗殺予告メールまでが送りつけられたために「ちょうど少し前に、在米韓国人による銃乱射事件もあったので警察に届け出たりもした」と弱気な一面を見せ始めた。しかも、新しい拳銃と防犯カメラの準備も行ったという。
しかし、気になる文章が、著書『テキサス親父、韓国・中国を叱る!』にあった。それが冒頭の発言だ。
まさか、日本人がそこまで関与しているとは……あれっ?そういえばと、問題になった慰安婦像の顔に袋をかぶせた動画を見てみたところ、テキサス親父とともに映っている友人shunとmittは日本人ではないか。日本の友人にあおられて、やりすぎパフォーマンスを行って、韓国側の反発を受けて、日本の友人たちからの金で、新しい拳銃を買う……もし、これでテキサス親父が何らかの事件を引き起こしたら、それは日本人がつくりだしたといってもいいすぎではないだろう。
それにしても、テキサス親父はなぜ、ここまで嫌韓にこだわるのか。テキサス親父の経歴は「1949年、アメリカ・コネチカット州生まれ。生後間もなくニューヨーク・ブルックリンに移る。ニューヨーク市立大学卒。電話会社AT&Tの子会社に30年間勤務し、2006年に退職。現在はテキサス州在住」……。実はテキサス親父はニューヨーク暮らしが長く、リタイア後に動画投稿を始めたところ、日本から熱いラブコールが送られたということのようだ。その後は、ひたすら日本のネトウヨに喜ばれるために動画をアップし続けてきた。もしかしたら、テキサス親父はアメリカではすごく孤独で、日本人のネトウヨしか友人がいないのではないか。
最近では、嫌韓発言だけでなく、『テキサス親父の熱血講座 日本は世界一だ!宣言』(扶桑社)といったタイトルの本も出版し、「日本は世界一」という発言を展開し始めている。こういったテーマももしかしたら「日本の友人」の求めに応じた結果なのかもしれない。
★第3位 KAZUYA「韓国というのは相変わらず迷走していますよね。(略)むしろ、これはかなり失礼な話ですけど、韓国ってどこかに併合されたほうが幸せなんです」
『ここがヘンだよ「反日」韓国』(イースト・プレス)
■YouTuberのレベルの低さを証明? 上から目線でヘイトをがなるネットスター■
配信開始からわずか2年間で、YouTubeのチャンネル登録者数23万人を超す「KAZUYA CHANNNEL」。動画上で26歳の若きオピニオンリーダー・KAZUYAは日韓、日中関係にまつわる問題を取り上げ、何冊かの嫌韓、嫌中本を上梓している。その日韓関係の主張をまとめたのが、『ここがヘンだよ「反日」韓国』だ。
しかし、その主張は巻末の対談相手の上念司に「いまさらながらの嫌韓論」と評されるほど、『マンガ嫌韓流』シリーズ(山野車輪/2005年〜)の主張と変わらないヘイトスピーチの垂れ流しだ。
「韓国は本当に病気です。『あれ、またやってんの?』というくらい反日ばかりやっています。反日反日雨反日です。もはや年中行事と化しています」
「日本の統治時代に『真面目に働くこと』を教えたはずなんですが、役に立っていない」
「現代では売春婦の超輸出国です。10万人くらいの韓国人女性が海外に出稼ぎに出ています。ウソか本当かわからないけど、そのうち日本には5万人くらい来ているなんて言われています」
しかも、韓国籍の男が生活保護費を不正受給したニュースを紹介する際には「こんなクズは早く強制送還しろ」。在日朝鮮人が通名を名乗るのは差別があるからだという主張には「そんなしかたなく通名を使って生活しなければならない日本に、なぜとどまり続けるのか?(略)そんなにつらいなら母国に帰る選択ができるわけです。なんですか? 朝鮮民族はドMですか? 本当に不思議な話です」と“日本から出て行けヘイトスピーチ”を展開する。
しかしその一方で、巻末対談相手の上念に「相変わらず迷走している韓国、戦前の日韓併合までの歴史を繰り返しているような感じです。韓国は日本に再び併合されるんじゃないですか(笑)」と水を向けられると、冒頭に紹介したような「韓国は併合されたほうが幸せ」発言をするのだ。
歴史修正主義とか排外主義とかいう批判がもったいなくなるようなレベルの低さ。しかも、それでいてやたら“上から目線”。こういう人が幅を利かせられるんだから、YouTubeってホントすごいわ。
★第2位 竹田恒泰「ヒラマサ五輪の日韓共同開催はダメでしょ。要請があっても断るべき。歴史上、日本が韓国の要請に答える度に惨憺たる結果を招いてきた」
本人のtwitterでの発言(12月7日)
■皇民化政策続行中! ネトウヨプリンスの頭の中で韓国は今も植民地だった■
竹田氏といえば、旧宮家の家柄ながら、その個性的なキャラクターと日本礼賛と中韓攻撃発言で“ネトウヨのアイドル”となった人物。この9月には、元AKB48・畑山亜梨紗との関係を「終わりました」とトークショーで報告したことでも話題となった。だが、このトークショーが韓国映画『悪魔は誰だ』のPRイベントであったこと、「日本映画のクオリティは韓国映画に完全に負けている」 といった発言をしたことが、ネトウヨからは「裏切られた!」と見られるなど、そのお騒がせぶりには拍車がかかっている。
12月には「2018年韓国・平昌五輪が“長野”との共催も」といった動きに対し、竹田の父親でもある日本オリンピック委員会(JOC)会長・竹田恆和が「直接そういう話は組織委から来ていないが、正式に要請があれば前向きに協力していく」と述べたというニュースに対して、竹田は冒頭のような発言を行ったのだ。
なぜか、竹田は「平昌(ピョンチャン)」をあえて、訓読みにした言い方をする。これは、インターネットスラングでもあるのだが、前回のランキングでは竹田が李明博(イミョンバク)前大統領を「りあきひろ」と呼んでいることを紹介した。竹田の頭の中には、やはり、韓国の植民地支配=同化政策の妄想が渦巻いているのだろう。
★第1位 八木秀次「拉致被害者救出運動をヘイトスピーチと同じ括りにすることで世論の支持を失わせ、無化させようとする思惑があるのではないかと思われて仕方ない。外国勢力の関与も疑われる」
「正論」(産経新聞社)2015年1月号「韓国・中国批判ができなくなる日 弊誌まで『差別媒体』にされる!?」
■ヘイトスピーチは反日外国勢力の仕業!? 安倍ブレーンの“陰謀脳”が止まらない■
八木秀次といえば、安倍首相のブレーンである保守論客。しかし、その言説は保守というより、とにかく安倍首相を擁護し、批判勢力を攻撃することだけを目的としているとしか思えないものだ。
今年の春には、天皇の護憲発言について「両陛下は安倍内閣や自民党の憲法に関する見解を誤解されている」「両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない」と批判して(『正論』5月号)、物議をかもした。
その八木センセイが、このところ、ヘイト批判を抑え込もうと躍起になっている。たとえば、『正論』2015年1月号ではこんなふうに書く。
「安倍政権や支持層の保守派団体・言論人を、下品な『ヘイトスピーチ』を行ってきた在特会(在日特権を許さない市民の会)やネオナチ団体と無理に結び付け、一網打尽に“悪”のレッテルを貼ろうとする動きがある。それも海外メディアを焚きつけて、国際社会に安倍政権が危険な思想の持ち主と特別の関係があるかのような印象操作を行っている」
そして、海外メディアをはじめとする報道を「悪意に満ちたこじつけ」「妄想も甚だしい」と批判するのだ。
だが、安倍首相及び安倍内閣の面々がヘイト勢力とがっつりつながり、利用してきたのはどう弁明しようともまぎれもない事実だ。
そもそも、安倍的なものの本質がヘイトであることは、安倍のブレーンである八木センセイも証明している。八木は「私は在特会の『ヘイトスピーチ』と批判されるような行動には与しない」と言いながら、こんなことを書くのだ。
「同じような括りにされて甚だ迷惑であり、彼ら(在特会)の行為は確実に反日的な左翼や外国勢力を利するものだと考えている」
拉致問題解決のための集会後のデモで、「全ての朝鮮人を東京湾にたたき込め」というシュプレヒコールが上がった問題についても同様だ。八木センセイは横田滋・早紀江さん夫妻が、なんであんなことを言うのか、拉致問題とヘイトスピーチが一緒に語られるのは耐え難いと批判したと指摘しつつ、タイトルにあるように、ヘイトスピーチをしているのが「外国勢力」であるかのような陰謀論をわめきたてるのである。
また、平成25年2月、大阪の鶴橋で行われたデモで14歳の女子中学生が「南京大虐殺を知っているだろう、あんたたちが出ていかなければ鶴橋大虐殺をやりますよ」と演説した件では、「筋のいい『右派』ならば、南京大虐殺を全面肯定したりはしない。中学生の発言は南京で大虐殺を日本人が起こしたという前提でそれを鶴橋でも起こしてやろうというものだ。右派の発言とも日本人の心性とも思えない」と、これまた外国人の関与をほのめかすのである。
自分たちに都合の悪いことがおきるとすべて外国人のせいにするというこの陰謀論こそ、ヘイトの最大の特徴ではないか。
実際、八木センセイはこの記事の中で、さんざん自分たちとヘイトスピーチはちがうと言いながら、「『正論』に掲載されているような主張や韓国や中国への正当な批判すら『差別』とされる可能性は大だ」といい、反ヘイトの動きを「これは新種の『保守バッシング』と言っていい」と本音をもらしている。
自分たちが言論弾圧をしておいて、批判が出てくると、被害妄想的なヒステリーを起こすところも安倍首相とそっくりではないか。
わかりやすいヘイトスピーチではないが、レトリックの狡猾さや政権への影響力を考えると、この人物をワースト1にあげないわけにはいかないだろう。
いかがだっただろうか。2014下半期の「ヘイト&嫌韓本」ワースト5。本来なら『「反日中韓」を操るのは、じつは同盟国・アメリカだった!』(ワック)を書いた元外務官僚・馬渕睦夫のような陰謀論ニュースターも取り上げたかったのだが、人数にかぎりがあるため紹介できなかった。逆に上半期、慰安婦像の顔に紙袋をかぶせたテキサス親父の女性差別を「ユーモア溢れる提案」と絶賛した百田尚樹センセイは下半期には朝日叩きと『殉愛』問題の火消しに忙しかったようで、目立った嫌韓ヘイト発言はなかった。
しかし、百田センセイもそのうち戦線復帰するだろうし、新たな嫌韓本が今も続々と出版され、新しいヘイト論客が次から次へと生まれている。笑い話ではなく、このままいくと、日本の出版・言論が差別と排外主義で埋め尽くされる日も近いかもしれない。
そうならないためにも、ぜひ監視と警鐘を続けていきたいのだが、このトンデモ本の量産スピードと目をおおいたくなる差別の洪水にはたして、こちらの神経がついていけるのか。絶望的になっている今日この頃である。
(エンジョウトオル)
最終更新:2014.12.28 01:35
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