室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第12回ゲスト 原田眞人(後編)

原田眞人監督と室井佑月が安倍首相の「政界引退したら、映画プロデューサー」発言に痛烈ツッコミ!

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NHKスペシャルのインパール作戦を観た木村拓哉が、原田監督に…

室井 今回の対談でわかったんですけど、映画って、観た人から「よかった」と言われる評価だけでなく、すごい役割を果たしているんですね。現実社会とも深くコミットしている。それに映画って好きな人物やキャスト、好きな絵や音楽、全部自分の好きなもので合わせて、小さい地球を作るようなものですもんね。

原田 それが全部望むところにいけばいいんですが、いろいろみなさんスケジュールがあって、ほしいところがダメで、断られたり、いろいろあるんです。でも今回はほぼ理想のキャストにはなりましたけどね。

室井 そうなんだ。でも木村拓哉さんと二宮和也さんの共演は素敵でした。わたしはキムタクにあまり注目していなかったんですが、でも今まで観たもののなかで一番かっこよかった。

原田 彼は本当にいい形で年を重ねていると思う。関心したのは、映画のキャンペーンでいろんな取材も受けて、ものすごく引き出しがあるということ。インタビューでの言葉も、いい表現していました。

室井 わたしもそう思いました。パンフレットで木村さんが、「いまの社会にあって、ダメなことに目をつぶろうと思えばできますが、絶対そうしないぞという意志表示。それを脚本から感じましたね」と語っていました。舞台挨拶でも「時代ものとか太平洋戦争の事実とか、(メジャーな存在である)自分たちしかできない」って。確かにそうだなと共感しましたし、素敵だなと思いました。

原田 そうした部分に木村さんも二宮くんも共感してくれたのは大きかった。インパールは脚本の段階に入れましたが、撮影しているときにちょうどNHKでドキュメンタリー番組が放送されたんです。あれを木村さんが観て、「監督! 昨日見ました」と。僕は観ていなかったんですが、彼はDVDにコピーしてきてくれて。そもそも今回の映画は「木村拓哉×二宮和也でやりたいと思う」というオファーがあって、その題材として『検察側の罪人』があったんです。確かに彼らがメジャーじゃなきゃできなかったですよね。彼の存在が大きいから、社会風刺も“遊び”ということにもなる。

室井 それにすごく意味があると思います。政権批判を「赤旗」がしても、それは当然なことでニュースにならないですから(笑)。木村さんも色男役より、今回の映画でちょっと影になると皺が出てきている感じが魅力的だと思いました。

原田 一緒に仕事していて楽しかったし、また次もやりたいなと思っています。実際彼に言ったんです。「次は、今までやってこなかったような、それこそギトギトの悪役をやろう」と。そうしたら「ギットギトの悪役ですか。やりたいですね」と言っていました。暴力的で、ちょっと頭の足らないワル。そんな役もできると思います。

室井 スターってどうしても眩しすぎて。でも頭の悪いワルをやったらどんな感じになるんだろう。でもいいなあ、映画監督って。すごく楽しそうですね。女の人にもモテそうだし。それに今回の対談ですっごくわかったことがあります。映画って最強だということ。今わたしが週刊誌などで、いくら「今の政権がおかしい」と言っても、読者の多くは高齢者だし、誰も読んでくれない。でも映画は、年代性別問わず幅広い人に訴えられる。社会風刺を入れたフィクションとしての強みもある。広く訴えられるのは、素晴らしいなと思いました。そして今日は本当に勇気をもらいました。

原田 僕も室井さんからいつも勇気もらっています。
(前編はこちら)


原田眞人 映画監督、1949年生まれ。1979年『さらば映画の友よ』で監督デビュー。『KAMIKAZE TAXI』(1995年)でフランス・ヴァレンシエンヌ冒険映画祭で准グランプリ及び監督賞を受賞。その後も『金融腐敗列島[呪縛]』『クライマーズハイ』『わが母の記』『初秋』『日本のいちばん長い日』『関ヶ原』など作品多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送 金曜日)などに出演中。

最終更新:2018.10.04 10:09

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