リテラの新年特別企画◎御用ジャーナリスト大賞(後編)

維新躍進で御用ジャーナリスト勢力図に異変!? ほんこん 、橋下、宮根ら維新応援団が増殖、常連の田崎スシローは…

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【1位】橋下徹(元大阪市長)

巧妙な手口で吉村府知事の失政隠しと維新アゲも、日本城タクシー社長と大石あきこ議員という強力な天敵が

 これまでも大阪市長時代からつながりの深い安倍・菅政権の擁護、そして自分が作った維新の応援団としてメディアに露出してきた橋下徹だが、2021年はこれまで以上にメディアを席巻し、その御用ぶりが露骨になった。
 まず、2021年の橋下の発言で忘れてはならないのは、コロナ対策での政権擁護だ。東京五輪の強行開催によって新規感染者数が増加し医療崩壊に陥った際、菅政権は「中等症以下は自宅療養」の方針を打ち出して大きな反発を招いたが、そんななか、これを「菅首相の大英断」と褒め称えた人物こそ、橋下氏だった。
 いや、菅首相を褒め称えたというよりも、菅首相が方針を打ち出す前日に『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)で「自宅療養を基本とする、制度化するっていうのは、本来は国がやらなければいけない」と提言していたのが橋下氏だったのだ。
 橋下氏が菅首相の方針を先駆けて発信したのか、あるいは橋下氏の主張を菅首相が取り入れたのか、はたまた偶然の一致だったのかは不明だが、その後も橋下氏は〈政治が重症・中等症ベッドを増やすよう医療界に「命令」を出し、従わなければ強烈な制裁を加えるしかない〉などとツイート。安倍・菅政権の約1年半の失策は無視して「命令」だの「強烈な制裁」だのと医療界に全責任を擦り付け、問題解決にはまったくつながらない強権発動を主張した。言うまでもなく橋下氏は、自身が大阪の医療をボロボロにした張本人であり、こうした発言はその責任を転嫁するものにほかならない。
 だが、橋下氏が擁護したのは、菅首相だけではもちろんない。もっとひどかったのが、自分の後継者である吉村洋文・大阪府知事の失政覆い隠しと維新のPR活動だ。
 たとえば、大阪では吉村知事が2021年2月末に緊急事態宣言の前倒し解除要請をおこなったことによって感染者数が急増、第4波の甚大な被害を招く原因となったが、橋下氏はプレジデントオンラインで配信された自身のメールマガジン記事で〈吉村さんのやつれ気味の表情をテレビで見ていると、そのしんどさが痛いほど伝わってくる。連日連夜、府庁内では協議、会議の繰り返しなんだろう〉などと記述。本当にしんどい思いをしているのは入院すべき病状でも治療を受けられない患者やその家族、人手も人工呼吸器も足りないなかで奮闘する医療従事者や救急隊員たちのほうだというのに、橋下氏は吉村知事に同情が集まるように誘導したのだ。
 テレビでも同様だった。テレビでは一応、偏向といわれないように、吉村知事や維新への苦言らしき言葉も少しだけおりまぜてはいたが、結局、大阪府政のコロナ失策のほんとうの問題を覆い隠し、吉村知事をPR するような言動を繰り返し続けた。
 さらに、維新が衆院選で躍進を果たし、さらには文通費問題で“身を切るアピール”を喧伝するようになると、“創業者”の橋下氏はメディアで文通費問題をやたらと取り上げ、維新を持ち上げる一方、自民党ではなく立憲民主党などの野党を攻撃し続けた。
 しかも、橋下氏が問題なのは、テレビにおいては、早口でまくし立てて話を強引にすり替え、不毛な議論をふっかけ、詭弁で煙に巻くという「橋下話法」によって誰もまともなツッコミを入れられないまま「橋下劇場」が巻き起こってしまう、という点にある。参院選を控えた今年、橋下氏のメディアにおける言動はさらに露骨なものになるのは目に見えているだろう。
 そんななかで唯一の救いは、橋下氏を黙らせることのできる強力な論客が現れたことだ。そのひとりが、大阪を拠点にタクシー業などを手掛ける日本城タクシーの坂本篤紀社長。詳しくは既報を参照いただきたいが(https://lite-ra.com/2021/04/post-5854.html)、4月に『報道1930』(BS-TBS)で橋下氏と共演すると、坂本社長は橋下話法を「アホな議論」と一刀両断した上、橋下氏の反論をことごとく論破。吉村知事に対しても「何もしてないもん」と鋭く指摘して見せたのだ。
 そして、もうひとりが、れいわ新選組の大石あきこ衆院議員だ。大石議員は、橋下氏や吉村市長が仕掛けた文通費キャンペーンに対して、当の吉村市長が1日で100万円の文通費をせしめていた事実を突きつけたのだ。すると、橋下氏は吉村氏の1日100万円問題には触れないまま、執拗に大石攻撃を開始。自身が生出演している『めざまし8』(フジテレビ)に大石議員をVTR 出演させたうえで、後出しジャンケンでいつものごとく「制度をわかっていない。もっと勉強しないと」と反論できないのをいいことに一方的に断罪した。
 だが、大石議員は全く負けていなかった。橋下氏がツイッターで、自分の「しっかり勉強を」という発言を報じた記事をリツイートしたうえ、公選法上なんの関係もないのに大石議員の当確が出たのが11月1日未明だったことをあげつらうデタラメ攻撃をすると、大石議員は〈もうウケるwww 橋下徹、選挙制度しっかりべんきょせえ!〉と一蹴、さらには〈橋下徹が私に粘着するせいで、すごく注目浴びてしまった。もう、粘着するなよ!絶対に粘着するなよ!〉とダチョウ倶楽部風にツイートしてみせて、橋下氏を黙らせてしまったのである。
 2022年はこの二人にもっとメディアに出てもらって、言いたい放題、やりたい放題の橋下氏を少しでも押さえ込んでもらいたいところだが……。

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 いかがだったろうか。2021年は菅政権が崩壊したものの、維新の躍進が象徴するようにけっしてメディア状況が好転したわけではない。むしろ、逆に政権批判をする野党が悪であるかのような声が大きくなり、メディアでは、橋下氏を筆頭にした維新応援団=新たな御用ジャーナリストがこれまで以上に跋扈するようになった。
 一方、『羽鳥慎一モーニングショー』から青木理が降板したり、『ひるおび!』から室井佑月が降板したり、坂上忍『バイキングMORE』の打切りが発表されたり、若返りという名目で、政権に批判的なコメンテーターやキャスターが次々と姿を消している。
 今年はこの傾向がさらにエスカレートするだろう。そして、岸田政権と維新が合体してコロナ失政を隠すための憲法改正の動きを本格化させ、新たな御用ジャーナリストたちがその動きの旗振り役をやり始めるはずだ。
 連中に騙されないためにも、これまで以上に、その動きに注意していく必要があるだろう。

最終更新:2022.01.03 09:32

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